月9ドラマ『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』で主演を務める沢口靖子
沢口靖子が主演する月9ドラマ『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』(フジテレビ系)が視聴率や配信の再生数などで苦戦している。その理由と、主演ドラマ『科捜研の女』(テレビ朝日系)にひと区切りをつけた沢口の今後についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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11月3日スタートの『ひらやすみ』(NHK総合、月~木曜22時45分)でようやく秋ドラマが出そろいますが、近年にない大作ぞろいの中、業界内で「予想以上に苦戦している」と言われているのが『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』(フジテレビ系、月曜21時)。
『絶対零度』は、上戸彩さん主演で2010年に『未解決事件特命捜査』、2011年に『特殊犯罪潜入捜査』、沢村一樹さん主演で2018年と2020年に『未然犯罪潜入捜査』が放送された刑事ドラマシリーズ。前者は火曜21時台、後者は月曜21時台と、どちらも明るい作品が多かったドラマ枠にシリアスなムードを持ち込み、放送後にそれを浸透させた“ゲームチェンジャー”としての評価も高いフジテレビが誇るブランドです。
5年ぶりのシリーズ続編となる今作では沢口靖子さんを主演に起用。沢口さんと言えば、『痛快!OL通り』『痛快!ロックンロール通り』(TBS系)、『結婚物語』『新婚物語』(日本テレビ系)、『科捜研の女』(テレビ朝日系)、その他でも『鉄道捜査官』(テレビ朝日系)、『警視庁機動捜査隊216』(TBS系)、『検事・霞夕子』(フジテレビ系)などの2時間ドラマも含め、シリーズ作の第一人者と言われています。
特に『科捜研の女』は1999年のスタートから昨年のSeason24まで主演を務め、放送25年で連ドラとしての区切りをつけたばかりだけに、沢口さんの次作に注目が集まっていました。しかも選ばれたのはシリーズ作として実績十分の『絶対零度』。「相性がいいのではないか」と放送前から期待の声があがっていました。
ところがはじまってみると、視聴率は歴代ワーストの危険性があるペースで推移し、配信でも再生数やお気に入り登録数などで苦戦。ネット上には「これは『絶対零度』じゃない」「沢口靖子が役に合っていない」などの厳しい声も目立ちます。
『絶対零度』はフジテレビを代表するドラマブランドの1つであり、沢口靖子という大物女優の主演作であるにも関わらず、なぜ序盤から苦戦しているのか。『科捜研の女』にひと区切りをつけた沢口さんの今後も含め、掘り下げていきます。
苦戦の理由と沢口靖子のギャップ
『絶対零度』が刑事ドラマ好きに限らず、一定の人々にとって印象的なシリーズであることは間違いないでしょう。タイトルの“絶対零度”はこれ以上下げられない最低温度を示す言葉であり、2010年の第1弾では「コールド・ケース」と呼ばれる未解決事件が扱われました。
最低温度のような冷酷な犯罪を刑事たちの熱さで溶かしていく……そのヒリヒリとしたシリアスな世界観で支持を集めてきましたが、当作はここまでそんな「『絶対零度』らしさを感じない」という声があがっています。
もう1つ見逃せないのがトクリュウ(匿名・流動型犯罪)を中心にした情報犯罪という今作のテーマ。これまで多くのドラマで扱われてきたものであり、「これから起こりうる犯罪を未然に防ぐミハンシステム」を扱った沢村一樹さんのシリーズと比べて斬新さがないという声が散見されます。
つまり、これまでの『絶対零度』シリーズと比べたとき、世界観とテーマの点で物足りなさを感じる人がいるのでしょう。ただ、主演の沢口さんは代名詞の『科捜研の女』とは別の持ち味を出していて、それを好意的に見ている人もいるようです。
沢口さんが演じているのは情報犯罪匿名対策室(DICT)メンバーで巡査部長の二宮奈美。番組ホームページの紹介欄には、「元生活安全課で地域の少年犯罪などを担当してきた」「捜査スタイルは生活安全課での経験を生かした地域密着型。事件現場周辺の人々への聞き込み調査に余念がない」「DICTの中で最年長。明るく元気な性格でチームのエンジン」「記憶力に優れ、人間観察やなにげない会話から情報を拾うのがうまい」「誰よりも“人と向き合う”ことを信条」などと書かれています。
部屋から出て足を使って聞き込みを重ね、科学ではなく人と向き合うキャラクターであり、なかでも象徴的なのは捜査現場を駆けめぐるエネルギッシュな姿。まだ『科捜研の女』で演じた法医研究員・榊マリコをイメージする人が多いため、明るく元気に走り回る姿はギャップがあり、髪をバッサリ切ってショートカットにしたことも含め、新鮮さを感じさせられます。
