蛯名正義氏が騎手デビューしたのは1987年
1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、今回は新人ジョッキーのデビューについて。
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この3月、東西で7人の新人ジョッキーがデビューしました。じっくり見る機会はなかなかありませんが、やはりルーキーたちのレースは気になりますよね。今のジョッキーたちは自分たちの時代よりもデビューの段階では上手になっていますよね。
ファンの方は新しいスタージョッキーの登場を期待していると思います。長い目で応援してください。すでに初勝利をあげたジョッキーもいますが、今の1勝2勝は大きな差ということもないので、少しずつ良くなっていければいいのです。
馬は一頭ずつ能力も性格も違うし、競馬場のコース形態も違うし、レースごとの展開も違う。その中でジョッキーは自分がこれまでにレースで蓄積し、技術として習得してきたものをいかに出すことができるかということが問われていくと思います。
年間何百頭と乗っても会心の騎乗なんてほとんどないし、会心の騎乗をしても負けることもあります。もっとこうだったなとか、こうすればよかったというのを反省して、その感覚を次のレースに生かそうとする。でも、次はまた違うシチュエーションになって、またうまくいかなかったのはなぜかと反省する、その繰り返しではないかと感じます。実際のレースでは競馬学校では教わらなかったこともたくさんあります。
たとえば馬がゲートの中で暴れたり出遅れたりした時に、ジョッキーはどう対処したら結果につなげられるか。それは多くの失敗から導き出した経験という引き出しをいかに多く持っているかというのも大事になってきます。デビューしたばかりのジョッキーに、「普通にうまく乗ってきて」と思うのは少しかわいそうな気がします。
スタート直後に大きくよれたり頭を下げたりして落馬することがあるけれど、あれは経験を積んでいけば予測できることもある。もちろん馬も悪いのですが、できる限り対処するのがジョッキー。僕らの世代はそう教わりました。当時は落馬すると「大丈夫か？」なんて心配されるより先に怒られたりしたものです。「外に他の馬がいないから外に行くに決まってんだろう」って。言われてみればその通りだけど、落馬して落ち込んでいるし痛いしで、「なんだかなー」っていうことが何度もありました（笑）。
