東京の湾岸エリアでは、供給増と価格の上昇という動きも見られている。2015年度の着工予定だが、中央区勝どき地区で3000戸規模のマンション開発計画が進められているように、今後も次々と新規分譲が用意される見通しである。
湾岸エリアは売れ行きも好調だ。同エリアの新築物件の中心価格帯は5000万~6000万円のため、購入層は夫婦共働きで収入合算ができる世帯や高額所得者、親から財産を贈与された世帯などが中心と思われる。
湾岸エリアは坪単価が上昇傾向にあり、勝どき周辺では280万円程度と300万円に近づき、湾岸のタワーマンション供給の主要立地である江東区では東雲や豊洲の周辺でも230万円を超えて250万円に接近している。若干高く感じる部分もあるが、それでも300万円以下ということで、都心部の物件と比較すると割安感があるとして人気を集めている。
五輪開催に向けて周辺の道路整備や都市開発が進み、住環境がより整う可能性が高いのも、このエリアで購入を検討する人の背中を押す動機となるだろう。
都心部より価格が安い割に利便性がよいという点では、台東区や墨田区などの城東エリアも注目されている。
ただ、首都圏の新築マンション市場は向かい風も受けている。人件費や建築資材費などの上昇により、建築コストが2~3割ほど上がっているのだ。円安によって輸入する資材費が高くなっており、それがマンション価格にも反映されてしまうのである。
それでも今までは、少しずつ値段を上げながら粛々と販売されてきた。ところが最近、値上げが「これでは高すぎる」という水準まで到達したと判断した大手デベロッパーが、資材などの高騰が一段落するまでウェイティング(売るタイミングを後ろにずらすこと)するという動向も出てきている。
これは供給数を減らすことになるため、そのような動きがどこまで広がるか懸念されている。以上のような価格上昇の背景もあり、もともと地価が安い郊外での手頃な価格での供給にシフトする動きも起きている。
※マネーポスト2014年夏号