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日本に好意的な香港への進出 最大の売りは「日本」ブランド

 日本の農業は弱いというイメージが強いが、以前から神戸牛などの霜降り和牛肉は海外で「WAGYU」として人気が高い。だが、最近はヘルシー志向にあわせて、比較的あっさりした和牛も浸透し始めている。

 徳島県で牧場経営と食肉の加工販売を行なう「マルナカ食品」は、「すだち牛」で2010年に香港進出を果たした。

 すだち牛は4種類ある和牛のひとつ、褐毛和牛に分類され、徳島名産のすだち果汁をエサとする。

「天然のすだち果汁に含まれるビタミンCやクエン酸が肉の甘味を引き出します。また、ミネラルやタンパク質、食物繊維を多く含むおからを食べることで肉質にキメと張りが生じる。脂の濃厚な黒毛和牛よりあっさりしていて、肉質を楽しみたい年配の方に好まれます」(中山義康社長)

 以前から輸出に関心があった中山社長は2010年に知り合った香港のバイヤーと意気投合。ヘルシーなすだち牛に魅了されたバイヤーから「ぜひ出店してほしい」と熱烈なラブコールを受け、香港進出を決意した。

 2010年11月、香港の百貨店『一田百貨』沙田店内に直営の精肉店『桐乃井』をオープン。肉の輸出は検疫が厳しいため、香港の衛生基準に適合した鹿児島県の食肉処理場で肉を解体して運ぶ。

「現地で肉を加工して、日本と同様にショーケースで対面販売の量り売りをします。最初はニーズがわからなくて苦労しました。そこで好みのサイズや肉の種類など現地の要望を徹底的に聞き出した。香港人は日本人よりヘルシー志向が一段と高いので、脂をギリギリまでカットしてステーキ肉を出すなどの工夫を重ねました」(中山社長)

 営業努力で徐々にすだち牛が浸透し、2年目から黒字に。最大の売りは「日本」というブランドそのものだ。

「香港は日本に好意的な方が多く、日本人に対する信頼も厚いので、店には日本人スタッフを常駐させています。これは百貨店側の要望でもありました。その他にも日本風の書体で商品名を書いて、日本産をアピールしています」(中山社長)

 現在の売り上げは月2000万円ほど。今後は海外で活躍できる人材を増やし、さらに販路を拡大する方針だ。

※SAPIO2014年5月号

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