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“経済の千里眼” 「株価は8000円割れした方がよい」の理由

 年明けから急騰した日本株は1万円超えも束の間で、急落して振り出しに戻った。そんな乱高下相場の未来予測は至難の業だ。だが、著書『相場の波動はシンプルに読め!』(小学館)で大胆な予測を示して金融界の話題をさらった“経済の千里眼”こと菅下清廣氏はこう読み切った。

 * * *
 これから1か月の株価の動きは、今後数年間の長期動向も左右するターニングポイントになります。この下降トレンドがいくらで下げ止まるかがポイントです。まずは楽観シナリオでは、日経平均株価が昨年の最安値である8135円(11月25日)程度で大底をつけます。そうすると下降トレンドが上昇トレンドに転じる際のチャート上のサインである「ダブルボトム」が形成され、自律的な反発が起きます。

 では、その時期はいつか。相場の格言では「大回り3年、小回り3か月」といい、短期のトレンドは3か月程度で転換することが多い。いまの下落相場の出発点は今年最高値をつけた3月27日ですから、6月末にも反転の兆しが見えてくるはずです。7月に入って株価が持ち直せば、今年中に少なくとも年初来高値の1万255円程度まで上昇すると予測します。

 続いて悲観シナリオは、日経平均8000円割れの展開です。詳しい解説は省きますが、長期のチャートを分析すると2003年4月につけた7603円程度まで下がる可能性があります。そうすると、リーマン・ショック後の最安値7021円(2009年3月10日)と合わせて、チャート上に「逆三尊」の形が現われます。これは相場の波動から見て、底入れから上昇トレンドに転じる強いサインとしてよく知られています。

 短期的には値下がり幅の小さい楽観シナリオがいいことはもちろんですが、数年単位の長期予測では、悲観シナリオのほうが好ましいと見ています。日経平均が8000円を下回るということは、同時に円高が進行することを意味します。1ドル=78円、77円とジリ高になり、史上最高値の75円台に接近する展開もある。

 株安、円高とくれば、その先に待っているのは泥沼のデフレです。それに真っ青になるのが日銀です。そこまでくればさすがの「動かない日銀」も市場に追い込まれる形で大規模な金融緩和をせざるをえなくなります。

 また、景気悪化を何よりも嫌がる財界、実業界からの強い要請を受け、国会の判断によって日銀幹部を解任できるようにする日銀法改正の動きが強まるでしょう。残り任期が1年を切った白川総裁はそれだけは絶対に避けたいはずです。つまり、株価が下がれば下がるほど、日銀は緩和策から逃れられなくなるのです。

 前述の通り、最重要ファクターは日銀の動向です。脱デフレ路線への転換は今後数年の上昇トレンドのきっかけになるはずです。今の日本にとっては、株価がジリ安になるよりも、平均株価8000円割れというクラッシュが起きたほうが、日銀の政策転換、そして市場が求める政界再編に繋がります。その意味でも、今後1か月でどこまで株価が下がるのか注意が必要です。

■すがした・きよひろ/国際金融コンサルタント、経済評論家。立命館大学経済学部卒業後、大和証券、メリルリンチなどを経て、フランス系投資会社ラザード・ジャパン・アセット・マネージメント代表取締役社長に就任。1998年にスガシタファイナンシャルサービスを設立し、現在はスガシタパートナーズ社長を務める。

※週刊ポスト2012年6月22日号

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