国内

鎌倉の大仏 中国からの汚染物質でさらに退色、腐食する恐れ

 今春、スギ花粉に加えて、PM2.5という名前の物質が中国からやってきていると話題だ。大陸から海を渡ってやってくる汚染物質は、PM2.5だけではない。それらの影響で退色、腐食した姿になっている鎌倉大仏の様子を、作家の山藤章一郎氏がリポートする。

 * * *
 元は屋根つきだった。一度は台風で倒壊し、2度めは500年ほど前、大津波にさらわれた。爾来、鎌倉・長谷の大仏さまは直射日光と酸性雨を浴びっぱなしの露座におられる。鎌倉から江ノ電で3駅目、快晴の1日、外国人カップル、中年女性の群れを掻き分けて、高さ13メートルを越す阿弥陀如来坐像に拝した。

 大仏殿のない剥きだしの大きな仏は青空を背に、やや猫背の姿勢を保ち、膝で両手を組んでいる。上瞼に瞳を隠して瞑想し、仰ぎ見る者を慈悲で迎えてくれた。かつては金箔が貼られ、黄金色に輝いていたという。だがいまの黯(くろ)ずんだ姿は痛々しい。緑青や白い錆が浮き立つ。額も脂汗をかいたように黯い。

 大仏さまを特徴づける大きな福耳から顎のラインも傷みが目立ち、形、輪郭そのものが崩れているように見える。顔や胴の、なんどにも分けて鋳造された跡がCTスキャンの輪切りみたいに浮きだしている。

 経済成長をつづけた日本列島の負の遺産である。そしてこれから、偏西風に乗ってくる隣国の〈汚染〉は、大仏さまたちをさらに無残にさらす。係の人が教えてくれた。

「津波で家を失い、それから750年ずっと露天で坐わりつづけておられるのです。

 私は着任してまだ数年ですので、黄砂や酸性雨による目に見える変化は分かりませんが、中国からの汚染物質でこれからさらに、退色、腐食するのでしょうかね」

※週刊ポスト2013年3月8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

4月12日の夜・広島県府中町の水分峡森林公園で殺害された里見誠さん(Xより)
《未成年強盗殺人》殺害された “ポルシェ愛好家の52歳エリート証券マン”と“出頭した18歳女”の接点とは「(事件)当日まで都内にいた」「“重要な約束”があったとしか思えない」
NEWSポストセブン
「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
吉田鋼太郎と夫婦役を演じている浅田美代子(『あんぱん』公式HPより)
『あんぱん』くらばあ役を好演の浅田美代子、ドラマ『照子と瑠衣』W主演の風吹ジュン&夏木マリ…“カッコよくてかわいいおばあちゃん”の魅力
女性セブン
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
麻薬密売容疑でマグダレナ・サドロ被告(30)が逮捕された(「ラブ・アイランド」HPより)
ドバイ拠点・麻薬カルテルの美しすぎるブレイン“バービー”に有罪判決、総額103億円のコカイン密売事件「マトリックス作戦」の攻防《英国史上最大の麻薬事件》
NEWSポストセブン
宗教学者の島田裕巳氏(本人提供)
宗教学者・島田裕巳氏が皇位継承問題に提言「愛子天皇を“中継ぎ”として悠仁さまにつなぐ柔軟な考えも必要だ」国民の関心が高まる効果も
週刊ポスト
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一(50)。地元でもショックの声が──
《地元にも波紋》「デビュー前はそこの公園で不良仲間とよくだべってたよ」国分太一の知られざる “ヤンチャなTOKIO前夜” 同級生も落胆「アイツだけは不祥事起こさないと…」 【無期限活動停止を発表】
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《あだ名はジャニーズの風紀委員》無期限活動休止・国分太一の“イジリ系素顔”「しっかりしている分、怒ると“ネチネチ系”で…」 “セクハラに該当”との情報も
NEWSポストセブン
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン