亡くなった辻上里菜さん(写真/里菜さんの母親提供)
3年前の3月。「人を殺した」と浪速警察署に自首してきた男の部屋から、血を流して死亡している22歳の女性が発見された。女性の死因は男からゴルフクラブで多数回殴られた末の失血死で、そのうち頭部顔面には18箇所もの傷があった。だがのちに殺人で起訴された男は法廷で「殺意はなかった」と主張。判決ではこれが認められ、懲役10年の判決が言い渡されている(求刑懲役16年)。
女性は夫のDVから逃れるために別居し、シングルマザーとして娘を育てるため風俗店で働くうちに、 違法薬物に手を染めた。薬物依存を断ち切るための入院を控えていたが、新型コロナウイルス感染拡大により予定が延びてしまう。入院が可能になるまで家を使っていい、と名乗り出て、同居していたのが事件を起こした男だ。
なぜ男は事件を起こしたのか。2024年に行なわれた裁判員裁判では「女性が別の男とグルになって、自分を脅迫していた」と証言。大阪地裁も判決でその言い分を認めた。ところが、その“別の男”に取材したところ「(そのような)事実はありません」との新証言が得られた。 それどころか“別の男”は著者が取材を申し込むまで、女性が亡くなっていたことすら、知らなかったのだ。
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中田正順(まさゆき)受刑者(逮捕当時39)にゴルフクラブで殴り殺されたのは、一時的に中田受刑者の元に居候していた辻上里菜さん(当時22)。2022年3月23日、中田受刑者が浪速警察署に自首したことから、事件は明るみに出た。警察が里菜さんの遺体を発見した時点で、すでに死後数日が経過していたという。
「娘はゴルフクラブで60箇所以上を殴られていて失血死していました。頭部を中心に傷があったそうです」
そう語るのは里菜さんの母親だ。頭部を多数回、ゴルフクラブで殴られていたことから、里菜さんの亡骸とは、顔の修復作業ののちに対面した。