日本で再び鳥インフルエンザの脅威が増大している。4月12日から13日にかけ、熊本県多良木町の養鶏場で死亡した約1100羽のニワトリを遺伝子検査したところ、「H5」型の鳥インフルエンザウイルスが検出された。
同県は速やかに約11万羽のニワトリの殺処分や、半径3~10kmでニワトリと卵の移動禁止を決定。その他、周辺の道路や車両の消毒作業など感染拡大を防ぐ対策が次々と取られている。
ここまで緊張感が高まっているのには理由がある。鳥インフルエンザ情報に詳しい医学博士で、北海道・小樽市の元保健所長である外岡立人氏が話す。
「3年前に日本で感染が広がり、もっともよく知られている鳥インフルは『H5N1』型ですが、今年の1月に韓国の食用アヒル農場で確認されたのはH5N1が変異したとみられる強毒性の『H5N8』型で、熊本もこのタイプの可能性が高い。
韓国ではアヒルだけでなく、ニワトリやウズラなどにも感染してあっという間に全土に広がり、その損害額は過去の鳥インフルの中で最大になっています。
当然、日本でも渡り鳥などを介してH5N8が入ってくることは想定していたはずで、いよいよ現実のものになったことで、なんとか熊本だけで食い止めたいと考えているのです」
もちろん感染地域が広がれば養鶏業者などへの被害は甚大なものとなるが、気になるのは鳥から人への感染、そして人から人へ感染する可能性である。今のところ韓国から“ヒト感染”の報告は出ていないものの、油断は禁物だ。外岡氏が続ける。
「ウイルスはある日突然出てくるもので、いつ変異して人に感染するか分かりません。韓国ではすでに食用の犬に感染して抗体ができていますし、鳥類以外でも哺乳類、人に感染する可能性は否定できません。もし人に感染したら重症化の恐れもあります」