沖縄県那覇市の「未成年バー」で医療用麻酔導入薬「エトミデート」が蔓延していた
那覇市随一の歓楽街、松山にその店はあった。スナックやキャバクラなのだろうか。狭い空間に、男女の笑い声が響く。テーブルの上には酎ハイやビールの空き缶。それらを前にはしゃぐ彼らの声色には幼さの余韻も残る。やがてカメラは、地べたに座り込む男2人を映し出した。1人は、アルコール依存症患者のように手を震わせながら、シーシャのようなチューブからを何かを吸引している。同じような緩慢な動きを見せるもう1人の男は、定まらない目線を泳がせ、何かをうわごとのようにつぶやいている──。
「未成年バーで撮ったものですよ」
スマホを見せてくれた少年の口調はどこか得意げだ。那覇市に住むという少年はまだ15歳。この動画の撮影場所になったという「松山の某ビル」に入居する、その「バー」について証言してくれた。
「みんな未成年バーって言ってる。要するに俺ら未成年しか出入りできん飲み屋ってことさ。何を吸ってるかって? あれさ、『笑気麻酔』ってやつ。いま流行ってるよね」
少年が口にする「笑気麻酔」。売り買いの際に用いられる隠語で、その正体は、医療用麻酔導入薬「エトミデート」のことである。
本来は手術時の鎮静に用いられるが、国内未承認薬で、おもに非合法なドラッグとして沖縄で乱用者が激増している。
「2024年ごろから、違法なルートで沖縄に流入してきた。乱用すると全身の自由が効かなくなり、痙攣や記憶障害を引き起こすことから、中国や台湾などでは『ゾンビたばこ』などと呼ばれ、すでに規制対象となっている。厚生労働省も今年5月に指定薬物として規制したが、取り締まり前の数か月で一気に広がった」(捜査関係者)
沖縄で急速に広がるこの「ニュードラッグ」について、地元当局も警戒を強めている。