国際情報

朝鮮総連中央本部の土地建物がいよいよ競売にかけられる

 長年にわたって在日朝鮮人たちのランドマークであり、北朝鮮の駐日大使館のように振る舞ってきた東京・千代田区富士見の朝鮮総連中央本部(朝鮮中央会館)の土地建物がいよいよ競売にかけられようとしている。それは総連にとって、単に象徴を失うのみならず、組織解体の決定打となる可能性が高い。ジャーナリストの野村旗守氏が報告する。

 * * *
 原因は、2000年を前後して相次いで破綻に陥った各地の朝銀系信用組合の不良債権問題である。整理回収機構(RCC)は破綻した複数の朝銀信組から合計1533億円分の不良債権を引き継いだが、このうち約41%にあたる627億円が事実上総連に対する融資であったとして、2005年11月、朝鮮総連に返済を求める訴えを起こした。

 この訴えは認められ、RCCは東京地裁に会館の競売を申し立てたが、登記上は合資会社「朝鮮中央会館管理会」の所有となっていたため、強制執行を行なうことができなかった。このためRCCは会館の実質的な所有者が朝鮮総連であることの確認を求める訴訟を新たに起こし、2009年に勝訴。総連側はこれを不服として控訴したが、昨年12月に高裁で棄却されていた。

 朝鮮総連は翌月の今年1月、さらに最高裁に上告。会館は現在、RCCによって仮差し押さえ中である。というのも、裁判の過程で、競売逃れを目的としたと思われる名義書き換え事件が発覚したことがあったからだ。07年6月、元公安調査庁長官の緒方重威氏が社長を務める投資会社に会館の所有権が移されていたことが判明し、大騒ぎになったのは記憶に新しい。同じ轍を踏まないための仮差し押さえ申請である。

 総連側はこれにも異議申し立てしたのだが、今年3月またしても却下されてしまう。異議が認められなかった以上、2審判決が最高裁でひっくり返る可能性は限りなく低いとみなさざるを得ない。出来ることならRCCに和解金を支払って示談としたいところだが、もはや総連の金庫に資金はない。

 この時の総連側の衝撃を、現在関係者の間を駆け巡っているある文書は次のように伝える。

〈結果は明白なものでした。まさに旗があげられたのでした。平べったく語るならば、「被告(総連)の言い分は通りません」と言うものです。総連側の弁護団は黙ったまま席を立ったといいます。(略)メガトン級の激震が副議長室に走りました。許宗萬はそれなりの覚悟はしていたものの、暫くは全身の震えを抑えることが出来ませんでした。(略)ある中央の最高級幹部は、「チョッタマリジ。やっぱり負けたか…」と、独り言のように呟いたそうです〉

※SAPIO 2011年6月29日号

関連キーワード

トピックス

大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン