ビジネス

三木谷氏の民間議員辞任「安倍政権失速の引き金に?」と識者

 プロ野球日本一の余韻に浸る楽天。しかし、喜んでばかりいられないのが本業の会長兼社長に君臨する三木谷浩史氏である。「楽天市場」の優勝記念セールで割引表示を偽装する業者が相次ぎ、その対応に追われる始末になったからだ。

 また、長らく規制撤廃に執念を燃やしてきた大衆薬(一般用医薬品)のインターネット販売をめぐり、政府が劇薬など一部品目だけ規制を残す方針を示したことに猛反発。「時代錯誤も甚だしい」として、グループ企業を通じて国を相手に行政訴訟も辞さない構えだ。

 今年1月より安倍政権の経済ブレーンとして、産業競争力会議の民間議員も務めていた三木谷氏。「政商」との批判を受けながらも自身の信念を貫いてきたが、ここにきて反旗を翻す格好で議員辞任を表明してしまった。

 一体、三木谷氏にどんな心情の変化があったのか。近著に『どん底から這い上がった起業家列伝』(光文社刊)のある経済ジャーナリストの松崎隆司氏が推し量る。

「もともとネットビジネスは規制緩和の中で成り立つ側面が大きく、三木谷さんもIT業界の規制改革論者として重厚長大のオールドエコノミーばかりを優遇して利権を貪る政治家や官僚たちを批判してきました。自ら経団連入りをしたのも自分の発言力が増せば規制緩和に対する考え方も受け入れられるのではないかと思ったからです。結局、相手にされずに脱退して新経済団体をつくることになりますが……。

 薬のネット解禁も昨日今日に始まった議論ではなく、昔から訴え続けてきたことです。それが安倍政権になってようやく政府が本腰を入れてくれると期待してフタを開けたら、“総論賛成、各論反対”と今までと何ら変わらず、結局は新興産業が割を食う形に。それを政治の最前線でまざまざと見せつけられて嫌気が差したのでしょう」(松崎氏)

 自民党内には「そもそも彼の規制改革案は無謀すぎる」「自身のショッピングサイトもコントロールできないのに、薬の全面解禁など危な過ぎる」といった声もあるため、政治との関係が薄れていく三木谷氏の言動に胸をなで下ろす向きはある。

 しかし、「三木谷氏が見切りをつけたことで、逆に安倍政権の本質的な姿が浮き彫りになる」と話すのは、前出の松崎氏である。

「もともと安倍政権は“王政復古”みたいな形で、新しいことをやるフリをしながら古き良き日本に戻そうとする雰囲気がある。官僚主導の政治にしてもそうです。それでも経済が大きく成長するならいいのですが、株価は横ばい状態で第3の矢である成長戦略も行き詰っています。

 安倍政権は何かをやってくれるという期待感が薄れている中での三木谷氏の辞任。『何も新しい成長戦略を打ち出せないじゃないか』という世論を招き、安倍政権失速の引き金を引くきっかけになってしまう可能性だってあります」(松崎氏)

 11月9日に亡くなった父・良一氏(元神戸大学教授)との共著『競争力』(講談社刊)の中で、三木谷氏は安倍政権についてこんなことを書いている。

<アベノミクスは評価すべき点も多いが、役人が選んだ分野に多額の投資を行う国家資本主義的な発想が払拭できなかったのは残念です。官僚主導の国家資本主義(モラトリアム政策)は危険です>

 本業のコングロマリット化のみならず、保守的な体質だったプロ野球界にも風穴を開けて存在感を示してきた三木谷氏。今後、“IT業界の雄”の発言力はどこまで政財界に通用するのか。

関連記事

トピックス

水原一平とAさん(球団公式カメラマンのジョン・スーフー氏のInstagramより)
「妻と会えない空白をギャンブルで埋めて…」激太りの水原一平が明かしていた“伴侶への想い” 誘惑の多い刑務所で自らを律する「妻との約束」
NEWSポストセブン
都内の日本料理店から出てきた2人
《交際6年で初2ショット》サッカー日本代表・南野拓実、柳ゆり菜と“もはや夫婦”なカップルコーデ「結婚ブーム」で機運高まる
NEWSポストセブン
福井放送局時代から地元人気が高かった大谷舞風アナ(NHKの公式ホームページより)
《和久田麻由子アナが辿った“エースルート”を進む》NHK入局4年で東京に移動『おはよう日本』キャスターを務める大谷舞風アナにかかる期待
週刊ポスト
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
《豊田市19歳女性刺殺》「家族に紹介するほど自慢の彼女だったのに…」安藤陸人容疑者の祖母が30分間悲しみの激白「バイト先のスーパーで千愛礼さんと一緒だった」
NEWSポストセブン
緊急入院していた木村文乃(時事通信フォト)
《女優・木村文乃(37)が緊急入院していた》フジ初主演ドラマ撮影中にイベント急きょ欠席 所属事務所は「入院は事実です」
NEWSポストセブン
2023年7月から『スシロー』のCMに出演していた笑福亭鶴瓶
《スシローCMから消えた笑福亭鶴瓶》「広告契約は6月末で満了」中居正広氏の「BBQパーティー」余波で受けた“屈辱の広告写真削除”から5カ月、激怒の契約更新拒否
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長》東洋大卒記者が卒業証明書を取ってみると…「ものの30分で受け取れた」「代理人でも申請可能」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
《フジテレビに蔓延するオンカジ問題》「死ぬ、というかもう死んでる」1億円以上をベットした敏腕プロデューサー逮捕で関係する局員らが戦々恐々 「SNS全削除」の社員も
NEWSポストセブン
ノーヘルで自転車を立ち漕ぎする悠仁さま
《立ち漕ぎで疾走》キャンパスで悠仁さまが“ノーヘル自転車運転” 目撃者は「すぐ後ろからSPたちが自転車で追いかける姿が新鮮でした」
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン
元KAT-TUNの亀梨和也との関係でも注目される田中みな実
《亀梨和也との交際の行方は…》田中みな実(38)が美脚パンツスタイルで“高級スーパー爆買い”の昼下がり 「紙袋3袋の食材」は誰と?
NEWSポストセブン