だけど本番に入ると“私が泣くもんじゃねえ”って。どうしたらいいかわからないけれど精一杯力強く抱きしめる以外、何もやるべきじゃないと、小夜としても一人の人間としても思って、そうしたんです。スタッフの方にも「本番で小夜が泣かないようにしている顔がすごくよかった」と褒めていただきました。
最近は気づけば“小夜ならこう思うだろうな”と考えながら『ブギウギ』を観ています。
「小夜ちゃん、身体には気をつけてな」
「愛助もな」
最後にそんな言葉を交わした愛助が亡くなって、スズ子さんがどれだけ彼を愛していたかを知っている小夜はどう思うのか。そのスズ子さんがもう一度パワーアップして復活した時は、「やっぱスズ子さんはすげぇわ」と思ってるだろうな、とか考えます。
趣里ちゃんから「娘っ子だよ」と愛子とのツーショット写真が送られてきた時は嬉しかったですもんね。“趣里ちゃん、お母さんの顔してるなぁ”って思う素の自分と、“スズ子さんの娘、こんな大きくなって、めんこいなぁ”って勝手ながら姪っ子みたいな感覚になる小夜としての自分もいます。
私にとって『ブギウギ』は尊くて、いろんな奇跡が重なった作品です。長年続く朝ドラで、私と同じ福島出身の小夜というお役をいただいた。ヒロイン・スズ子のそばで人生をお供できたというのは小夜にとってかけがえのない時間でしたが、私にとってもそれは同じ。この奇跡のような出会いに感謝しています。
【プロフィール】
富田望生(とみた・みう)/2000年生まれ、福島県出身。主な出演作に映画『ソロモンの偽証』、ドラマ『だが、情熱はある』、NHK連続テレビ小説『なつぞら』など。2025年1月に主演映画『港に灯がともる』が公開予定。
※週刊ポスト2024年4月5日号