国内

小中学生起こした放射能疎開裁判を「過剰反応」とみる市民も

 原発事故の3か月後の2011年6月、「郡山市内は放射線量が高くて危険」「安全な地域で教育を受ける権利がある」などと、福島県郡山市を相手どって郡山市在住の小中学生14人(法廷では親が代理人)が裁判を起こした。

 すでに二審にまで進んでいるその訴えの中心は、子供たちを安全な地域へ「集団疎開」させることだ。

 国や市も除染活動を進めているが、福島に住み続けるとどれだけ被曝するのか正確な数字が誰にもわからない今、郡山市民に話を聞くと、「今は安全」と答える人が多いようだ。

 1才児の母親でお腹に9か月の赤ちゃんがいる郡山市在住の女性(32才)も現在の心境をこう明かす。

「放射能のことは全然気にしていません。たばこのほうがよほど問題という話もありますよね。私は子供を連れて散歩するし、地元の野菜を食べさせています。出産の不安もまったくありません」

 穏やかな顔でこう話す一方、「疎開裁判」についてたずねてみると、冷ややかな口調でこう語った。

「過剰反応だと思います。それぞれの家庭の考えがあるので、県外に出たい人は出ればいいじゃないですか。集団での疎開を押しつけるのはどうかと思います」

 人それぞれで異なる放射能への態度。その温度差が市民の間で生じさせる軋轢には切ないものがある。

 原発事故後、子供の安全を守るために郡山市在住の主婦が設立した「3a! 安全・安心・アクションin郡山」という市民団体がある。毎月2回の座談会や食品に含まれる放射能の測定などを行っている。同団体の野口時子さんが打ち明ける。

「私たちは、日常生活の不安を少しでも和らげようと活動しています。活動に好意的な人も多いですが、一部の人からは“地元に残るんだったら、不安を煽るようなことをいうな”という雰囲気がありますね」

 野口さんは2011年秋に福島大学で開かれたイベントで、「地元産の食材を使っている給食に放射能が含まれている危険がある」と指摘した。すると発言後、地元の農家から痛烈なコメントを浴びせられた。

「“風評被害といわれるけど、敵は目の前にいた”と。地元に残っていても、本当は放射能を不安と思っている人は多いはず。でも、しがらみの多い街で、声を上げられない」(野口さん)

 ふくしま集団疎開裁判では、一審で14人だった原告が控訴審で10人に減少した。原告団の主任弁護士である柳原敏夫さんが言う。

「しびれを切らして自主避難した人もいますが、親が勤める職場などでの精神的プレッシャーで、裁判を続けられなかったかたもいます」

※女性セブン2013年2月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
歌手・浜崎あゆみ(47)の上海公演が開催直前で突如中止に
《緊迫する日中関係》上海の“浜崎あゆみカフェ”からポスターが撤去されていた…専門家は背景に「習近平への過剰な忖度」の可能性を指摘
NEWSポストセブン
逮捕された村上迦楼羅容疑者(時事通信フォト)
《闇バイト強盗事件・指示役の“素顔”》「不動産で儲かった」湾岸タワマンに住み、地下アイドルの推し活で浪費…“金髪巻き髪ギャル”に夢中
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年12月3日、撮影/JMPA)
《曾祖父母へご報告》グレーのロングドレスで参拝された愛子さま クローバーリーフカラー&Aラインシルエットのジャケットでフェミニンさも
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《約200枚の写真が一斉に》米・エプスタイン事件、未成年少女ら人身売買の“現場資料”を下院監視委員会が公開 「顧客リスト」開示に向けて前進か
NEWSポストセブン
指示役として逮捕された村上迦楼羅容疑者
「腹を蹴れ」「指を折れ」闇バイト主犯格逮捕で明るみに…首都圏18連続強盗事件の“恐怖の犯行実態”〈一回で儲かる仕事 あります〉TikTokフォロワー5万人の“20代主犯格”も
NEWSポストセブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《広瀬すずのぴったりレギンスも話題に》「アスレジャー」ファッション 世界的に流行でも「不適切」「不快感」とネガティブな反応をする人たちの心理
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《スクープ》“連立のキーマン”維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官が「秘書給与ピンハネ」で税金800万円還流疑惑、元秘書が証言
NEWSポストセブン
2018年、女優・木南晴夏と結婚した玉木宏
《ムキムキの腕で支える子育て》第2子誕生の玉木宏、妻・木南晴夏との休日で見せていた「全力パパ」の顔 ママチャリは自らチョイス
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
《雅子さま、62年の旅日記》「生まれて初めての夏」「海外留学」「スキー場で愛子さまと」「海外公務」「慰霊の旅」…“旅”をキーワードに雅子さまがご覧になった景色をたどる 
女性セブン
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン