なんとも珍しい“不祥事”だった。
〈捜査書類1枚 民家に落とす〉
朝日新聞社会面にこんな見出しが載ったのは1月20日のこと。記事は、埼玉県上尾市に住む男性(51)が自宅敷地内に書類を見つけ、それが埼玉県警上尾署の「取調べ状況報告書」だったことを伝えている。
報告書は上尾署地域課の30代の男性巡査が交通違反事件の容疑者を調べた際に作成されたという。容疑者の氏名や生年月日が手書きされ、指紋まで捺印されている。
「まったく! これじゃ、わたし犯罪者みたいじゃない」
憤るのは上尾市のホテルに勤務する主婦Kさんだ。上尾署から交通違反で取り調べを受け、取調べ状況報告書を紛失された当人だ。朝日の報道がでる前日、「Kさんの書類をバインダーに挟んだまま、現場巡回にでた担当者がうっかり落とした」と上尾署からKさんに連絡があった。その電話から10分後に署員が菓子折りを持って謝罪に訪れたという。
自らの個人情報がぞんざいに扱われた上、新聞沙汰にもなったのだからKさんが怒るのもごもっとも。ただし、Kさんがここまで腹をたてるのは、そもそもの違反容疑に納得していないからだ。
「勤務が終わって自家用車で帰宅しようとする際にパトカーでストップをかけられた。容疑は右折違反。でも私は右折なんてしてないし、そもそも右折禁止の標識なんて見えない。一度は切符を切られたけど段々と腹がたってきて、ヤッパリおかしいって警察に抗議にいったの」
警察でのKさんの扱いはさながら“クレーマーおばさん”のようだったという。署員のなだめすかしを受けた挙句、「罰金7000円を払えばそれで終わり。払わないと今後大変なことになりますよ」とまでいわれたという。
そんな顛末で作成された取調べ状況報告書を紛失されたら、そりゃあたまらない。
「見つかった場所は同じ市内でしょ。下手したら、あの家の奥さんが犯罪を犯したって、後ろ指さされてもおかしくない。本当に警察っていい加減なんだから」
7000円を警察に払うか否か──。いまKさんは悩みに悩んでいる。
※週刊ポスト2013年2月8日号