V-22オスプレイ
戦後80年の夏、平和を願う思いが改めて共有された一方、日本近海で高まる軍事的な脅威に対する現実的な防衛策もいま一度問われている。
活発化する中国軍の動きに備え、南西諸島の防衛力を強化する「南西シフト」が推進されるなか、6月8日に実施された陸上自衛隊の国内最大の実弾射撃演習・富士総合火力演習では「島嶼防衛」をテーマに数多くの新装備が披露された。同演習を長年取材する軍事フォトジャーナリストの菊池雅之氏が語る。
「今回の演習で初めて公開されたのが、火力支援用の『24式機動120mm迫撃砲』と偵察用の『25式偵察警戒車』です。これらの特徴は、冷戦時代に重宝されたキャタピラー式の戦闘車両と異なり、タイヤを装着した『装輪車』であること。実際の戦闘では軽量化したタイヤ式のほうが小回りが利くうえに、輸送機での空輸も可能なので、1200キロの広範囲に及ぶ南西諸島へと移送がしやすいのです」
これらはすでに配備されている「16式機動戦闘車」と合わせて、「共通戦術装輪車」と位置付けて開発された。
「3つの装輪車は一緒に行動することでより威力を発揮します。揃った意義は非常に大きいといえます」
「24式」の配備はすでに始まっており、「25式」は今年度末から配備の予定だという。
射程が10倍超に
加えて菊池氏が注目するのが、初公開された長距離ミサイルの「射程」だ。
「従来、日本のミサイルの最大射程は百数十キロ程度でしたが、一気にその10倍以上の射程を持つものが披露されました」
公開された新ミサイルは2種類。ひとつが「12式地対艦誘導弾 能力向上型」で配備当初は射程900キロ、将来的には射程1500キロを目指す。もうひとつは「島嶼防衛用高速滑空弾」。マッハ6で飛ぶ極超音速ミサイルで、将来的には最大射程3000キロを目指す事実上の弾道ミサイルだ。
「2つとも、領海に入ってきた敵の艦隊を敵のミサイルの射程圏外から叩くだけでなく、敵基地攻撃も可能です」
「12式」は今年度末から配備が始まる予定で、「高速滑空弾」の配備時期は未定とされている。
日本の防衛のあり方は転換期を迎えている。
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撮影/菊池雅之 取材・文/鈴木洋史
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号