国際情報

ウィキリークス アサンジ氏の本質はアナキストと佐藤優氏

 ウィキリークス(以下WLと略する)に流出した米国国務省の公電が世界を震撼させている。日本のメディアや有識者は、WLを官庁や企業の内部告発と同種の現象と見ているようだが、これは大きな間違いだと元外務省主任分析官の佐藤優氏は指摘する。

 * * *
 WLは、既存の国家システムを破壊するという明確な目標を持った政治運動だ。WLの創設者兼編集長であるアサンジ氏の見解を分析すれば、同氏の思想がアナーキズムときわめて親和的であることがわかる。

〈アサンジ氏は11月30日、米国務省の外交公電約25万通の公開開始後初となる米タイム誌とのインタビューで、「我々の活動は市民主体の世界を築き、腐敗した組織に対抗するものだ」と述べ、機密文書公開を正当化した。

 アサンジ氏は、11月上旬にスイスで記者会見して以来、公の場に姿を見せていない。タイム誌とのインタビューは、インターネットの映像通話サービスを通じて行ったが所在は明かさなかった〉(2010年12月1日付読売新聞夕刊)

  アサンジ氏が述べる「市民主体の世界を築き、腐敗した組織に対抗する」という主張がまさに「暴力装置である国家を除去した方が人間の社会は健全に発展するはずだ」というアナーキズムに基づいている。

 アナーキズムは無政府主義と訳されることが多いので、国家や政府を破壊し、無秩序を礼賛する思想のように見られがちだが、そうではない。アナキストは、国家による法律を認めない。ただし仲間内の掟はとても大切にする。

 明治・大正期のアナキスト、大杉栄は、当時の論壇に大きな影響を与えた文筆家でもある。大杉の翻訳によるファーブル『昆虫記』が1922年に刊行されたが、実は昆虫の社会モデルとアナーキズムが親和的なのだ。

「蟻や蜂などの昆虫は群れをつくる社会的動物だ。蟻や蜂の社会に国家はない。国家がなければ政府も存在しない。それでも蟻や蜂の社会はうまくいっている。人間も群れをつくる社会的動物だ。自然状態で、人間は自ずから秩序をつくることができる。

 合法的に暴力を行使することができる国家は、支配者が支配される民衆を収奪するために人為的につくられた機関だ。従って、国家による法律も、収奪のための道具だ。国家や法律を廃止し、人間の社会が自発的につくる掟があれば、人類は秩序を維持し、より幸せになる」という信念をアナキストは持っている。

※SAPIO2011年1月26日号

あわせて読みたい

トピックス

石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《24歳の誕生日写真公開》愛子さま、ラオス訪問の準備進めるお姿 ハイネックにVネックを合わせて顔まわりをすっきりした印象に
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
韓国・漢拏山国立公園を訪れいてた中黒人観光客のマナーに批判が殺到した(漢拏山国立公園のHPより)
《スタバで焼酎&チキンも物議》中国人観光客が韓国の世界遺産で排泄行為…“衝撃の写真”が拡散 専門家は衛生文化の影響を指摘「IKEAのゴミ箱でする姿も見ました」
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン