国内

TPP参加で牛丼が350円になり農業関係者340万人失業の予測

賛成だ、反対だ、と政治家の間でも意見が分かれているTPP。テレビのニュースを聞いても、新聞を読んでも、やたら難しくて…という人も多いはず。簡単に説明すると、TPPは「参加した国が、お互いの輸出品にかけている関税を0%にする」という取り決めだ。

正しくは「環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)」の略なのだが、もしTPPに参加すると、具体的にどんな影響があるのだろうか。

最も注目されているのが農業だ。農家保護のため、日本はこんにゃく1706%、米778%、バター360%など外国産の農産物に高い関税をかけている。これがゼロになるとどうなるか。経済評論家の森永卓郎さんは輸入農産物が劇的に安くなるという。

「たとえば輸入米の値段は10kg1000円以下まで下がる。安くてもパサパサとした輸入米は日本人の口に合わないといわれていますが、ずっと関税がゼロになるなら話は別。今後は国産米に近い味の短粒種が、日本向けに海外で生産されるようになるはず。消費者は安くておいしい輸入米に飛びつくでしょう」

現在の国産米は安いもので10kg2500円ほど。輸入米は“6割引き”の大特価になる。

また、外食産業にも影響が及びそうだ。

「外食産業は価格競争が激しいうえ、原材料の原産地表示の義務がないため、コストの低い輸入食品に一気に流れるでしょう」(森永さん)

例えば、牛肉の関税率は38.5%。これがゼロになると、メーカーは仕入れ値が4割も安くなる。輸入牛を使用しているマクドナルドなどのファストフードや牛丼チェーンも看板商品を値下げする可能性が高い。

「牛丼が100円台になる、なんて話もありますが、実際には外食産業の原価率は3割程度、ほとんどは人件費や輸送費なんです。関税がなくなることで値下がりは期待できますが、380円の牛丼が350円になる程度でしょう」(森永さん)

一方、デメリットとして、森永さんは日本の農業がノックアウトされると予想する。

「国産の農作物は、安さで外国産に太刀打ちできなくなります。生き残るのは、金持ちをターゲットにした一部の高級ブランド米だけ。米だけでなく、関税の高い砂糖やバター、チーズの原料などを生産している農家も壊滅するでしょう」(森永さん)

農水省は、TPP参加が実現すれば、農産物の生産額が4.1兆円分減少して食料自給率が40%から13%に低下すると予測。農業関係者340万人が職を失うと警告する。

「水田が失われ、農村から人がいなくなり、数十年後には日本中の農地が荒れ放題になってしまいます」(森永さん)

※女性セブン2011年11月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン