国際情報

首都直下地震発生なら米軍は「トモダチ」作戦後回しとの予測

 2万人以上の兵力を投入して「トモダチ作戦」を展開した在日米軍。私たち日本人は在日米軍の支援を当然のことと思い、マニュアル化されていると考えがちだ。しかし、米軍の支援はあくまでも好意によるものなのである。

 では、首都直下地震の際「第2のトモダチ作戦」はどう展開されるのか。首都が大地震に見舞われた時、在日米軍の主力も被災する可能性があることを想定して、在日米軍の動きを軍事評論家の潮匡人氏が予測する。

 * * *
 忘れてならないのは、在日米軍自身が被災するリスクである。横須賀が津波その他で被災する可能性を否定できない。横須賀には在日米海軍司令部がある。近くの座間(神奈川県)には在日米陸軍司令部がある。横田基地には在日米軍司令部が置かれている。これらが機能不全となれば、ダメージは大きい。

 基地や司令部機能は、早急に復旧できたとしても、基地の外は、そうはいかない。三沢基地(青森県)や、岩国基地(山口県)、普天間基地(沖縄県)などから、横田まで救援物資を空輸できたとして、横田から、どう運ぶのか。

 想定されてきた「マグニチュード(M)7.3の地震」ですら、首都直下の被害は深刻だ。建物全壊棟数は最大約85万棟(内閣府)。首都圏の大動脈である環状道路沿いも「焼失が顕著」と想定されている。仮に、M8の地震となれば、被害はそれに留まらない。

 首都直下なら、在京アメリカ大使館(港区赤坂)も被災を免れない。駐日大使以下の職員や家族に加え、ビジネスマンを含む多数の米国民も被災する。冷徹に予測すれば、米軍は、横田や空母からヘリを飛ばすなどして、米国民の保護救出を最優先に活動するであろう。「トモダチ」は後回しに違いない。

 実は、米国に「トモダチ作戦」を遂行する条約上の義務はない。法的にはアメリカの好意に頼っている。だからこそ、事前に日米間で調整し、必要な訓練を重ねるべきなのだ。

 首都直下となれば、永田町や霞が関、大手町、丸の内等々、わが国の政経中枢が麻痺する。東日本大震災を凌駕する甚大かつ深刻な被害が発生しかねない。そのとき初動の対処を誤れば、間違いなく国が滅びる。米軍との連携強化を図ることは、焦眉の急務ではないだろうか。

※SAPIO2012年3月14日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
《同居女性も容疑を認める》清水尋也容疑者(26)Hip-hopに支えられた「私生活」、関係者が語る“仕事と切り離したプライベートの顔”【大麻所持の疑いで逮捕】
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
【大麻のルールをプレゼンしていた】俳優・清水尋也容疑者が“3か月間の米ロス留学”で発表した“マリファナの法律”「本人はどこの国へ行ってもダメ」《麻薬取締法違反で逮捕》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
清武英利氏がノンフィクション作品『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋刊)を上梓した
《出世や歳に負けるな。逃げずに書き続けよう》ノンフィクション作家・清武英利氏が語った「最後の独裁者を書いた理由」「僕は“鉱夫”でありたい」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン