検察側の冒頭陳述によると、牛見被告は、A子さんにしたことと同様のわいせつ行為をクリニックに来院した女性患者に繰り返していたという。通常、精神科で膣内の診察が必要になるケースはないが、牛見被告がわいせつ行為をするために利用していたキーワードが“漢方薬の処方“だ。
2022年2月18日、50代の患者B子さんの診察をした際、牛見被告は漢方薬の処方を勧めている。
「大量摂取の危険性が指摘される向精神薬に代わって、漢方薬を使用する精神科医は増えていて、このこと自体におかしなことはありません。しかし牛見被告は漢方薬を処方するために、『腹部や粘膜の診察が必要である』などと言い診察室へB子さんを連れて行きました。もちろんそのような診察は必要ありません。B子さんはこの日初めて被告のクリニックを訪れた患者でした」(同)
牛見被告は、診察室のベッドで仰向けになったB子さんの腹部を診察した後、ズボンと下着を脱がせた上、その膣内に指を挿入した。同様に同年3月25日にはC子さんに、4月21日にはD子さんに対して「漢方薬を処方するため」と言いながら、膣に清浄綿のようなものや指を挿入しようとしたり、実際に挿入していた。
不快な思いをしながら、治療のためだと我慢していた女性も多かっただろう。しかし何人かの被害者が声をあげることで犯行が明るみになっていった。
「被害女性はそれぞれ、県の窓口や、別のクリニック、漢方メーカーなどに相談しました。どこに相談しても、そのような治療は『おかしい』となります。そして次々に県警に情報が集まり牛見被告の逮捕にいたりました。事件化したのは一部の犯行で本人は『多すぎて覚えていない』と供述するほど犯行は常態化していたとみられます」(同)
牛見被告は初公判で罪を認めた。しかし、「だいぶ前のことで記憶が定かではないが」と前置きした上で「(膣内に挿入したのは)金属棒ではない」「衛生綿ではない」などと言ってのけたという。
「細かい部分にこだわり、謝罪の言葉はありませんでした。反省しているようにはとても思えませんでした」(傍聴した男性)
トンデモ精神科医は今後の裁判でどのような発言をするのか。