国内

独立行政法人トップ 官僚OBの天下り完全復活で民間人はゼロ

 安倍首相が6年前の政権当時と現在とで姿勢を180度変えたのが、役人の天下り規制、すなわち“シロアリ退治”への情熱だ。かつて公務員改革に“ピュアな情熱”を燃やしていた頃の安倍首相の有名な国会答弁が残っている。

「税金の無駄使いの背景にある天下り問題を根絶し、年功序列を打破して、役所の中の非効率を正し、小さく筋肉質の政府をつくりあげるのが政府の基本方針であります」(2007年5月15日の衆院本会議)

 元祖・シロアリ退治宣言だ。その言葉通り、第1次安倍内閣は役所の再就職斡旋を禁止する改正国家公務員法を成立させ、天下り官僚の巣窟である独立行政法人の廃止・民営化の原則を閣議決定した。

 さらに独法の役員を「民間公募」して徹底的に天下りをなくす方針を出そうとしていたところで、役人の猛反発を浴びて閣僚スキャンダルが相次ぎ、安倍氏は退陣に追い込まれた。

 だが、そうした努力は決して無駄ではなかった。役員公募制度は次の福田内閣の「独立行政法人整理合理化計画」に盛り込まれ、民主党への政権交代後も引き継がれて鳩山内閣下でスタートした。これまでに証券会社のトレーダーやエンジニア、トマト農家などざっと70人ほどの民間人が官僚にかわって独法の理事長や理事に就任し、天下りに風穴を開けたからだ。

 ところが、安倍氏が再び首相に就任するや、改革の流れをぶち壊したのである。第2次安倍政権下で新たに行なわれた天下り法人の役員人事では、これまで官僚OBが就いていた12法人(役員13人)で「役員公募」が行なわれたが、「年収1900万円」の日本貿易保険理事長には経産省の元審議官が選ばれ、全国で青少年自然の家を運営する国立青少年教育振興機構理事長(年収1500万円)には元文部科学審議官が再任、種苗管理センター理事長(年収1300万円)には農林水産省東海農政局長が選ばれるなど、官僚OBの天下りが完全に復活し、なんと民間人の登用はゼロなのだ。

 任命された役員の出身についての公表の仕方もこっそり変更された。これまでは国家公務員の「OB」と「民間」に分けてそれぞれの人数が発表されていたが、今回から、「公務員OB」と「公務員OB以外」という区分になった。「公務員OB以外」といっても、国立大学の教授や独法のプロパー職員からの昇格などのケースがこれにあたり、今回登用されたのは全員が“元”ないし“準”公務員である。

 純民間人がいなくなったことを隠そうという姑息なやり方ではないか。

 内閣官房行政改革推進本部事務局にその点を質すと、「表記の仕方を変えたのはその方が適切と判断したからです。(純民間人の役員起用がなかったのは)今回はたまたまそうなっただけです」と、なんとも苦しい言い訳を繰り返した。

※週刊ポスト2013年6月7日号

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン