原発反対論者からは、原発の発電コストは事故対策費を加えると意外と高くつき、火力発電などと変わらないという論が出ている。

 最新の研究によれば、福島第一原発の事故対策費は約11兆円で、それを加えた原発の発電コストを試算すると「1キロワット時あたり11.4円」となり、石炭火力の10.3円やLNG火力の10.9円より割高になるという(運転を止めている全国の原発が2015年に再稼働し、稼働40年で廃炉にする場合)。

 たしかにコストの面だけを考えれば、原発の優位性は薄れているかもしれない。だが、CO2を出さないクリーンさとベースロード電源として昼夜を問わず安定した電力を供給できる能力を併せ持っているという点で、原発に代わるものはない。

 太陽光や風力は稼働率が20%に満たないので、どちらもベースロード電源にはなりえない。しかも発電コストは原子力や火力に比べると2~4倍と高額だ。

 木屑や燃えるゴミなどが燃焼する際の熱を利用するバイオマス発電も、間伐材や食品残渣、家畜の糞尿などの燃料供給には限界があるので、やはり大規模で持続的な電源にはなりえない。

 さらに、エネルギー安全保障の観点からも、当面は原発で電力需要の3割程度を賄うことが必要だと思う。

 もはや日本で原発を新設することは不可能な状況だから、今ある原発の寿命がくるまでの話だが、日本のように原油や天然ガスが採れない国は、化石燃料の価格が高騰した場合や、有事で海外からの供給が断たれた場合を考えると、原発を維持することは国益に適う。

 それでも世論調査で原発を廃止すべきとの声が大きい現実は無視できない。

 日本人がどうしても原発は嫌だというなら(そうなるのも、なぜ福島第一原発事故が起きたか、どうすれば防げたのかについて政府が正しく反省して説明していないからだ)、原発を廃止するのも政治判断であり、それに私は反対ではない。

 ただし、廃止する時はきっぱりと一気に全廃すべきである。その時こそ政治も電力会社もごまかしをやめ、代償を国民にきちんと説明しなければならない。

 原発を代替するものがない以上、最も現実的な策は「30%の節電」だ。原発をなくした分だけ火力を増やすのではなく、国を挙げて原発依存度に匹敵する30%の節電に励むのである。国民が原子炉なき日本を選択し、それに伴う犠牲を厭わないのであれば、そうすべきだと思う。

 最初は苦労するかもしれないが不可能ではない。工業用・商業用のコンプレッサーやモーターの大幅な省電力化、すべての電球のLED化、住宅の断熱化などを国策として徹底的に推進すれば実現できる。

※週刊ポスト2014年9月12日号

トピックス

【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
各局が奪い合う演技派女優筆頭の松本まりか
『ミス・ターゲット』で地上波初主演の松本まりか メイクやスタイリングに一切の妥協なし、髪が燃えても台詞を続けるプロ根性
週刊ポスト
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン