スポーツ

楽天の精神的支柱・斎藤隆は元メジャーなのに腰の低さも評判

 26日から始まるプロ野球日本シリーズ。初進出の楽天イーグルスは田中将大、外国人だけじゃない! 初年度から同球団を取材しているノンフィクション・ライターの神田憲行氏がお勧めの三選手を挙げた。

 * * *
 楽天に取材に行くと、担当記者から「この二人には会っておいた方がいいよ」と勧められる選手がいる。

 斎藤隆投手と二塁手の藤田一也選手だ。

 斎藤(43歳)はメジャーのダイヤモンド・バックスから今季、8年ぶりに日本球界に復帰した。穏やかな人柄が選手たちの精神的柱になっている。

「斎藤は楽天に入団が決まったとき、職員ひとりひとりに『これからお世話になります、斎藤隆と申します』と挨拶して回ったそうです。メジャーまで経験してあんなに腰の低い人はいない」(担当記者)

 9月26日、西武ドームでレギュラーシーズンの優勝を決めた直後、選手を取材するため通路の両側に並ぶ記者たちの中を斎藤が歩いていた。だが途中で「あっ」と、引き返す。忘れ物?と思っていたら、斎藤が記者の列の先頭まで戻り、両手を広げた。

「じゃみなさん、ハイタッチで!」

 優勝の喜びを報道陣とも分かち合おうという斎藤の配慮だった。その手のひらは大きく、意外と柔らかだった。大きな人だな、と思った。

 藤田(31歳)は昨季途中、横浜DeNAよりトレードで移籍してきた。守備力に定評があり、星野監督も「あの守備のお陰で田中は5勝ぐらいしているんじゃないか」というほど。

 見所はランナーが一塁にいて、二塁ベース脇に打球が飛んだとき。藤田はゴロを取ってそのまま二塁ベースに入り、一塁走者のスライディングをかわすためジャンプ、一塁に送球して「ひとりダブルプレー」を完成する。このジャンプが、まるで空中に階段があるかのように駆け上がるのだ。私はエアージョーダンをもじって「エアー藤田」と密かに呼んでいる。

 人柄も良く、ファンにサインもよくする。試合後の囲み取材を終えたあと、記者に「ありがとうございます」と頭を下げるプロ野球選手に初めて会った気がする。

 この二人に加えて、ショートでキャプテンの松井稼頭央(38歳)の働きも目が離せない。

 今季レギュラーシーズンの成績、打率.248、本塁打11本は往時の彼の成績を知るものからすれば寂しく思うかもしれない。

 しかしここぞというときの1本、守備は輝きを失っていない。クライマックスシリーズの第3戦の2回、松井はこのシリーズ初めての安打を放つと、次の嶋の左翼線を破る二塁打で一塁から一挙に生還した。今季の盗塁数はわずかに1個でも、ベースランニングの技術、捕手里崎のブロックを見て股間から本塁ベースに手を伸ばした判断力、松井の輝きは失われていない。ふだんのアベレージは低くても、「ここぞ」という試合では大きなプレーが出る。私は松井を見ていて、「一流のベテラン」とはどうあるべきか、考えさせられた。

 26日土曜日から始まる巨人との日本シリーズでは、ぜひこの3選手にも注目してほしい。

関連キーワード

トピックス

音楽業界の頂点に君臨し続けるマドンナ(Instagramより)
〈やっと60代に見えたよ〉マドンナ(67)の“驚愕の激変”にファンが思わず安堵… 賛否を呼んだ“還暦越えの透け透けドレス”からの変化
NEWSポストセブン
石破茂・首相の退陣を求めているのは誰か(時事通信フォト)
自民党内で広がる“石破おろし”の陰で暗躍する旧安倍派4人衆 大臣手形をバラ撒いて多数派工作、次期政権の“入閣リスト”も流れる事態に
週刊ポスト
1999年、夏の甲子園に出場した芸人・とにかく明るい安村(公式HPより)
【私と甲子園】1999年夏出場のとにかく明るい安村 雪が降りしきる母校のグラウンドで練習に明け暮れた日々「甲子園を目指すためだけに高校に通った」 
女性セブン
クマ外傷の専門書が出版された(画像はgetty image、右は中永氏提供)
《クマは鋭い爪と強い腕力で顔をえぐる》専門家が明かすクマ被害のあまりに壮絶な医療現場「顔面中央部を上唇にかけて剥ぎ取られ、鼻がとれた状態」
NEWSポストセブン
小島瑠璃子(時事通信フォト)
《亡き夫の“遺産”と向き合う》小島瑠璃子、サウナ事業を継ぎながら歩む「女性社長」「母」としての道…芸能界復帰にも“後ろ向きではない”との証言も
NEWSポストセブン
ジャーナリストの西谷格氏が新疆ウイグル自治区の様子をレポート(本人撮影)
《新疆ウイグル自治区潜入ルポ》現地の人が徹底的に避ける「強制収容所」の話題 ある女性は「夫は5年前に『学習するところ』に連れて行かれ亡くなりました」
週刊ポスト
会見で出場辞退を発表した広陵高校・堀正和校長
《海外でも”いじめスキャンダル”と波紋》広陵高校「説明会で質問なし」に見え隠れする「進路問題」 ”監督の思し召し”が進学先まで左右する強豪校の実態「有力大学の推薦枠は完全な椅子取りゲーム」 
NEWSポストセブン
起訴に関する言及を拒否した大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、ハワイ高級リゾート開発を巡って訴えられる 通訳の次は代理人…サポートするはずの人物による“裏切りの連鎖” 
女性セブン
スキンヘッドで裸芸を得意とした井手らっきょさん
《僕、今は1人です》熊本移住7年の井手らっきょ(65)、長年連れ添った年上妻との離婚を告白「このまま何かあったら…」就寝時に不安になることも
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
《広陵高校、暴力問題で甲子園出場辞退》高校野球でのトラブル報告は「年間1000件以上」でも高野連は“あくまで受け身” 処分に消極的な体質が招いた最悪の結果 
女性セブン
お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト