国内

西成区の生活保護男性 不正受給Gメン投入に「皆ビビっとる」

 大阪市の橋下徹市長は4月から、警察官OBや元ケースワーカーらによる生活保護の「不正受給調査専任チーム」を市内24区すべてに配置した。いわば「生活保護Gメン」である。特に受給者の多い西成区と浪速区では、他区に先駆けて昨年11月にチームが発足しており、西成区では2チーム6人が“捜査”に当たっている。

 西成区の山内真一・生活援助担当課長が「Gメン」の任務を説明する。

「未申告の就労先がある、居住実態がないのに保護費を受けている、といった住民の情報を元に、張り込みや聞き込みを行なう。車の所有についても、ローラー作戦で隠し場所や運転している現場を押さえます。偽装離婚や、事実上同棲している女性の車や収入で暮らしているケースもある。女性が住んでいるかどうかは洗濯物などからわかります」

 不正が判明すれば保護費の返還を請求し、悪質な場合は警察に通報する。

 市がここまで徹底するのは、年々増え続ける生活保護費の抑制が、喫緊の課題となっているからだ。2011年度予算ベースで、生活保護費は支出全体の約2割に相当する2916億円。そのうち、市の調査で判明した不正受給は2615件、約12億円(2010年度)に上る。

「Gメン」が動き出した、との情報はすぐ西成を駆け巡った。

 JR環状線「新今宮駅」南側に位置する、約1キロ四方のドヤ街「あいりん地区」。古くからの呼称・釜ヶ崎と呼ぶ人も多いこの街は、昼間からカップ酒を手にした酔っぱらいが道路に寝そべり、カラオケが大音響で響くなど、異様な空気に包まれている。

 しかし、最近はそこに妙な緊張感が加わった。4月末、本誌記者が訪れると、道行く男性たちがジロリと睨みつけてくる。もともと部外者に敏感な地域ではあるが、排他的な傾向がやけに強まっているように感じた。

 喫茶店店主が、頷きながら語る。

「そうやね、最近はピリピリしとるよ。これまで以上に、見ない顔が警戒されるようになったわ。橋下さんが生活保護を取り締まるという情報が流れて以来、『尾行された』とか、『パチンコ屋やノミ屋に聞き込みが入った』なんて話す者もおるからね」

 区福祉担当者によれば、「尾行できるほど調査チームには人員も機動力もない」というが、受給者は戦々恐々としているようだ。

 2年前から生活保護を受け始めたという54歳の男性はこう語った。

「皆ビビっとるんよ。生活保護をもらう人の大半は“元気やけどカネもらっとる”という後ろめたい気持ちやからね。“3人1組の怪しい集団を見たら気をつけろ”、“(『Gメン75』の)丹波哲郎みたいなのがウロウロしよるぞ”とか、色んな話が出る。まァ、誰も姿を見た者はおらんのやけどな」

※週刊ポスト2012年5月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

『虎に翼』の公式Xより
ドラマ通が選ぶ「最高の弁護士ドラマ」ランキング 圧倒的1位は『リーガル・ハイ』、キャラクターの濃さも話の密度も圧倒的
女性セブン
羽生結弦のライバルであるチェンが衝撃論文
《羽生結弦の永遠のライバル》ネイサン・チェンが衝撃の卒業論文 題材は羽生と同じくフィギュアスケートでも視点は正反対
女性セブン
元乃木坂46の伊藤万理華の演技に注目が集まっている(公式HPより)
《難役が高評価》異例のNHK総合W出演、なぜ元乃木坂・伊藤万理華は重用されるのか 将来的には朝ドラ起用の可能性も
NEWSポストセブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン