ライフ

金美齢氏 電車で座る子供やベビーカー電車内持ち込みに意見

 このところの日本では、社会的な弱者をめぐる論議が絶えない。「弱者」ならば何をしても許される──そういった風潮もあるが、評論家・金美齢氏は「子供」について、こう言及する。

 * * *
 近ごろ、電車に乗ると違和感を覚える光景に出くわすことがある。空席があると子供がまずわれ先に座り、親が荷物を持って立っているのだ。満席の車内で子供が「座りたい!」とぐずれば、座っていた大人がわざわざ立ち上がり席を譲ることもある。日本には、「子供を優先して当たり前」という風潮が蔓延しているが、実に偽善的だ。子供は保護すべき存在であっても、社会の主役ではない。主役は大人である。

 私は自分の子供が小さいころ、電車で子供を座らせることを一切しなかった。揺れる車内でバランスをとりながら立つことで足腰も鍛えられるし、社会の主役である大人が優先されるのは当然だからだ。

 最近は車内へのベビーカー持ち込みも議論になっている。小さい子を抱えて電車移動するのは大変だし、一定の理解や配慮は必要だろう。しかし、それを「当然の権利」と甘えないで、他人様の好意に感謝してほしい。

 子供の権利を声高に唱える風潮にも軽薄さを感じる。

「人間はみな平等だから親と子供は対等、教師と生徒も対等の関係であるべき」と言えば、表面的には話の分かるリベラルな大人に見えるかもしれない。ところが、そうした「履き違えたリベラル」が子供に植え付けられると厄介なことになる。「大人に対して対等に物を言える」という錯覚を抱いてしまうからだ。未熟な子供と、長い人生の年月を重ねて、学び、働いてきた大人の意見が同等の重さということはあり得ない。

 学校教育の現場でも、履き違えたリベラルがまかり通っており、生徒に優劣をつけないよう運動会の徒競走を廃止する学校もあるという。これは〝ごまかしの平等〟だ。何ごとも「よく頑張りました」で済ませていたら、社会に出て苦労するのは子供たちである。

 少子化が進む世の中で、子供たちは甘やかされ大事に大事に育てられてきた。世界的に見ても日本ほど子供に甘い国はない。だが、愛情と甘やかしがまったくの別物であることは言うまでもない。子供がわがもの顔でふるまう社会になってしまったのは、大人が自ら厳しさを封じ込めてしまったからだ。

※SAPIO2014年9月号

関連記事

トピックス

“令和の小泉劇場”が始まった
小泉進次郎農相、父・純一郎氏の郵政民営化を彷彿とさせる手腕 農水族や農協という抵抗勢力と対立しながら国民にアピール、石破内閣のコメ無策を批判していた野党を蚊帳の外に
週刊ポスト
緻密な計画で爆弾を郵送、
《結婚から5日後の惨劇》元校長が“結婚祝い”に爆弾を郵送し新郎が死亡 仰天の動機は「校長の座を奪われたことへの恨み」 インドで起きた凶悪事件で判決
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
「最後のインタビュー」に応じた西内まりや(時事通信)
【独占インタビュー】西内まりや(31)が語った“電撃引退の理由”と“事務所退所の真相”「この仕事をしてきてよかったと、最後に思えました」
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬・宮城野親方
【元横綱・白鵬が退職後に目指す世界戦略】「ドラフト会議がない新弟子スカウト」で築いたパイプを活かす構想か 大の里、伯桜鵬、尊富士も出場経験ある「白鵬杯」の行方は
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン