いまだどの国も経験したことのない超高齢化社会に突入しつつある日本。それとともに、認知症患者が増え続けている。現在の推定有病者は462万人で、近い将来、「認知症1000万人時代」が到来するといわれる。
それに伴い、本来喜ばしいはずの長寿がネガティブにとらえられるようになった。
「昔は周りから長生きを歓迎され、たとえボケても家族や地域がサポートしていました。現在は核家族化と都市化が進み、ひとりが認知症になると介護する人の負担が極端に重くなる。結果的に、長生きが疎まれる世の中になってしまいました」
『ボケない「長寿脳」の作り方 ドキドキ、ワクワクが鍵だった!』(宝島社新書・798円)を上梓した医療ジャーナリスト・伊藤隼也さんは語る。だからといって、認知症をいたずらに恐れる必要はない。心がけるべきは、認知症の正体を知り、“正しく恐れる”ことだ。
「日本は医療環境が整っているので、“病気になったら医者にかかればいい”という発想をしがちですが、認知症は別。最も多いアルツハイマー型認知症は、一度発症すると症状が不可逆に進行し、治療は困難です。だからこそ、日頃から認知症の発症予防に取り組むことが重要です」(伊藤さん・以下「」内同)
キーポイントとなるのが「脳」だ。認知症は脳内の神経細胞が衰えることで発症する脳の病気。脳を鍛えあげて認知症に負けない「長寿脳」を作り上げるのがいちばんの予防法となる。
これまでさまざまな「脳トレ」がブームになったが、その効果は未知数だった。しかし現在は、愛知・大府市の国立長寿医療研究センターをはじめ、世界中の由緒ある研究機関が科学的確証(エビデンス)を積み重ねたうえで推奨する予防法が数多く登場している。
「認知症研究の権威であるNIH(アメリカ国立衛生研究所)が認知症予防の科学的トレーニングとして第一に認めるのは有酸素運動です。酸素を送ることで脳が活性化し、細胞の衰えを防げる。アメリカでは“脳を鍛えるには運動しかない”といわれています」
ただし、漠然とした運動はNG。料理と同じで“ひと手間”加えると効果が大きくなることが、新たに明らかになっている。
「たとえば、気軽な健康法として中高年に人気のウオーキングでも、ただ漫然と歩くだけでは意味がありません。安静時の心拍数の6割増しが目安の心拍数ウオーキングを心がけると、酸素を多く含んだ血液がなみなみと脳に送られ、脳全体が活性化することがわかりました。ハッハッと息が弾み、少しきついなと感じるけど、会話は続けられるペースを目指しましょう」
※女性セブン2014年2月27日号