佐々木麟太郎の一塁守備の様子
アメリカの大学では特別扱いは当たり前
スタンフォード大は、4年間の学費だけで5000万円ものお金がかかる。だが佐々木くんは、学費や寮費の全額を大学が負担する奨学金を約束されている。
「大学が奨学金を認めた背景は、ひとえに佐々木くんの存在が大学にとってメリットがあると判断したからです。野球での活躍はもちろん、大学で学んだことを通して、卒業後に国際社会に大きく貢献するビジョンを持っていると確信したのでしょう。
そもそも、アメリカの大学は特定の人を特別扱いするのは当たり前です。出身国ごとに奨学金が設定されていたりしますし、最近では少なくなりましたが、『アファーマティブアクション』といって特定人種への優遇措置があったり、退役軍人だと奨学金を得やすい、といったケースもあります。多様性というのを重視しているので、“この人が入学したら、化学反応が起きて大学が活性化するだろう”と思われれば、積極的に受け入れようとする姿勢があります」
各国にいるOBに大学から試験官の依頼
近年、海外大学への進学は徐々に認知されてきた。A氏のもとには、スタンフォード大学の志望者に向けた講演依頼などが舞い込むという。
「なぜアメリカの大学、その中でもスタンフォード大学を選んだのか、ということはよく聞かれます。日本の大学を選んだ場合と海外の大学を選んだ場合、卒業後のキャリアの違いについて興味を持っている方が多いですね。スタンフォードでは世界のトップの人と出会い、ディスカッションをして鍛えられていきます。そうすると物怖じしなくなり、“日本がダメなら、海外で働けばいい”と、日本という枠組みに依存せず、主体的にキャリアを重ねられるようになります」
SNSで個人的に連絡をもらうケースも多いという。
「そういったメッセージにはすべて目を通し、基本的には全員と面談をしています。私以外のOBも、多くがそういったことをしていると思います。スタンフォード大学の志望者は、世界各地にいます。ということは、日本の大学受験のように、全員を1か所に集めて、よーいドンでテストをするわけにはいきません。
学部によっては、各国にいる卒業生に大学から試験官の依頼があり、受験生の評価を本国に送っています。個人的に面談した相手がたまたま試験官にあたれば、受験生にとってプラスに働くこともあるかもしれません」
だが、実際に海外大学に進学するのはごく一部の人に限られている現状がある。
「人生のハンドルを自分で握るというのが、アメリカの教育のいい面だと思っています。なんの保証もないのでしんどいことはありますが、“自分の人生を切り拓きたい!”という人には、アメリカの大学は非常に多くの学びがあるでしょう」