国内

大前研一氏 国民は原発賠償への税金投入に断固抗議すべき

 原発賠償に税金投入を安易に決める議論が、いつのまにか進んでいる。そうした議論の中から抜け落ちている問題点について、大前研一氏が指摘する。

 * * *
 菅政権は「計画停電」「出荷停止」「避難指示」という致命的な三つのミステイクを犯し、この稚拙な決断が引き起こした“人災”によって被害は際限なく拡大した。納税者の負担をできるだけ小さくするのが政府の重要な責務であるはずなのに、逆の結果を招いたのだ。

 たとえば、「避難指示」による損害は膨大になると予想されるが、政府は原発の20キロ圏外へ避難しなければならないという判断に至った根拠を示していない。また、家財道具などを取りに帰ってはいけないという根拠も曖昧である。

 スリーマイルの時は16キロ圏だったが、これは住民の自主判断による避難で、政府または電力会社による補償義務が発生していない。つまり、今回の政府のやり方では、ほぼ無限大の賠償責任が発生してしまうのだ。

 この負担を、国民は易々と受け入れてはならない。被災者救済とは別次元の問題として、無能な政府の尻ぬぐいを強いられることには断固抗議すべきである。

 言い換えれば、政府は東電にしっかり賠償させなければならないわけで、その場合は国の監督責任とは別に、東電による情報隠蔽の有無を検証することも不可欠だ。

 なぜなら、いくら東電が国の認可と指導のもとに原発を建設・運転してきたといっても、経済産業省や原子力安全委員会が東電の提出した資料に基づいて原発の安全性を判断してきた以上、その資料が本当にすべて正しかったのか、すべて包み隠さず報告していたのか、2002年の原発トラブル隠し(※)のようなことが他にもなかったのか、ということが今後の大きな争点だからだ。

 もし、東電に瑕疵があれば当然その責任は膨れ上がり、東電は、水俣病患者への補償を行なうためだけに存続しているチッソや、薬害エイズ事件を引き起こして消滅したミドリ十字と同じ運命を辿ることになるだろう。

(※)原発トラブル隠し/2002年、東京電力が自主点検(2000年)の際、確認された原子炉のクラック(ひび割れ)などの事実を国に報告せず、記録を意図的に改竄、隠蔽していた事実が発覚。当時の東電会長、社長が引責辞任に追い込まれ、東電の信頼性を大きく損ねる事件となった。

※週刊ポスト2011年5月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
前回のヒジ手術の時と全く異なる事情とは(時事通信フォト)
大谷翔平、ドジャース先発陣故障者続出で急かされる「二刀流復活」への懸念 投手としてじっくり調整する機会を喪失、打撃への影響を危ぶむ声も
週刊ポスト
単独公務が増えている愛子さま(2025年5月、東京・新宿区。撮影/JMPA)
【雅子さまの背中を追いかけて単独公務が増加中】愛子さまが万博訪問“詳細な日程の公開”は異例 集客につなげたい主催者側の思惑か
女性セブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン
大の里の調子がイマイチ上がってこない(時事通信フォト)
《史上最速綱取りに挑む大関・大の里》序盤の難敵は“同じミレニアム世代”の叩き上げ3世力士・王鵬「大の里へのライバル心は半端ではない」の声
週刊ポスト
連日お泊まりが報じられた赤西仁と広瀬アリス
《広瀬アリスと交際発覚》赤西仁の隠さないデートに“今は彼に夢中” 交際後にカップルで匂わせ投稿か
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎ストーカー殺人事件》「テーブルに10万円置いていきます」白井秀征容疑者を育んだ“いびつな親子関係”と目撃された“異様な執着心”「バイト先の男性客にもヤキモチ」
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン
成田市のアパートからアマンダさんの痛いが発見された(本人インスタグラムより)
《“日本愛”投稿した翌日に…》ブラジル人女性(30)が成田空港近くのアパートで遺体で発見、近隣住民が目撃していた“度重なる警察沙汰”「よくパトカーが来ていた」
NEWSポストセブン
小室圭さんの“イクメン化”を後押しする職場環境とは…?
《眞子さんのゆったりすぎるコートにマタニティ説浮上》小室圭さんの“イクメン”化待ったなし 勤務先の育休制度は「アメリカでは破格の待遇」
NEWSポストセブン
食物繊維を生かし、健全な腸内環境を保つためには、“とある菌”の存在が必要不可欠であることが明らかになった──
アボカド、ゴボウ、キウイと「◯◯」 “腸活博士”に話を聞いた記者がどっさり買い込んだ理由は…?《食物繊維摂取基準が上がった深いワケ》
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
NEWSポストセブン