ライフ

《江戸川乱歩賞受賞》日野瑛太郎氏『フェイク・マッスル』インタビュー「小学生の頃に自分の書いた話をみんなが喜んでくれた時の感覚が僕の求める全て」

日野瑛太郎氏が新作について語る(撮影/国府田利光)

日野瑛太郎氏が新作について語る(撮影/国府田利光)

 僅か3か月で肉体改造に成功、ボディビルコンテストで3位入賞を果たした人気アイドル〈大峰颯太〉29歳。彼の筋肉は果たして本物かと、SNS上で話題騒然の〈ドーピング疑惑〉が、日野瑛太郎氏の第70回江戸川乱歩賞受賞作『フェイク・マッスル』の端緒となる。

 その真偽の探偵役を任された俺〈松村健太郎〉は、文芸部志望が意に反して『週刊鶏鳴』に配属された入社2年目の記者。折しも競合誌が大手外食企業への潜入取材を成功させる中、この企画を形にすれば次の異動で文芸部に推薦すると人参をぶら下げられた俺は、大峰が立ち上げたジムに入会し、彼やその周辺に身をもって探りを入れる。

 潜入期間は3か月。その間、筋トレ初心者の肉体は日に日に変化し、そうした鍛える喜びや彼自身の性格もあってか、本書は薬物の闇を扱いながら妙に健全で明るさのあるミステリーに仕上がっているのである。

 乱歩賞には足かけ5年に亘って応募を続け、最終に残ったのは本作で4回目。かつては実用書も数冊著し、「それでもフィクションが書きたくて」乱歩賞に拘ったという著者自身、小説の力に魅せられてきた1人だ。

「実用書って書けることや書き方に予め縛りがあって、意外と窮屈なんですよね。その点、フィクションは発信できる幅が全然違って、物事は簡単に白黒つけられるほど単純じゃないことや、同じ人間の中に矛盾がある複雑さまで書けてしまう。しかも最終的に面白ければオッケーなところも、僕が小説家にずっと憧れてきた理由かもしれません」

 具体的に行動を起こしたのは約11年前。大沢在昌著『売れる作家の全技術』を読んで「ミステリー系なら乱歩賞」と目標を決めた。

「といっても最初の5年は過去の受賞作や内外の名作を片っ端から読んで修行にあて、実作はその後です。僕は何か難しめの目標を立てて攻略法を考えるのが昔から好きで。受験もみんなが東大に行くわけじゃない学校からどうすれば行けるかを考えてコツコツやるのが性に合っていたし、乱歩賞も小説が好きだからこそ、何とか応募を続けられたんだと思います」

関連記事

トピックス

新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
あとは「ワールドシリーズMVP」(写真/EPA=時事)
大谷翔平、残された唯一の勲章「WシリーズMVP」に立ちはだかるブルージェイズの主砲ゲレーロJr. シュナイダー監督の「申告敬遠」も“意外な難敵”に
週刊ポスト
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
財務官僚出身の積極財政派として知られる片山さつき氏(時事通信フォト)
《増税派のラスボスを外し…》積極財政を掲げる高市早苗首相が財務省へ放った「三本の矢」 財務大臣として送り込まれた片山さつき氏は“刺客”
週刊ポスト
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
NEWSポストセブン