芸能

夏木マリのカーネーション ネタ尽きてもはや「蛇足」との指摘

 主演交代で話題となったNHK朝ドラの「カーネーション」。74歳の糸子が自分のブランドをバタバタと立ち上げ、糸子の孫・里香はヤンキーの設定……。だが、そんなテレビ画面に「蛇の足」を見ている視聴者は少なくないはずと、作家で五感生活研究所の山下柚実氏は指摘する。以下は、山下氏の視点である。

 * * *

 NHK連読テレビ小説「カーネーション」。3月3日放送分から主人公・糸子の役が、夏木マリに代わって2週間以上がたちました。

「今さら主人公を変えるな」、「続投させよ」という声もあがった交代劇。今、お茶の間の人々はどのような気持ちでテレビ画面を眺めているのでしょうか?

 延々と続いてきた連続テレビ小説の最後の1ヶ月だけを演じよ、と言われた夏木マリもプレッシャーがあったはず。その分、演技にかける必死な「思い」は伝わってきます。

 でも、役者の力量というよりは、むしろ全体のドラマ構成として、なんだか間延びしている感じが否めない。もはや、描くテーマは限られています。74歳の糸子が自分のブランドをバタバタと立ち上げる、というエピソード以外には、もうネタはほとんど尽きている。

 だからなのか、糸子の孫・里香をヤンキーの設定にしたり、ジャージ姿で道を歩かせてみたり。突然改心させてみたり。糸子が階段から落ちてみたり。どこかで見たような、凡庸で安っぽいエピソードのつなぎあわせに終始しています。

 実は、ヤンキーの設定をめぐっては現実との間で波紋も起きています。孫にあたる実在のデザイナー、コシノ・ユマも困惑、とのこと。

「劇中にて主人公・糸子の孫が登場しましたところ、皆様から数多くのお声が寄せられておりますが、ドラマはフィクションであり、実際の事実とは異なります」と、「ユマ・コシノ」公式ウエブサイトにもわざわざ書いてあるほど。その母・コシノヒロコも、NHKのトーク番組で、「ヤンキーではなかった」と念を押していました。

 ひとことでいえば、3月からの放映分は「蛇足」に過ぎないのではないか。そう見えてしまうのです。 

「蛇足」の意味は、ご存じのように「余計なもの」。でもその言葉の背後に、実に味わい深い物語が横たわっていました。戦国時代、中国の楚の国。一人で飲むには充分だがみんなで分けるには足りないお酒。村人たちは、「一番早く蛇の絵を描いた人が、酒を飲んでいい」と取り決め、競争を始めた……。

 一番早く描きあげた人は大喜び。お酒の入った杯を手にして、他の人が絵を描くのを眺めていたけれど、余った時間をもてあましたのか。「蛇の足も加えておこうか」と足を描き加えてしまったのです。

 村人たちからは「蛇には足なんてない」とダメ出しをくらって、結局失格となり、お酒も飲めなかった。そんな顛末が、『戦国策』の中の故事にあります。

 蛇に足は生えていない。なのに、時間があると、ついつい余計なことをしてしまう。それをいましめる寓話が、実に奥深く鋭い指摘として感じられてしまいます。テレビ画面に映る「蛇の足」を見ている気分なのは、きっと私だけではないはずです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン