ライフ

脂肪組織から幹細胞が発見 乳がん後の乳房再建や豊胸に活用

 現在研究中の幹細胞には、ES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞、体性幹細胞の3種類がある。血管や骨、軟骨などに成りうる幹細胞は間葉系幹細胞と呼ばれ、すでに骨髄幹細胞を利用して閉塞性動脈硬化症やバージャー病の血管新生を促す再生医療で有効な成績を上げている。しかし一度に大量に採取できず、約3週間培養しなければならない。

 2001年、脂肪組織の中にも間葉系幹細胞が存在することが報告された。脂肪組織由来幹細胞は骨髄に比べ約5000倍も多く含まれ、増殖力が高いことが判明、再生医療への応用が始まっている。

 聖心美容外科(東京都港区)の鎌倉達郎統括院長に話を聞いた。

「脂肪組織由来の幹細胞を利用した初の再生治療は、2006年に九州中央病院で、乳がん手術後の乳房再建として実施されました。美容外科では従来より痩身の脂肪吸引や豊胸のための脂肪注入が実施され、私はこの分野の専門として皮下脂肪採取及び、注入担当として治療に参加しました」

 脂肪組織由来の幹細胞の働きは、大きく3つある。1は新たな脂肪細胞になる。2は血管の細胞になる。3は血管を増やすVEGFなどサイトカイン(血管新生因子)を増やす。これら3つの作用で血管新生が促され、患部に栄養や酸素が運ばれる。乳房再建術でこれらの働きを応用する。

 脂肪細胞の寿命は約10年といわれ、細胞が死ぬと当然容積が減る。しかし注入する脂肪に幹細胞を混ぜると、脂肪細胞が死ぬときに幹細胞からシグナルが出て幹細胞が脂肪へと分化する。これが新たな4番目の働きである。乳がん後の乳房再建だけでなく、豊胸術にも応用され聖心美容外科では500症例以上に実施されている。

 また欧米を中心に脂肪組織由来の幹細胞を使った心臓疾患、放射線潰瘍、クローン病、頭蓋骨再生、I型糖尿病など難病の治療研究が行なわれ有効性が確認されている。

(取材・構成/岩城レイ子)

※週刊ポスト2012年11月23日号

関連キーワード

トピックス

事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
前回のヒジ手術の時と全く異なる事情とは(時事通信フォト)
大谷翔平、ドジャース先発陣故障者続出で急かされる「二刀流復活」への懸念 投手としてじっくり調整する機会を喪失、打撃への影響を危ぶむ声も
週刊ポスト
単独公務が増えている愛子さま(2025年5月、東京・新宿区。撮影/JMPA)
【雅子さまの背中を追いかけて単独公務が増加中】愛子さまが万博訪問“詳細な日程の公開”は異例 集客につなげたい主催者側の思惑か
女性セブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン
連日お泊まりが報じられた赤西仁と広瀬アリス
《広瀬アリスと交際発覚》赤西仁の隠さないデートに“今は彼に夢中” 交際後にカップルで匂わせ投稿か
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン
成田市のアパートからアマンダさんの痛いが発見された(本人インスタグラムより)
《“日本愛”投稿した翌日に…》ブラジル人女性(30)が成田空港近くのアパートで遺体で発見、近隣住民が目撃していた“度重なる警察沙汰”「よくパトカーが来ていた」
NEWSポストセブン