1989年 前年に結婚し、この年の映画『風の又三郎 ガラスのマント』では父親役を務める

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 深作欣二監督の『復活の日』(1980年公開)では、イギリスの女優オリビア・ハッセーと共演したが、そのときは緊張のあまり30回近く撮り直したという。

「オリビアさんといえば1968年に大ヒットした映画『ロミオとジュリエット』に主演した有名人。“なんて美しい人なんだ”って、当時16才のぼくは観客のひとりとして見ていました。そんなアイドル的な存在が目の前にいるわけです。

 しかも彼女はとてもやさしかった。船で南極に行ってロケをしたとき、ぼくは船酔いをしてしまったんです。そうしたら彼女が、フルーツを差し入れしてくれてね。気遣いがこまやかで驚きました。そんな彼女とのラブシーンなんて、そりゃ緊張しますよ」

 この映画は、作家・小松左京さんのSF小説が原作で、細菌兵器で絶滅寸前となった人類の生きざまが描かれている。撮影当時の草刈は27才。主演に抜擢され、南極を中心とする海外ロケは半年以上にも及んだ。20億円以上もの製作費が投じられた超大作で、プレッシャーは相当なものだったはずだ。

「ぼくが演じたのは、南極観測隊で働く地震予知学者。深作監督は自由に演じさせてくれるかただったのでありがたかったですね。ぼくは不器用なもので、あれこれ細かく言われるとパニックになってしまうんです。

 このときの撮影でとても印象深かったのが、カナダでのこと。長い英語のせりふがあったんです。専門用語も多く、覚えるだけでもひと苦労。いよいよ本番当日、ぼくは台本がボロボロになるまで繰り返し読んでせりふを完璧に体に入れて臨みました。その甲斐あって撮影は一発で成功。そうしたら、いつもクールな監督が、飛び上がって喜んでくれて……。あんな監督は初めて見ました。よっぽどぼくのことが心配だったんでしょう(笑い)」

 小心者故、まじめに完璧に準備を欠かさない。その誠実さこそ、多くの監督から愛されてきた所以なのだろう。

第2回につづく)

【プロフィール】
草刈正雄(くさかり・まさお)/1952年9月5日、福岡県小倉市(現・北九州市小倉北区)生まれ。1970年、資生堂の男性化粧品のCMでモデルデビュー。1974年、『卑弥呼』で映画デビューし、『復活の日』や『汚れた英雄』などの話題作で主演を務める。以後、俳優、歌手、司会者として、活躍の場を広げる。NHK大河ドラマ『真田丸』(2016年)、NHK連続テレビ小説『なつぞら』(2019年)でも話題に。2009年から、教養バラエティー番組『美の壺』(NHK BSプレミアム)でナビゲーターを務める。

取材・文/上村久留美 撮影/政川慎治

※女性セブン2024年9月5日号

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