ライフ

ブームの散骨海洋葬 「船酔いする」と船に乗らない遺族も

 みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイ ブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、“散骨”の海洋葬に参加した。

 * * *
 散骨のセレモニーがはじまろうとしたその瞬間、船上に音楽が流れ出した。石原裕次郎の『錆びたナイフ』(1957年の曲)。散骨の際は、遺族からのリクエストに沿った音楽をBGMで流してくれるのだった。

 船上が、まさしく「海洋葬」というムードに包まれてきた。

 以前から散骨といえば一番気になることがあった。よく映画で、散骨しようとしたら、粉状になった骨が海風に舞って、撒こうとした人の顔にバッとかかるっていうシーンがあるじゃないですか? それが実際にあるのかどうかってことですよ。

『ビッグ・リボウスキ』っていう映画のエンディングでも、太平洋を臨む崖っぷちでこんなシーンがありましたよ。

「風」の海洋葬で、遺灰が紙に包まれているのは、実はそうした事態を防止するためだったんです。そうしないと、海上では、やっぱり撒いた遺灰が、風に舞って撒いた人の顔を直撃するってことが起こるんだそうだ。

 この紙は水にすぐ溶ける紙で、遺灰はこの紙に包まれたまま海へと撒かれるのだ。風で灰がブワ~ッと空中に散乱するなんていうお笑いシーンになる可能性はまったくなかったのだ!

 この日も、紙に包まれた遺灰が、代理の「風」のスタッフの手によって海に撒かれた。遺灰は海に入った途端、紙が溶けることによって海中にキラリキラリと光りながら舞い沈んでいった。

 散骨の後には、海に故人の好きだったビールが献酒された。献酒の後は海への献花だ。花も遺族の「淡い色で」「全部赤いバラで」などといったリクエストにそってスタッフが用意してくれるそうだ。 故人の遺灰は海に沈み、花びらが波間を漂う。散骨は一瞬にして終わる。

 ちなみに代理散骨を依頼された遺族の方は、船酔いしてしまうからという理由で、船には乗らなかったそうで、マリーナまでは足を運ばれて、出港・帰港は見届けていた。

 ゆっくりとしたヨットでの航行とはいえ、船に弱く、船酔いするという人は多い。そういう人が代理散骨をお願いするのだという。

 代理散骨の場合でも、散骨を行なう船上から遺族に連絡をすることも可能。実際にこの日もマリーナで待つ遺族に「これから散骨します」と連絡していた。遺族はそれに合わせて海に向かって合掌していたという。

※週刊ポスト2012年11月18日号

関連記事

トピックス

“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
ジャンボな夢を叶えた西郷真央(時事通信フォト)
【米メジャー大会制覇】女子ゴルフ・西郷真央“イップス”に苦しんだ絶不調期を救った「師匠・ジャンボ尾崎の言葉」
週刊ポスト
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
前回のヒジ手術の時と全く異なる事情とは(時事通信フォト)
大谷翔平、ドジャース先発陣故障者続出で急かされる「二刀流復活」への懸念 投手としてじっくり調整する機会を喪失、打撃への影響を危ぶむ声も
週刊ポスト
単独公務が増えている愛子さま(2025年5月、東京・新宿区。撮影/JMPA)
【雅子さまの背中を追いかけて単独公務が増加中】愛子さまが万博訪問“詳細な日程の公開”は異例 集客につなげたい主催者側の思惑か
女性セブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン
連日お泊まりが報じられた赤西仁と広瀬アリス
《広瀬アリスと交際発覚》赤西仁の隠さないデートに“今は彼に夢中” 交際後にカップルで匂わせ投稿か
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン
成田市のアパートからアマンダさんの痛いが発見された(本人インスタグラムより)
《“日本愛”投稿した翌日に…》ブラジル人女性(30)が成田空港近くのアパートで遺体で発見、近隣住民が目撃していた“度重なる警察沙汰”「よくパトカーが来ていた」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
NEWSポストセブン