国際情報

中国の高速道路で「料金踏み倒し」の不正相次ぎ死者まで発生

 インフラを整備しても、えてして想定外のことは起こるものだ。中国の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聡氏が指摘する。

 * * *
 中国の高速道路で再び驚くべきモラルハザードが広がっている。

 高速道路を使用しても料金を支払いたくないという理由で、偽装や不正カードの使用、はたまた開閉バーを破壊して強行突破する者や、料金所の職員に対する暴行に及ぶ者まで少なくないというのだ。

 なかでも現在、当局(高速道路管理局、高速道路運営公司など)が最も頭を痛めているのが、開閉バーを強行突破して料金を踏み倒す悪質ドライバーが増えているという問題なのだという。

 この問題は地方に行けば行くほど酷くなっているようで、昨年10月には青海省が集中取り締まりを行うことを宣言して全国的な話題を呼んだ。

 青海省人民政府のサイトに残された記事によれば、10月1日から全省一斉に取締りキャンペーンを行うその理由として、〈近年、高速道路の通行料徴収において暴力的に法を破り、悪意を持って開閉バーを破壊、不法にすり抜けるといった犯罪が日増しに深刻となってきている。なかでも開閉バーを破壊するケースでは、料金所の職員に対して暴力行為に及ぶ者も増えていて、道路の集金環境は悪化の一途をたどっている〉ことを挙げている。

 悪質なドライバーが料金所を突破するやり方は日本人の想像を絶する激しさで、なかには、大型のコンテナを積んだトラックが数十台も連なって料金所を猛スピードで走りぬけてゆくというやり方なのだ。轟音を響かせて次々に通り過ぎる強行突破の瞬間は、中国の多くのサイトに映像が残されている。青海省での取締りキャンペーンが行われる約1ヵ月前の9月26日、中国中央テレビ(CCTV)は、料金徴収の係員をドライバーたちが取り囲み開閉バーを強行突破するシーンの映像で報じているのだが、驚いたことにはタイトルには係員が〈圧死した〉とも書かれているのである。

 料金踏み倒しの犯罪に対抗するためには、当局側も覚悟が必要となる。前出の記事によれば、キャンペーンでは交通軽鎖だけでなく特別警察の応援も頼んだという。

 ではこんな驚愕の犯罪がいったいどれほどの頻度で起きているのだろうか。

 広州市のケースを見ると、2010年4月14日付大洋ネット(『広州日報』)に掲載されたルポルタージュ記事によれば、〈広州広園大橋料金所では、1日200台以上の車が何らかの不正行為によって料金逃れをしている〉という。

 この状況は前出の青海省人民政府のサイトにもあるように〈悪化の一途をたどり〉、現在では、〈ここの10年で最も厳しい状態になっている〉(『新京報』2013年11月15日)とされる。

 同記事が11月14日付『鄭州日報』からの引用として報じたところによれば、青海省では、〈今年7月と8月の期間、1日に強引に開閉バーを突破する車両は800台を超えている〉というから驚きである。

これではキャンペーンによって一時的に取り締まることはできても、いずれ無法状態に陥ることは容易に想像される。

関連キーワード

関連記事

トピックス

“ATSUSHIものまね芸人”として活動するRYO
【渦中のRYOを直撃】「売名じゃない」橋幸夫さん通夜参列で炎上の“ATSUSHIものまね芸人”が明かした「反省」と「今後」…「100:0で僕が悪者になっている」との弁も
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月7日、撮影/JMPA)
《再販後完売》佳子さま、ブラジルで着用された5万9400円ワンピをお召しに エレガントな絵柄に優しいカラーで”交流”にぴったりな一着
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(共同通信)
《やる気スイッチ講師がわいせつ再逮捕》元同僚が証言、石田親一容疑者が10年前から見せていた“事件の兆候”「お気に入りの女子生徒と連絡先を交換」「担当は女子ばかり」
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷が“即帰宅”した理由とは
《ベイビーを連れて観戦》「同僚も驚く即帰宅」真美子さんが奥様会の“お祝い写真”に映らなかった理由…大谷翔平が見計らう“愛娘お披露目のタイミング”
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが、「選挙」と「投票」について綴った(撮影/松田忠雄)
渡邊渚さんが綴る“今の政治への思い”「もし支持する政党がパートナーと全く違ったら……」
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《山瀬まみが7ヶ月間のリハビリ生活》休養前に目撃した“スタッフに荷物を手伝われるホッソリ姿”…がん手術後に脳梗塞発症でICUに
NEWSポストセブン
自民党屈指の資金力を誇る小泉進次郎氏(時事通信フォト)
《小泉進次郎氏の自民党屈指の資金力》政治献金は少なくても“パーティー”で資金集め パーティーによる総収入は3年間で2億円、利益率は約79%
週刊ポスト
イベントキャンセルが続く米倉涼子
《新情報》イベントのドタキャン続く米倉涼子を支えた恋人の外国人ダンサー、日本を出国して“諸事情により帰国が延期”…国内でのレッスンも急きょキャンセル 知人は「少しでもそばにいてあげて」
NEWSポストセブン
小川晶市長“ホテル通い詰め”騒動はどう決着をつけるのか(左/時事通信フォト)
《前橋・小川市長 は“生粋のお祭り女”》激しい暴れ獅子にアツくなり、だんベぇ踊りで鳴子を打ち…ラブホ通い騒動で市の一大行事「前橋まつり」を無念の欠席か《市民に広がる動揺》
NEWSポストセブン
歴史ある慶應ボート部が無期限で活動休止になったことがわかった(右・Instagramより)
《慶應体育会ボート部が無期限活動休止に》部員に浮上した性行為盗撮疑惑、ヘッドフォン盗難、居酒屋で泥酔大暴れも… ボート部関係者は「風紀は乱れに乱れていた」と証言
NEWSポストセブン
元大関・貴景勝
断髪式で注目の元大関・貴景勝 「湊川部屋」新設に向けて“3つの属性の弟子”が混在する複雑事情 稽古場付きの自宅の隣になぜか伊勢ヶ濱部屋の住居が引っ越してくる奇妙な状況も
NEWSポストセブン
京都を訪問された天皇皇后両陛下(2025年10月4日、撮影/JMPA)
《一枚で雰囲気がガラリ》「目を奪われる」皇后雅子さまの花柄スカーフが話題に 植物園にぴったりの装い
NEWSポストセブン