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元自民長老議員 安倍首相の150万円所得増はただの選挙対策

 与党は真の課題をすべて先送りし、野党はただ自滅してゆくだけ。かくもつまらなくなった日本政治を憂い、村上正邦氏(元自民)、矢野絢也氏(元公明)、平野貞夫氏(元民主)、筆坂秀世氏(元共産)という4人の“賢人”が集まった。長年の経験としがらみのない立場だからこそ語れる、歯に衣着せぬ大放談。最近までもてはやされたアベノミクスについて忌憚のない意見をぶつけ合った。

──まずはアベノミクスをどう評価するか。

平野:アベノミクスは中央銀行と政府が一緒になって「マネーゲーム」を行なっている。実体経済を無視したもので、もはや人の道に反した行為だと私は思う。

矢野:実際のパイが増えるわけでもないのに幻想だけ振りまいて「成長」「成長」と声高にいわれても、はっきりいって詐欺の類いだと思いますね。

筆坂:たしかに、テレビを見ていると、なんでもかんでもアベノミクスで説明しようとして、「高級品が売れ出した」とかいっている。しかし、所得も上がっていないのにそんなわけない。

平野:そもそも政治で資本主義経済をコントロールなんてできないんです。デフレだのインフレだのいっていますが、こうした経済理論は100年以上も前の考え方で、現在の金融資本が支配する経済は誰にも予測できない。こうして話してるけど、うちらだって全員、経済のことなんてよくわからないもん(笑い)。

筆坂:だけど、安倍首相がやっていることがおかしいことはわかる。笑ったのは「薬のネット販売解禁」ですよ。ネットで販売したって、店頭で買うかネットで買うかの違いだけで、薬の消費量が増えるわけないでしょ。楽天を儲けさせるだけでなんで成長戦略なのか。

 正社員のクビ切り自由化にしても、そんなことしたら非正規雇用をますます増やして、国民の所得を不安定にして消費を減らすだけ。安倍さんは新自由主義の一番悪いところを真似ている。

──安倍首相は10年後には所得を150万円増やすといっています。

村上:はっきりいってあれはただの選挙対策ですよ。民主党が以前、子ども手当2万6000円を約束して勝ったように、安倍は「10年後に150万円」などと甘いエサで票を釣って、参院選に勝とうとしている。ねえ、平野さん? 子ども手当だってそうだったでしょ?

平野:いや、それは矮小化しすぎ! ただ最近、アベノミクスを計画した人たちと会食する機会があって、名前は明かせないんですが、最初から「参院選までもてばいいんだ」とはっきりとじゃないが阿吽の呼吸で指示されてたみたいで。

矢野:これから生まれる子供たちは年金医療の負担が大きい少子高齢化社会のなかで1000兆円の借金を背負わされているわけです。好ましくはないけど、世代間の戦争、若い世代の老齢者に対する復讐、これは避けられないでしょうね。

【むらかみ・まさくに】1932年生まれ。1980年に参議院議員初当選。自民党国対委員長、労働大臣、参議院自民党幹事長、参議院議員会長を歴任した。

【やの・じゅんや】1932年生まれ。公明党立党に参加し、1967年に衆議院議員に初当選。公明党書記長、委員長、最高顧問を歴任。

【ふでさか・ひでよ】1948年生まれ。日本共産党入党後、1995年に参議院議員初当選。党中央委員会常任幹部会委員、書記長代行などを務めた。

【ひらの・さだお】1935年生まれ。衆議院事務局に務めた後、1992年に参議院議員初当選。自民党、新進党、自由党、民主党を渡り歩いた。

※週刊ポスト2013年6月28日号

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