国民栄誉賞の受賞、そして試合や練習にファンが殺到するなどW杯優勝の余韻冷めやらぬなでしこジャパンだが、次なる大舞台、ロンドン五輪の切符に不安が囁かれ始めた。去る8月19日に行なわれた「なでしこジャパンvsなでしこリーグ選抜」の壮行試合は、リーグ選抜相手に3-2の辛勝という結果。選抜チームの星川敬監督(INAC神戸)はこう苦言を呈した。
「攻撃のバリエーションが少なすぎる。なでしこは実力以外で持ち上げられ、調子に乗っている。五輪予選を突破しなければ、W杯優勝の意味もなくなるのに」
そういわれても仕方ない面が、今のなでしこにはある。W杯後、代表選手たちは表彰やTV出演の連続で満足な練習をしていない。加えてサッカー協会からの報奨金650万円、オフィシャルスポンサーであるキリンからの賞金100万円、FIFA優勝賞金の分配金200万円などなど、合計1000万円にも上る「臨時収入」が、彼女らの生活を変えた。
「弁当持参だったのが外食中心になったり、アルバイトを辞めてしまった選手や、テレビ映りを気にしてネイルアートや美容院通いを始めた選手もいる」(サッカー担当記者)
極めつきはアウディジャパンが提供した、1人1台の新車3年間の無償リース。250万円相当のコンパクトカー「A1」が、駐車場代と燃料代以外の諸経費ゼロで“プレゼント”された。家族の使用もOKとなる。
「なでしこリーグの選手は、自転車で練習場通いしているのがほとんど。自転車が急にアウディになったわけです。中には5万円の家賃のアパートに住みながら月2万円の駐車場を借りるケースも出ている」(同前)
注目される前は「軽自動車がほしい」とささやかな夢を語っていたなでしこたちに、欧州の高級車は垂涎の的。それゆえに、W杯時にリストアップされながら代表選考に漏れた選手たちの反発は大きいという。
「佐々木監督がロンドン五輪メンバーとして新しく招集したのは、永里優季(ポツダム)の妹の永里亜紗乃(日テレ)だけ。本当は大きく入れ替えたかったが、こうした格差を気にしたという見方が強い。家族なら同様にアウディの恩恵を受けられるから、チーム内の空気が乱れないだろうと見たからではないかといわれています」(スポーツジャーナリスト)
※週刊ポスト2011年9月9日号