ライフ

死亡した女性から子宮移植受けた女性が体外受精で妊娠に成功

「もし神様が許すなら、私たちの子供をこの胸に抱かせてほしい…」

 そう話す彼女の存在が、不妊に悩む世界中の女性たちの希望となっている。4月12日、トルコ・アンタルヤの大学病院が、亡くなった女性から子宮移植を受けたトルコ人女性、デルヤ・セルトさん(22才)が体外受精により妊娠したことを発表した。移植された子宮での妊娠は、世界で初めてのことだ。

 セルトさんは卵巣こそあるものの、生まれつき子宮がなく、2011年8月に同病院で子宮移植の手術を受けていた。術後には生理も始まり、1年半かけて子宮が正常に機能していることが確認された。

 そこで卵巣から卵子を取り出し、体外受精を試み、受精卵を子宮に戻したところ、無事に着床。現在妊娠3週で、経過は順調だという。セルトさんのように、先天的に子宮のない女性は世界で5000人に1人の割合で存在するといわれており、子宮移植自体は彼女が世界で2例目だ。

 初の移植は2000年、サウジアラビアで行われた。このときは生きたドナーからの移植、すなわち生体移植だった。26才の女性に対し、閉経後の46才の女性の子宮を移植したが、生理こそ始まったものの、手術から99日後、患者に深刻な血栓が発生し、失敗。子宮を取り除かざるを得なかった。

 それだけに、子宮移植に加え妊娠にも成功したということは人類史上初のことであり、世界中の医療関係者大注目のニュースなのだ。昨年9月には、母子間での子宮移植がスウェーデンで成功している。この夏にもすでに保存してある受精卵を戻す計画もあり、このケースへの期待も高まっている。医学博士の森田豊氏はこう語る。

「これは、もともと子宮がないかただけでなく、なんらかの病気で子宮を摘出した女性も、自分で妊娠、出産できる可能性が出てきたことを意味するもので、医学界にとって大変大きな一歩なんです。なにしろこれまでは、子宮がんなどで子宮を摘出した女性が子供を望む場合、体外受精をした上で他人の女性の子宮を借りる、いわゆる“代理出産”を選ぶしかなかったわけですから…」

 今回のように、「移植した子宮で妊娠させる」という医療技術が確立されれば、妊娠をあきらめざるを得なかった多くの女性たちが救われることになるだろう。しかも、方法は体外受精だけにとどまらない。

「子宮移植後も卵管が問題なく機能していれば、自然妊娠だってできる可能性があります」(前出・森田氏)

※女性セブン2013年5月9・16日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

永野芽郁に業界からラブコール
《金髪写真集をフィリピンで撮影済み》永野芽郁、すでに民放キー局から「連ドラ出演打診」も…今も業界から評価される「プロ意識」
NEWSポストセブン
お召し物のカラーとマッチしたイヤリング(2025年10月2日、撮影/JMPA)
《あっという間に》「また“佳子さま売れ”」香川ご訪問で着用の漆のイヤリングが売り切れ状態に 紀子さまは刺繍のイヤリングをお召しに
NEWSポストセブン
予選落ちした渋野日向子(AFP=時事)
《予選落ちで大泣きの渋野日向子》米ツアーのシード権は厳しい状況…日本ツアースポット参戦の結果次第で来季は日本の3年シードがスタートになる可能性も
NEWSポストセブン
『ばけばけ』でヒロインを務める高石あかり
【インタビュー】朝ドラNewヒロイン・高石あかり「『ばけばけ』は攻めた作品ですが、怖さはありません」 抜擢を知った瞬間は「記憶がないくらいの喜びで頭が真っ白に」 
NEWSポストセブン
『ばけばけ』でヒロインを務める高石あかり
【インタビュー】朝ドラNewヒロイン・高石あかり「『ばけばけ』は攻めた作品ですが、怖さはありません」 抜擢を知った瞬間は「記憶がないくらいの喜びで頭が真っ白に」 
NEWSポストセブン
田中将大の来季はどうなる
巨人・田中将大、200勝達成で気になる来季の去就 「現役引退」か「大幅減俸で現役続行」か、コーチ兼任を期待する声も
週刊ポスト
一般の人々が公務中の皇族を撮影することはマナー違反なのか。宮内庁に取材した(時事通信フォト)
《「非礼ではないか」の声も》宮内庁が回答した「一般の方々」の“撮影・投稿ルール” とは…佳子さま“どアップ”動画に称賛も、過去には“寝顔盗撮”が問題に
NEWSポストセブン
“ラブホテル通い”を認めた小川晶・前橋市長
《前橋市長が利用した露天風呂付きラブホ》ベッド脇にローテーブルとソファ、座ると腰と腰が密着…「どこにどのように着席して相談したのか」疑問視される“部屋の構造”
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《自分の身体で稼いだものだ》「タダで行為できます」金髪美女インフルエンサー(26)、離婚手続きで夫サイドと資産めぐり対立「一部が分配されるべき」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
「家に帰るのが幸せ」大谷翔平がリフレッシュする真美子さんとの“休日”「スーパーにお買い物に行ったり…」最近は警備強化で変化する「デコピンの散歩事情」
NEWSポストセブン
高市氏、小泉氏
自民党が進める“日本維新の会との連立交渉”に2つの壁 維新が連立条件に掲げる「大阪副首都構想」は自民党内の大きな火種に、大阪で対立する公明も強い難色
週刊ポスト
草間容疑者は新宿区内の雑居ビルエントランスで逮捕された
《マスク姿でウロウロ…》草間リチャード敬太容疑者が逮捕前に見せていた“不可解な行動”とは 近隣店従業員が「一見酔っている様子はなくて…」と語る“事件直前の姿”
「週刊ポスト」本日発売! 朝日新聞を襲う「森友ブーメラン」スクープほか
「週刊ポスト」本日発売! 朝日新聞を襲う「森友ブーメラン」スクープほか
NEWSポストセブン