菅直人一覧

【菅直人】に関するニュースを集めたページです。

「スタートレック」「天使にラブ・ソングを…」などでも活躍(AFP=時事)
オスカー女優が「ホロコーストは人種問題じゃない」で大炎上
 日本では菅直人・元首相が橋下徹氏をヒトラーになぞらえた発言が物議をかもし、ある保守派の学者は「フランスやドイツでは処罰の対象になる発言」「ホロコーストの被害者を冒涜する」などと批判したようだが、欧米の言論は実はもっと過激だ。もちろん批判の対象にはなるものの、政治家や識者、セレブのなかにはホロコーストに関して思い切った持説を展開する者もいる。折しもアメリカでは、大物女優の過激発言が世間を騒がせている。 発言の主は『ゴースト/ニューヨークの幻』でアカデミー賞(オスカー)助演女優賞を受賞、エミー賞、グラミー賞、トニー賞の4大映画賞すべてを受賞した大スターのウーピー・ゴールドバーグ(67)。2007年に女優を引退し、その後はテレビのエンターテイナーや著作に専念。現在はABCの昼のトークショー「The View」の共同司会者を務めている。 問題発言は1月31日の同番組で飛び出した。テネシー州マクミン郡の教育委員会がホロコースト関連本の表現を問題視して副読本から除外したという話題のトークで、ゴールドバーグはこう言ってのけたのだ。「正直言って、ホロコーストなんて人種問題じゃないわ。あれは人種(の問題)じゃなくて、人間の人間に対する非人道的問題よ」 驚いた他の出演者が、「いや、ホロコーストは白人至上主義者たちがユダヤ人を差別・虐待したものだ」と反論しても彼女はひるまず、「(ナチスとユダヤという)二つの白人グループの話でしょ。黒人とか白人、ユダヤ人とかの(人種の)問題ではなく、ホロコーストがなぜ起きたのかを話しましょうよ」と開き直ったのだ。 当然、放送も終わらぬうちにユダヤ系団体などから猛烈な抗議電話やメールが殺到。ツイッターでは「人種主義はナチス哲学の中核だ。600万人ものユダヤ人が虐殺されたのはナチスの優生思想によるものだ」「ゴールドバーグは人種主義を勉強し直せ」といった非難の声が拡散した。 ちなみに「ゴールドバーグ」というのはドイツ系ユダヤ人の名前だが本名ではない。芸能界入りするとき母親が本名のジョンソンでは売れそうにないからと、ゴールドバーグに変えるよう助言してつけたという。その彼女がユダヤ系から袋叩きにあうのは皮肉だが、ABCは同日夜のトークショーで彼女に釈明の場を与えた。一応そこでは謝罪したものの、「私は黒人だから、人種問題では肌の色による差別など、目に見えることに注目する」とさらに持論を述べて、完全に発言を取り下げたようには見えなかった。 批判は収まらず、ABCは彼女を2週間、番組から外すと発表したが、同番組がその時間帯の視聴率トップに君臨してきたのは彼女の人気のおかげ。「世界の森羅万象を歯切れよく解説するゴールドバーグは、特に20代から40代の主婦たちから絶大な支持を得ている」(主要メディアのテレビ担当記者)というから、ABCにとっても「泣いて馬謖を斬る」決断だったわけだ。 これだけの発言をし、反省も不十分ならば仕方ないのかもしれないが、人種問題やユダヤ問題に敏感なアメリカの白人はどう見ているのか。民主党支持の元大手企業幹部の白人男性(78)はこう語った。「ゴールドバーグはエンターテイナーであって、学者でも政治家でも宗教家でもない。黒人として生まれ、人種差別を受け続けてきた彼女にとって人種主義がどういうものか、差別を受けたことのない白人がどうのこうの言っても始まらない。ユダヤ系アメリカ人が黒人と同様の差別を受けているとは思えない。外見は白人なのだから黒人とは違う。 もちろんユダヤ系団体の批判は理解できるが、普通の市民からすれば、彼女の気持ちも理解できる。ナチスは悪だが、最近のアメリカで台頭している白人至上主義者、人種差別主義者も悪だ。どっちのほうが悪いか比較することには大きな意味はない」 ひとつ言えるのは、黒人女優が人種問題やホロコーストについてテレビで堂々と持論を述べること自体、米エンタメ界で「ブラック・パワー」が力をつけてきた証拠だということ。いまや彼らなしでは映画もドラマも作れないし、ビッグヒットは望めない。■高濱賛(在米ジャーナリスト)
2022.02.03 07:00
NEWSポストセブン
立憲民主党のベテラン議員がネットで炎上するのはなぜか(菅直人・元首相。AFP=時事)
菅直人氏ら立憲民主ベテラン議員の「炎上グセ」 SNS重視の党方針の弊害か
 1月21日、立憲民主党の最高顧問である菅直人・元首相がツイッターで日本維新の会と橋下徹氏について触れ、「ヒットラーを思い起こす」と投稿したことで、ネット上を中心に大きな騒動に発展した。立憲民主党では今年に入って、蓮舫氏が箱根駅伝で、現地で母校を応援するツイートをしたことが「自粛要請破りではないか」と批判を浴びたばかり。なぜ、立憲民主党のベテラン議員たちはネットで波紋を呼ぶことが多いのか。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が分析した。 * * * 今回の騒動のきっかけは菅直人氏の以下のツイートである。〈橋下氏をはじめ弁舌は極めて歯切れが良く、直接話を聞くと非常に魅力的。しかし「維新」という政党が新自由主義的政党なのか、それとも福祉国家的政党なのか、基本的政治スタンスは曖昧。主張は別として弁舌の巧みさでは第一次大戦後の混乱するドイツで政権を取った当時のヒットラーを思い起こす〉 これには日本維新の会・松井一郎大阪市長もツイッターで「誹謗中傷を超えて侮辱ですよね」と抗議した。ただ、名指しされた橋下氏は意外と冷静で、こうツイートしている。〈まあ、いずれにせよ菅さんの今回のコメントは僕の弁舌についてのお褒めの言葉と理解しているが、安易にヒトラーを持ち出すことが不適切だとすら思わないのかね。政党間のバトルは私人として関知しないので好きなようにやってくれたらいいが、俺を巻き込まんでくれ。〉 時に日本の政治家の口からたとえ話や比喩としてヒトラー(ヒットラー)の名前が使われ、波紋を呼ぶことがある。2013年に麻生太郎氏が「ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ」「(ワイマール憲法をナチス憲法に変えた)あの手口学んだらどうかね」と発言して、野党から批判された。 社民党の福島みずほ氏は〈「ナチス政権の手口」についての麻生発言に関する質問主意書〉を提出し、当時民主党の辻元清美氏が〈麻生副首相のいわゆる「ナチス発言」「一部撤回発言」に関する質問主意書〉を提出するなど、ヒトラーおよびナチス関連の発言に対しては社民党も民主党(現・立憲民主党)も問題視していたことが分かるだろう。 そうした中で、今回の菅氏のツイートの直後から「#菅直人元首相を支持します」のハッシュタグがツイッターに登場し、一時期トレンド入りした。これは立憲民主党支持者を中心とするアンチ維新の野党支持者が立ち上げたものと推測されるが、「菅氏の“ヒットラー発言”は侮辱でもなんでもない」という主張なのだろう。 ネット上では、かつて安倍晋三・元首相が、顔写真にちょび髭をつけられて散々ヒトラー扱いされることがあったように、自分たちが独裁者認定した政治家のことをヒトラーにたとえるのはそれほど珍しくない行為のようだ。毎度火を噴く「失策データベース」 しかし、野党支持者が作るこの手の「#○○を支持します」「#○○を許しません」的ハッシュタグはすぐにアンチ勢力に悪用され、野党議員たちの過去の失策が次々と貼られる状態となる。それはもはやネットの伝統芸だ。 そして、こうした時にクローズアップされるのが、立憲民主党のベテラン議員たちの行状なのだ。アンチの中には完全に2009年の政権交代選挙以前からウォッチャーとなっている者が多数おり、彼らの中には立憲民主のベテラン議員たちの失策データベース的なものが完成しているのである。「悪夢の民主党政権」と安倍氏がしきりと言っていたが、毎回これらの件が蒸し返される。疑惑レベルのものでもおかまいなしに叩かれる。「蓮舫氏マジコン疑惑」「菅直人氏、『僕の方が原発に詳しい』&東電恫喝」「鳩山由紀夫氏、お母さんから月1500万円の“こども手当”」「原口一博氏、自衛艦はグーグルアースかなんかを見れば分かる発言」「枝野幸男氏、原発事故の際『直ちに問題はない』発言連発」……。 また、鳩山由紀夫・元首相は、政界引退後も韓国で土下座をしたり徹底的に親中韓発言を続けたため、ウォッチャーたちから叩かれ続け、 OBであろうとも立憲民主叩きの材料となっている。蓮舫氏に至っては、オリンピック等の国際大会で日本選手が優勝した際にツイッターで祝意を示すと「2位でもいいんじゃないですか?」と毎度突っ込まれる。 こうなる理由の一つは、立憲民主党があまりにもSNS及びネットの意見に振り回されているからではないだろうか。私は初のネット選挙解禁となった2013年の参議院選挙と、2014年の衆議院選挙で、当時の民主党関係者からネット関連の対策への助言を求められたことがある。ネットこそこれからの時代に国民の意見を聞き、それを政策に反映させる重要ツールだと捉えていることは分かった。 だが、立憲民主党にぜひとも改めてもらいたいことがある。議員も秘書も職員もSNSの支持者の意見を極めて重視しているのか、その意向に沿った政策を打ち出したりすることがあるが、それはやめた方がいいのだ。ハッキリ言うと、立憲民主党はネットの見過ぎなのである。 そのきっかけとなったのは、鳩山氏がツイッターを始めた時にすぐさまガチャピンを抜き、日本一のフォロワーを集めたことではないだろうか。そこで、人気があると思い込んでしまった。だからこそ、当時の内閣メンバーや中堅を中心にツイッターで積極的に発言するようになった。そうして今になって、上記のような「失策データベース」が火を噴くのである。 ツイッターを積極的にやっていなかった藤井裕久氏や仙谷由人氏といった大重鎮には、アンチ民主党の人々もあまり何も言えないし、そもそも彼らはネット上での存在感が低かった。さらにはベテランとはいえ、あからさまな親中韓姿勢を見せない馬淵澄夫氏、前原誠司氏、岡田克也氏らはつけ入るスキを作らなかった。熱狂的支持者の意見に乗って作られた公約 一方、枝野幸男氏が代表のときは、上記のような炎上気質のある人々が中枢にいて、「#菅直人元首相を支持します」をトレンドに入れようとする熱狂的立憲民主党支持層のツイッター上の意見を重視するようになる。こうした人々は、一致団結して「アベ政治を許さない」というスタンスだったため、「共謀罪成立を許さない」「特定秘密保護補法成立を許さない」「森友・加計問題を許さない」「桜を見る会問題を許さない」「学術会議任命拒否問題を許さない」といったことをツイッターで何度も訴える。 これを見た立憲民主関係者は「これこそ世論だ!」「世の中の怒りはここにある!」「アベ政治打倒はこの点を突けばいい!」という思い込みをしてしまった。そして、学生運動を忘れられない高齢者を中心としたデモ隊がアベ政治打倒のため国会に押し寄せると「こんなに支持者がいるのか!」と彼らの路線にますます乗るようになる。これが如実に現れたのが、2021年9月の衆議院選挙で2回にわたって出された公約ではないだろうか。「#政権取ってこれをやる」のハッシュタグをつけた公約は2021年9月7日に第一弾が発表された。大項目は、「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」で、7個あった。1.補正予算の編成(新型コロナ緊急対策・少なくとも30兆円)2.新型コロナ対策司令塔の設置3.2022年度予算編成の見直し4.日本学術会議人事で任命拒否された6名の任命5.スリランカ人ウィシュマさん死亡事案における監視カメラ映像ならびに関係資料の公開6.「赤木ファイル」関連文書の開示7.森友・加計・「桜」問題真相解明チームの設置 そして、同年9月13日に発表した第二弾は「自民党では実現しなかった多様性を認め合い『差別のない社会』へ」が大テーマで、以下が項目だ。1.選択的夫婦別姓制度を想起に実現2.LGBT平等法の制定/同性婚を可能とする法制度の実現を目指す3.DV対策や性暴力被害者支援など、困難を抱える女性への支援を充実4.インターネット上の誹謗中傷を含む、性別・部落・民族・障がい・国籍、あらゆる差別の解消を目指すとともに、差別を防止し、差別に対応するため国内人権機関を設置5.入国管理・難民認定制度を改善・透明化するとともに、入国管理制度を抜本的に見直し、多文化共生の取り組みを進める 個別の公約についての意見は控えるが、これらはツイッターで熱狂的支持者が最重要課題としていたものばかりである。「#野党共闘」も彼らからスローガンとして掲げられ、実際、日本共産党に近寄るそぶりをみせ「立憲共産党」などと揶揄され、連合など支持母体からも困惑の声が上がった。そして、衆院選は大惨敗した。 かくして、立憲民主党は本質からズレた人気取り発言をし、アンチ野党の人々から炎上させられるということが続いてきたのだ。現在の泉健太代表は中道方向を取り込んでいくことを宣言。ならばこれまでの熱烈支持層からは距離を置いた方がいいのではないか。その方が参議院選挙では議席を増やせるように思える。そして、炎上を減らすため、ツイッター中毒のようになったベテラン議員やOBたちには「少しは黙っててください」ぐらい言ってもいい。 なお、菅氏はこの騒動冷めやらぬ27日、ツイッターに〈自治体の役人が優遇されているという、維新の「役人天国」批判に低所得者層の人達が共鳴し、支持を広げたとの分析が有力〉と投稿した。要するに「維新の支持者は貧乏人」という趣旨の発言をしたわけだが、「本日のおまゆう案件(お前が言うか案件)」「元首相がレッテル貼り」と再び批判を受けている。
2022.01.28 07:00
NEWSポストセブン
野党の世代交代は進むのか?(時事通信フォト)
菅直人氏、枝野幸男氏、安住淳氏ら 国民の選択肢を奪ったダメ野党6議員
 総選挙は有権者にとってどの政党に国の舵取りを委ねるかの「政権選択選挙」のはずだ。かつて東日本大震災や福島原発事故対応に失敗した民主党政権を安倍晋三・前首相は「悪夢の民主党政権」と呼んだが、コロナ失政で国民生活を危機に追い込んだ現在の自民党も同じだ。 それなのに、国民に政権交代への期待は全く高まらない。有権者に政権を選択する機会を奪っているのは野党のふがいなさだ。政治ジャーナリスト・田中良紹氏が指摘する。「今の日本の政治に欠けているのは『政権を担える強い野党』の存在です。野党が弱いから、自民党政権が独善的な政治を行ないがちで、そこが今の政治の不健全さを助長していることを多くの国民は分かっている。かといって、旧民主党色が強い野党に政権を委ねる気にはなれない」野党の世代交代が必要 その象徴として、立憲民主党代表の枝野幸男氏と同党最高顧問の菅直人氏を挙げる。「民主党政権が東日本大震災と福島原発事故への対応で政府のふがいなさを見せつけた時の総理が菅直人で、官房長官は枝野だった。それが国民の意識に強く残っているから、この野党にコロナ危機対応を任せられない。その意味で、枝野や菅直人が今の自民党の独善政治を許していると言える。だからこそ、国民に政権の選択肢を与えるためにはこの2人が政界から退いて野党の世代交代が必要です」(同前) その立憲民主党はコロナ禍で政府批判さえしていれば票が取れるという姿勢だったが、菅首相が退陣表明して自民党総裁選が始まると、慌てて「消費税率5%」への引き下げや「所得税1年間ゼロ」を掲げた。 だが、立憲民主党には、民主党政権時代に国民を裏切って消費税率10%への増税方針を決めた張本人たちがいる。野田佳彦・元首相は現在、同党最高顧問、岡田克也・元副総理は常任顧問だ。増税を決めた政治家たちが最高幹部に居並ぶ政党が、総選挙前に「減税」を掲げても国民が信用できるはずがない。 そのことを彼らはまるで理解せず、今なお野党を率いているつもりになっている。元民主党代議士の評論家・木下厚氏が語る。「立憲民主は政権批判だけでは勝負できないと考え、あまたのバラマキ政策を打ち出しました。30兆円補正予算というが、財源はどうするのか。消費税を5%にするというが、消費税は1%あたり2兆円だから10兆円です。これらの財源をどうするのか。ともかく政権交代だけを考えた選挙を行なった、かつての民主党と同じで目先の得票だけを考え、政策の実質をないがしろにしている」 独善的な主張もこの党の政治家の体質だ。安住淳・立憲民主党国対委員長は、テレビの報道番組が自民党総裁選一色で野党が埋没してしまったことを、「個別の番組についてチェックさせてもらう」と批判して放送倫理・番組向上機構(BPO)への申し立ても検討する姿勢を示した。 だが、NHK記者出身の安住氏はかつて自民党若手議員が報道圧力発言をした時、「マスコミをコントロールできると思っていること自体が常識がない」と厳しく批判していたのだ。「安住氏とは元同僚ですが、彼は昔から弁は立つが官僚や嫌いな議員には威圧的。部会に官僚を呼んだときも『お前らは税金で食っているくせに』と高飛車な言い方をしていた。政治というのは、もっと度量をもって相手に対峙しなければならない。それができない政治家は、国民とも向き合えないのではないか」(前出・木下氏) そのくせ、安住氏は野田内閣の財務大臣として消費税増税方針を決めた責任者でもあるが、枝野氏が打ち出した消費税減税方針には「個人としては複雑な心境だ」と言うだけで方針転換を国民に説明しようとはしない。 独善的で国民に正しく向き合うことができない。そうした体質を抜本的に改めない限り、政権の受け皿にはなれない。不祥事議員を受け入れ 野党への期待が低いのは国民民主党代表の玉木雄一郎氏の責任も重い。立憲民主党との合流を拒否したのはまだしも、「場合によっては与党とも連携し政策を実現していく」と自民党との連携に意欲をにじませた。「今の政権のおかしなところを厳しく指摘し、対案を示しながら選挙を戦っていきたいので、連立については考えていない」 と表向き連立参加は否定しているものの、自民党の岸田文雄・新総裁が掲げた政策を「方向性は一致している」と評価している。「自民党が選挙で議席を減らすのを見込んで、そのときは手を組みたいんだろう」(二階派幹部)と見られている。 そのうえ、国民民主党は緊急事態宣言下のセクシーキャバクラ通いで立憲民主党を除籍処分になった高井崇司・代議士を会派に受け入れている。 不祥事議員に甘く、与党から補完勢力と見られている野党に存在意義はない。※週刊ポスト2021年10月15・22日号
2021.10.11 16:00
週刊ポスト
庶民派のイメージは偽りだったのか(AFP=時事)
菅内閣が「かん内閣」と同様無能集団に?ピーターの法則とは
 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は9月16日、新たに誕生した「菅政権」について。 * * * 菅義偉氏が第99代総理大臣に指名され、「菅内閣」が誕生した。菅内閣という文字だけ見ると、あの悪夢のような「菅(直人)内閣」が蘇ってくる。東日本大震災時、あまりの対応の遅さ、対策の不十分さに、何度「この内閣でなければ」と思ったことか。読み方は違えど、文字面が同じ内閣に「本当に大丈夫なのか」と根拠のない不安がこみ上げてくる。 今回の菅首相誕生に際し、私の周りではこんなことが起きた。菅氏の人物像や知られざる逸話を聞こうと思ったのだろう。ある雑誌記者が、「菅氏の友人」という知人に「菅氏について聞かせてほしい」とコンタクトしたが、その知人は「なぜ私の所に?」と訝しんだ。というのも、菅は菅でも菅違い、その知人の友人は菅直人氏だったからだ。おそらく、記者の古い取材ノートにその知人と菅氏のつながりが書かれていたのだろう。麻生太郎副総理兼財務大臣も9月17日、自身が率いる派閥の会合で、新たに発足した菅義偉内閣について「かん内閣」「かん政権」と発言。こうした混乱は今、至るところで起きていそうだ。「菅内閣」とネットで検索しても、Wikipediaには「菅(直人)内閣」が出てくる。当時は、衆議院議員総選挙で圧勝した民主党が政権を担っていた。鳩山由紀夫内閣の総辞職により2010年6月に発足した菅内閣は、国民からの人気も期待も高かったと記憶している。だが、統治能力と危機管理能力は最悪で、柳田稔元法務大臣の「国会軽視」発言や仙石由人元内閣官房長官の自衛隊に対する「暴力装置」発言など、閣僚の失言・放言も相次いだ。それ以来、野党に政権を任せようとは思えなくなった。振り返れば、あの時の菅内閣は「ピーターの法則」そのものだったと言える。 ピーターの法則とは、能力主義の階層社会において、組織の上層部がやがて無能な人たちだらけになる、というもの。入閣した議員1人1人の能力はそれなりに高くても、大臣になると、その能力を発揮できなくなるばかりか、失言で政権の足を引っ張ってしまう無能な人になってしまった。 そして今回、再び(?)の菅内閣だ。コロナ渦という有事の真っただ中で組閣された内閣の顔ぶれは、党内だけでなくメディアでも「練りに練った人事」「実務家揃い」「専門家を配置」と高評価が続く。安倍政権の継承を掲げた政権だけに留任や横滑り人事も多いが、目玉となったデジタル改革担当大臣にはITに明るい平井卓也氏が抜擢された。パソコンをほとんど触らず、USBが何かも分からない議員が大臣に納まるようなことはないらしい。 振り返れば安倍政権の時も、数々の失言大臣たちが現れては消えていった。9月17日にも、新旧大臣の引き継ぎ式という最後の最後に、北村誠吾前地方創生担当大臣が在職中47都道府県の視察をしたとしたうえで、「相当ほらを吹いてきた」と発言。法則の実例を見せてくれた。某番組の『ナゼそこ?』ではないが、その議員の抜擢を疑問視するしかない閣僚たちの顔ぶれは、まるでピーターの法則に従っていたようだった。 誰が本当に優秀で、誰が大臣として仕事ができるのか、メディアを通して伝えられる情報でしか判断できないため、実際は分からない。組閣の際、派閥人事や当選回数で入閣した人物だと情報番組が伝えれば、「この大臣はそんなものか」という印象で見ることになる。今回は安倍晋三前首相に配慮した人事ということだが、不安視する声はさほど大きくはない。果たして法則に当てはまるのか、逆らうのか、あるコメンテーターが某番組で言うように「菅内閣のお手並み拝見」といこう。
2020.09.19 07:00
NEWSポストセブン
【動画】「2人の菅総理」の存在に新聞記者らが苦悩している
【動画】「2人の菅総理」の存在に新聞記者らが苦悩している
 自民総裁選で優位に立つ菅義偉・官房長官。菅氏の名前の表記について新聞記者たちは頭を悩ませているようです。憲政史上「田中義一と田中角栄」など同姓の総理大臣は5組存在しますが菅氏が総理に就任すればそこに「菅直人と菅義偉」という“準同姓”の組み合わせが加わることに。全国紙政治部記者によると「菅直人氏は現職の野党議員。“菅元総理が菅総理を国会で追及”という場面もあり得る」とのこと。読んだ際に混同しやすいことや検索をした場合の紛らわしさが懸念されています。
2020.09.09 07:00
NEWSポストセブン
「すが」と「かん」でも漢字にすると混乱する(時事通信フォト)
「2人の菅総理」問題 初の事態に新聞記者らが頭を抱える
 安倍首相の辞任を受けて自民党総裁選が行われ、その勝者は9月16日に召集される臨時国会の首班指名で第99代総理大臣となる。総裁選は菅義偉・官房長官が党内主要派閥の支持を取り付けて圧倒的優位が伝えられるが、そうした中で問題となってくるのが「菅総理」の表記だという。 憲政史上、同姓の総理大臣は「田中義一と田中角栄」「鈴木貫太郎と鈴木善幸」など5組あるが(うち「鳩山一郎と鳩山由紀夫」「福田赳夫と福田康夫」は親族)、菅氏が総理に就任すれば、そこに「菅直人と菅義偉」という“準同姓”の組み合わせが加わることになる。 声に出せば「かん」と「すが」。テレビ報道では問題ないが、頭を悩ませているのは新聞の表記だ。「過去の同姓総理は在任時代が大きく離れていたので、同一記事に登場することは稀だった。だが、“2人の菅総理”は在任時期のズレが10年未満となるうえに、菅直人氏は現職の野党議員。“菅元総理が菅総理を国会で追及”という場面もあり得る」(全国紙政治部記者) ちなみに戦前の「加藤友三郎と加藤高明」は在任期間こそ同じ1920年代だが、先に就任していた加藤友三郎氏が首相在任中に病死していたため、「2人の菅」とは事情が異なる。 菅直人政権時代に発生した東日本大震災からの復興や原発政策は、9年が過ぎた現在も大きな政治課題。当時の菅直人氏の発言などを引用して記事を作るケースも出てくるので、字面の紛らわしさは避けられない。常にフルネームを記す方法もあるが、総理の名前はあらゆる記事で頻繁に登場するため、「読者にストレスを感じさせてしまう」(同前)との懸念もあるという。 もう一つ大きな問題となりそうなのが「検索」だ。これまでは「菅首相(菅総理)」のキーワードで検索すれば菅直人氏の記事や写真がヒットしたが、今後は「2人の菅首相」がズラリと並ぶ。今後の需要が高まるのは“菅義偉・首相”だが、少なくとも当面は「菅義偉を探しているのに、菅直人ばかり表示されてしまう」という事態が想定される。 記者らの間では2人の使い分けについて、〈菅(平成)と菅(令和)〉、〈菅(旧)、菅(現)〉〈菅(イラ)と菅(冷静)〉〈菅(カイワレ)と菅(パンケーキ)〉などといった大喜利のような話が飛び交っているが、まさか紙面に書くわけにもいかないだろう。読み手の側にも混同しないように注意が必要かもしれない。
2020.09.03 16:00
NEWSポストセブン
「マスク2枚配布」以外にも…国家を危うくした怪物官僚列伝
「マスク2枚配布」以外にも…国家を危うくした怪物官僚列伝
「戦後最大の危機」に臨んで安倍晋三首相の混乱ぶりが際立っている。突然の全国一斉休校要請で並みいる大臣たちを驚かせ、唐突にマスク2枚配布を言い出して国民を唖然とさせた。緊急事態宣言をめぐっては「まだそういう事態には至っていない」と渋りながら、一転、発表即日に公布するという場当たり対応で混乱に拍車をかけた。 そんな安倍首相を陰から動かしているとされるのが今井尚哉・総理首席秘書官兼総理補佐官ら官邸官僚たちだ。 経産官僚から「総理の分身」と呼ばれる首席秘書官に起用されて以来8年間、今井氏は常に首相のそばに仕え、昨年秋からは「政策企画の総括担当」の総理補佐官を兼務して国政全般ににらみを利かせる立場に就いた。「今井ちゃんはなんて頭がいいんだ。頭の中を見てみたい」 首相はその才を高く買い、コロナ対策にあたっても今井氏の献策を採用するといわれる。だが、官僚が分を越えて政治家以上の権勢を振るうのは正常な国のあり方とはいえない。過去、権力が集中した“怪物官僚”が政治を主導して混乱を招いたことは何度もあった。◆次官交代を「拒否」 平成初めの混乱期、政治腐敗で行き詰まった自民党長期政権を倒して細川護熙連立政権が発足(1993年)。 期待を集めた細川政権がわずか8か月で倒れる原因をつくったのが、当時、霞が関で「10年に1人の大物次官」と呼ばれた斎藤次郎・大蔵事務次官だ。連立政権の中心人物、小沢一郎・新生党代表幹事と太いパイプを持ち、細川首相に国民福祉税の創設を強く迫った。 細川首相の総理首席秘書官を務めた成田憲彦・元駿河台大学学長は舞台裏をこう振り返っている。「大蔵省は政権発足時から何回も隠密に細川さんに会い、消費税引き上げの必要性を説明した。(中略)細川さんは妥協として、消費税は廃止して福祉のための税金にするということで国民福祉税になった」(日経新聞2012年1月3日付電子版インタビュー) 1994年2月3日の午前1時、細川首相は異例の深夜緊急会見を開いて税率7%の「国民福祉税」を創設すると発表した。 しかし、これに与党第一党の社会党が激しく反発、8党派の寄り合い所帯だった政権は内部崩壊を起こし、細川氏は2か月後に退陣を表明する。国民の期待を集めた政権交代はこうして潰えた。 かつて「防衛省の天皇」と呼ばれたのが守屋武昌・元防衛事務次官だ。 小泉内閣時代の2003年に次官に就任すると人事で側近を重用し、後継次官候補の官僚を次々に左遷し、「次官1年、長くても2年」の霞が関の慣行を破って異例の4年にわたって次官にとどまって権勢を恣にした。 その陰で、守屋氏は防衛商社と癒着、夫婦同伴の旅行やゴルフ接待を受けて防衛省の防衛装備品の納入で便宜を図っていた(辞任後に汚職事件に発展)。 第一次安倍内閣の小池百合子・防衛大臣が就任直後に守屋次官の交代と新次官人事を内定すると、反発した守屋氏はなんとこれを拒否する。守屋氏は官邸に根回ししてイエスマンを自分の後任の次官に据えようと工作し、防衛省内で“内乱”を起こしたのだ。◆菅直人氏、野田佳彦氏を籠絡した官僚「消費税は上げない」と国民に公約して政権をとった民主党内閣は、消費税増税という国民への裏切りで瓦解した。 その立役者が菅内閣と野田内閣の2代にわたって財務事務次官を務めた勝栄二郎氏だ。この人物の“凄み”は、政治家に増税推進と引き換えに権力を与えたことである。「官僚は大バカ」と言っていた菅直人氏は、鳩山内閣の副総理兼財務相に就任すると増税反対派から増税派に変身。鳩山政権の後を継いで首相になると突然「消費税10%」を掲げ、東日本大震災が発生すると復興の前に「復興増税」を決めた。裏にいたのが勝次官である。 シロアリ演説(*)で知られた野田佳彦氏も同じ手法で籠絡された。財務相になると増税推進派に転じ、菅首相の失脚後、首相に就任すると民自公3党合意で消費税10%へのレールを敷いた。【*2009年の衆院選の演説で、天下り官僚をシロアリにたとえて「シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。そこから始めなければ消費税を引き上げる話はおかしいんです」などと語っていた】 菅氏と野田氏に共通するのは、財務大臣を務めて増税派に転向し、総理の座を射止めたことである。◆「総理が無能だと官僚がのさばる」 今井氏には先達がいる。24年前、通産官僚から橋本龍太郎首相の総理首席秘書官となり、橋本行革に辣腕を振った江田憲司氏(元民進党代表代行)だ。 橋本首相が行革の目玉に掲げたのは、明治以来の中央省庁の大再編であり、1府22省庁あった中央官庁を1府12省庁に半減させるものだ。当然、霞が関や族議員あげた猛反対を呼び、金融行政と財政を分離して財務省に“格下げ”となる大蔵省は徹底抗戦した。 その中央省庁再編を取り仕切った江田氏は、「橋本の森蘭丸」と呼ばれて批判の矢面に立たされた。 森蘭丸とは、織田信長のお気に入りの小姓で秘書役を務め、織田家の有力部将たちから「蘭丸に睨まれると信長様の覚えが悪くなる」と恐れられたと伝えられている。 まさにかつての江田氏は現在の今井氏とそっくりな立場にいた。総理秘書官に振り回される現在の政治状況をどうみているのか―─江田氏本人はこう語った。「私自身も橋本総理秘書官のときは今の今井さんのように官邸を牛耳っていると随分と批判をされたが、私も彼も、あくまで総理の命を受けて総理を補佐している。今回の新型コロナ対策でも安倍総理に意見具申しているのでしょうが、だからといって今井さんが勝手に政策を差配しているわけではなく、あくまで最終判断は安倍総理が行なっている。その政策がまちがっているとすれば、安倍総理を批判すべきでしょう」 そのうえでこう警鐘を鳴らす。「確かに、官僚に操られている政治家は多い。それが一国のトップ、総理だったら大変です。だから政治家がもっと賢くならねばならない。政治家、総理が無能だと、権力官僚がのさばることになる」 かつて日本は「政治は三流、官僚一流」といわれて優秀な官僚が国を支えた。それがいまや総理の側に仕える官僚が国難にあたって「マスク2枚」の知恵しか出せない。いつの間にか「政治も官僚も三流」に成り下がったのか。※週刊ポスト2020年4月24日号
2020.04.15 16:00
週刊ポスト
県は300万円の事業費をかけて開催した
山口県庁で開催の総理大臣展 菅直人氏、昭恵氏が消されてた
 批判が止まない「桜を見る会」に多数の関係者が招かれていた安倍晋三首相のお膝元の山口では、首相を讃える企画展が行なわれていた。 山口県庁のエントランスホールに入ると、12月2日に開幕した「山口県の総理大臣展」の特大ポスターが迎える。8人の宰相を生んだ保守王国として、伊藤博文、岸信介、佐藤栄作らと並び、最も大きく掲載されているのが安倍首相だ。頭上には「祝 安倍晋三内閣総理大臣 総理在職歴代最長達成」という横断幕がある。特別映像として流されている安倍首相の声が延々と響き、一緒に撮影できる等身大パネルまであった。 この総理展は、第1次安倍内閣発足後の2006年10月、そして総理に返り咲いた2013年1月にも開催された。 会場では安倍首相の活動を「地球儀を俯瞰する外交」などと写真や映像で紹介している。「山口県の歴史と総理大臣」と題した年表には、第1次安倍内閣と第2次との間に民主党(当時)で山口県宇部市出身の菅直人氏が首相に就任(2010年6月)しているが記載はない。「(首相の出身地は)戦前は出身地、戦後は選挙区という首相官邸の区分に従っている」(県政策企画課)として、選挙区が東京の菅氏は「9人目」に認定しないという姿勢のようだ。 さらにもう一人、なぜか消された存在がいた。 2013年の総理展では昭恵夫人の活動もパネル写真で紹介されていたが、記者が確認した限りでは昭恵夫人の写真が一枚もないのだ。安倍首相の年譜にも結婚の記述がない。前出の県政策企画課は「公務の写真を中心に選んだので、そうなったのだと思います」と話す。 昭恵夫人が「私人」と閣議決定されたことを踏襲したのだろうか。※週刊ポスト2019年12月20・27日号
2019.12.12 07:00
週刊ポスト
日韓外相会談の冒頭、握手を交わす韓昇洲韓国外相(左)と河野洋平外相(共同)
【親韓政治家の韓国外交】河野洋平、土井たか子、村山富市氏ら
 混迷する日韓関係だが、韓国外交を担ってきた日本の政治家は何をしてきたのか。ここでは河野洋平氏から吉川春子氏まで、政治家ごとに主な業績をまとめてみた。(敬称略)河野洋平:「慰安婦問題に関する官房長官談話(河野談話)を発表し、韓国から求められた強制連行を会見の回答で認めた」(西岡力・麗澤大学客員教授)土井たか子;「慰安婦問題で、女性と人権の問題であることを強調し、日本の謝罪・賠償を推進した」(潮匡人・評論家)細川護熙:「1993年、国会での所信表明演説で、日本の侵略、植民地支配に言及した」(倉山満・歴史評論家)加藤紘一:「従軍慰安婦問題で当時の宮沢政権は謝罪の意を示し、官房長官だった加藤紘一が謝罪の談話を出す。2人の宏池会人脈で、その後の韓国への謝罪スパイラルを作った」(藤井厳喜・評論家)村山富市:「韓国との関係が改善すればという前向きな姿勢で村山談話を出したが、韓国側からは国が談話を出したのだからまだ終わっていないという理屈にされた」(有馬晴海・政治評論家)菅直人:「日韓併合は実質35年で、その後、日韓国交正常化から45年経っているにもかかわらず韓国併合の100周年として首相談話を出した」(黒田勝弘・産経新聞ソウル駐在論説委員)二階俊博:「昨年、地方議員を含む自民党議員約300人を率いて訪韓。韓国大使の申し出に応え、今年も日本議員団で訪韓することを約束した」(室谷克実・評論家)額賀福志郎:「日韓議連の現在の会長を務め、日韓関係維持や関係修復を求めるスタンス」(潮匡人)吉川春子:「慰安婦問題を複雑にした『戦時性的強制被害者問題解決促進法案』を国会に提出した」(篠原常一郎・元共産党議員秘書ジャーナリスト)※週刊ポスト2019年9月20・27日号
2019.09.13 16:00
週刊ポスト
)、企画84、9日付日韓基本条約に調印する李東元韓国外相(左)と椎名悦三郎外相。1965年(共同通信社)
日本の政治家、韓国の主張の正当性を議論せず譲歩続けた歴史
 日韓外交を考えるとき、戦後、日本と韓国それぞれの政治家が外交の場でどう振る舞い、現在の日韓関係の混迷に至ったのかを辿ってみると浮かび上がってきたのは、両国の歴代の主要政治家たちによる、「その場限りの利権や贖罪のための友好」という、「善隣外交(隣国との友好を深めるための外交政策)」とは似て非なる成り立ちだったことである。 1965年に結ばれた日韓基本条約では、日本は当時の韓国の国家予算の2倍にあたる5億ドル(無償3億ドル、有償2億ドル)の経済協力を行なうことで合意した。 そして、1980年に就任した全斗煥・大統領は日本に100億ドルの新たな経済支援を要求する。それに対し中曽根康弘・首相は、就任直後に日本の現職首相として初めて韓国を電撃訪問(1983年)し、その場で40億ドルの支援を表明した。当時の為替レート(1ドル=約240円)で約1兆円である。 中曽根内閣の40億ドル支援を含めた日本の援助(無償、円借款)が1990年に終わると、「金の切れ目は縁の切れ目」とばかりに、韓国から日本への謝罪要求が強まっていく。大きな火種となったのが朝日新聞の報道(※注)を発端とする慰安婦問題だ。【※注/朝日新聞が1980年代から慰安婦をめぐり「強制連行」があったとする吉田清治氏(故人)の証言を取り上げた記事について、2014年に証言が虚偽であったことを認めて関連記事を取り消した】 そこに出されたのが1993年の宮沢(喜一)内閣の河野洋平・官房長官(河野太郎氏の父)による「河野談話」である。黒田勝弘・産経新聞ソウル駐在論説委員が語る。「河野談話の大問題は、根拠がないままに、慰安婦の包括的な強制性を認めたと誤解される表現にしたことです。韓国は河野談話で日本が強制を認めたと解釈し、その後の日韓の見解の食い違いを生じさせた」 宮沢氏や河野洋平氏をはじめ、日本の“謝罪外交”を担ったのは奇しくも宏池会人脈だった。「日韓外交の中で経済協力利権を狙って韓国に食い込んだ政治家は多かった。その一方、自民党内でハト派と呼ばれる宏池会内には“贖罪意識で韓国に接する”という考え方が根強かった。外交を円滑に進めるために柔らかく接するという発想が先に立ち、それもまた現在の日韓対立の火種となっている」(評論家・屋山太郎氏) そうした河野洋平氏らの路線は、村山富市・首相の戦後50周年談話、そして1998年の小渕恵三・首相の「日韓パートナーシップ」宣言に引き継がれていく。小渕氏は漁業協定締結のために行なったこの宣言の中で初めて、「植民地支配」という言葉を使って謝罪した。◆鳩山元首相の「額ずき」 一方、当時の野党政治家にも、“謝罪ありき”の外交は広がっていた。「慰安婦問題を盛り上げた日本の野党政治家の責任も重い」 そう指摘するのは、共産党議員秘書の経験があるジャーナリスト・篠原常一郎氏である。「慰安婦問題を複雑にしたのは、『戦時性的強制被害者問題解決促進法案』を国会に提出(2000年)した小川敏夫氏(現・参院副議長)、福島みずほ氏、吉川春子氏など当時の民主党、社民党、共産党の国会議員たちの行動にも原因がある。彼らは反自民の立場から、韓国の反日団体の主張を法案にしたうえ、東京で『女性国際戦犯法廷』を開くなど、各国に慰安婦像建設運動を広げるきっかけをつくった」 そして2009年に民主党政権が誕生すると、さらに拍車がかかる。菅直人・首相は「日韓併合100年」の反省とお詫び談話を出し、鳩山由紀夫・首相は退任後、韓国の独立運動家を収容していた西大門刑務所歴史館で額ずいた。「ドイツのブラント首相がポーランドでナチスの行為を謝罪した『ワルシャワでの跪き』と同種の謝罪を日本の首相経験者が行なったことで、韓国における日本の戦争責任の大きさのフレームアップを招いた」(前出・黒田氏)と見られている。 日本は韓国の主張に対して、その正当性を議論するのではなく、譲歩を重ねていった。日韓の裏面史に詳しい菅沼光弘・元公安調査庁第二部長が指摘する。「日韓関係というのは、日本の政治家が韓国を反共の防波堤にするために戦後賠償問題以降も経済支援を続け、その資金を日本にも環流させて日韓で政治的に利用してきた。何か日韓の間で揉め事、利害の衝突が起きた時には、その資金を様々な形で使い、お互いに納得する。それが政治決着です。韓国ロビーといわれる政治家たちがその中心にいて、与野党の多くの議員が日韓議員連盟に加盟し、親韓派が増えていった。 しかし、世の中は変わった。東西冷戦が崩壊し、韓国も民主国家になると、大統領の一存で経済支援のカネを動かすことができない。日本からの経済協力も細くなる。日韓議連のパイプはあっても、政治決着させるための原資がなければ以前のようにカネの力で両国の紛争を解決することができない。それが今の状態です」 実際、政治家による日韓外交の窓口となった「日韓議員連盟」の額賀福志郎・会長や議連幹事長の河村建夫・元官房長官らが訪韓しても、事態を収拾する力はない。 そもそも安倍晋三・首相や河野太郎氏の祖父の時代に築かれた関係が、補償金の利権化という日韓の政治家たちの打算に基づくものだったとすれば、こと政治家同士による外交に「真の友好関係」が成り立っていたかどうか。むしろそれが現在の「戦後最悪の関係」の原因になっているとさえ見えてくる。 安倍首相と文在寅大統領の双方が彼我の外交政策を振り返り、両国の関係を見直すことに気づいてこそ、新たな外交が始まるのではないか。※週刊ポスト2019年9月20・27日号
2019.09.13 07:00
週刊ポスト
反日がエスカレートしている(AFP=時事)
韓国反日30年史 日本が詫びるたびゴール何度も動かされた
 平成の日韓関係は慰安婦問題から始まり、竹島問題、徴用工問題など、幾度となく問題が噴出した。元外務省駐韓大使の武藤正敏氏が言う。「慰安婦問題では1992年の宮沢喜一首相以降、歴代首相がお詫びを重ねてきた。『アジア女性基金』を設立し、基金を通じて橋本龍太郎から小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎までの歴代首相が個別にお詫びの手紙も送っています」 ところが、日本が謝罪を重ねても韓国の“反日”は過熱する──その繰り返しだった。 1993年に日本は慰安婦に関するお詫びと反省の「河野談話」を公表、同年に細川護煕首相(当時)が訪韓し、従軍慰安婦や徴用について陳謝したが、翌年、韓国では日本を核攻撃する『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』が100万部のベストセラーになる。 2010年に菅直人首相(当時)がお詫びの談話を発表した翌年には、サッカーアジア杯で韓国代表のキ・ソンヨンが日本人に対する侮蔑とされる「猿の真似」パフォーマンスを行ない物議を醸した。この時に「旭日旗を見て憤りを感じた」といった趣旨の釈明(実際に旭日旗はなかった)をし、以後、旭日旗が韓国ではタブーの象徴ということになった。 2011年10月の日韓首脳会談では野田佳彦首相(当時)がウォン急落が懸念される韓国を支援するため通貨交換協定を130億ドルから700億ドルに拡大させた。が、12月に韓国の民間団体がソウルの日本大使館前に慰安婦像を違法設置。直後の日韓首脳会談では李明博大統領が慰安婦問題を挙げて「優先的に解決を」と求めた。「慰安婦問題は朴槿恵大統領時の日韓合意で『最終的かつ不可逆的』な合意を結び終わったが、文在寅が大統領に就任すると財団を解散させて反故にした。韓国政府は“ゴールを動かす”と言われてきましたが、文大統領になり“ゴールすらなくしている”状態です。何度も謝罪しようが、お見舞金を払おうが、韓国は今後も日本に要求をし続けるでしょう」(武藤氏) 韓国がゴールを弄ぶ限り、「未来志向の日韓関係」は築けないのだろうか。※週刊ポスト2019年3月15日号
2019.03.06 16:00
週刊ポスト
66歳男がブログ記事で侮辱罪に 懸念されるネトウヨの高齢化
66歳男がブログ記事で侮辱罪に 懸念されるネトウヨの高齢化
 様々な分野で高齢化が進んでいるが、かつては若者が中心と思われていたものにも高齢化の波が押し寄せている。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、今後、予想される高齢ネトウヨの増加について、警鐘を鳴らす。 * * * 静岡新聞に掲載された政治評論家・屋山太郎氏(86)のコラムに書かれた内容の一部が、社民党の福島瑞穂参議院議員の事務所から事実無根だと抗議を受けた。徴用工裁判をめぐる内容だったが、同氏は「福島氏は実妹が北朝鮮に生存している。政争の具に使うのは反則だ」と書いた。同紙は後に事実ではないとし、訂正・お詫びをした。 これを見て思い出したのが、ネットに未だに残り続ける「李高順」と「趙春花」をめぐるデマである。千葉大学名誉教授やイオンド大学筆頭教授を務めた清水馨八郎氏が2010年、「國民新聞」に書いた「小沢一郎は済州島出身」という文章だ。ここには、「土井たか子は本名李高順と言いその弟子福島瑞穂は趙春花で日本人ではない。顔立ちもよく見ると韓人である事が分かる」とある。 ネトウヨの特殊能力「国籍透視」を駆使した「在日認定」を、当時90歳を超えていたであろう名誉教授まで務めた立派な人物がしでかしたのである。他にも小沢一郎氏と菅直人氏を済州島出身だとし、岡田克也氏は「あやしい」と書いた。2010年といえば、まさにネトウヨによる「在日認定」が花盛りの時代で、清水氏のこの文章がソースとなり、今でもこれら2つの名前がネットでは時々書き込まれるのである。 なお、李高順については、かつて月刊誌『WiLL』に掲載され、土井氏の側から名誉棄損の裁判を受け敗訴。同誌は謝罪文を掲載するに至った。その経緯があったにもかかわらず、清水氏は書いてしまったのである。また、福島氏の「趙春花」も誤りである。 それにしてもこの「在日認定」、なんとかならないのだろうか。何か犯罪者が登場した場合、ネット掲示板の書き込みやSNSには「実名はよ」などと書かれる。つまり、在日が日本人のような通名を使っていると勝手に判断し、こうした卑劣なことを犯すものは在日に決まっていると考えるのだ。「日本人なら悪いことをしないはず」という妙な安心感があるのだろう。 福島氏も土井氏もネトウヨの間では「反日議員」「売国奴」認定をされており、その流れに乗るかのように著名な評論家までデマを書いてしまった。経験も名誉も社会的地位もある人でも同様のことをしてしまう状況にあるのだ。 これから懸念されるのが、「高齢ネトウヨ」の増加だ。今年1月、大分県の66歳の男が在日の中学生に対し、「おまエラ不逞朝鮮人」「チョーセン・ヒトモドキ」などとブログに書き、侮辱罪で科料9000円の略式命令を受けた。ここで登場する「おまエラ」の「エラ」は、韓国人の顔はエラが張っているという決めつけから来る差別用語で、嫌韓系の5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)のスレッドではよく登場する言葉だ。 長年勤め上げた会社を定年退職し、さて、ブログでも始めるかな、とネットにアクセスをすると、在日や韓国を罵倒する意見がネットには多数書き込まれているのを目にする。ここで「おまエラ」などの言葉を覚えたり、「レイプは韓国の国技」などの言説を信じ込む。韓国の政治家や反日活動家に関するニュースを見て義憤に駆られ、いつしか高齢ネトウヨになってしまう。晩節を汚すのはおやめなさい、と忠告申し上げよう。●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など※週刊ポスト2019年3月8日号
2019.02.25 16:00
週刊ポスト
平成23年を振り返る 3.11、なでしこ活躍、マルモリなど
平成23年を振り返る 3.11、なでしこ活躍、マルモリなど
 平成の時代もいよいよ残りわずか。そこで、多くの出来事があった平成23(2011)年を振り返る。 3月11日午後2時46分、最大震度7、宮城県沖を震源とするマグニチュード9.0の国内観測史上最大の凄まじい揺れが東北地方から関東地方を襲った。それによって発生した大津波は沿岸部を直撃。海岸沿いの街は壊滅状態となった。 この「東日本大震災」による死者は岩手、宮城、福島など12都道県を中心に1万5895人。現在もまだ行方がわからない人の数は2539人に上る。また、大地震の影響は福島第一原発の大事故にもつながり、世界中に衝撃を与えた。 そんななかで日本列島を勇気づけたのは、サッカー女子ワールドカップで世界一に輝いた「なでしこジャパン」。世界ランキング1位の米国との決戦で2-2の激戦からPK戦の3-1で初優勝を飾った。 一方、大相撲では八百長賭博が発覚。不祥事による初めての春場所中止。5月、夏場所に代わって行われた「技量審査場所」では、十両以上の関取などから携帯電話の持ち込みが禁止された。 芸能界では松山ケンイチが8才年上の小雪と結婚。加藤茶は68才にして45才年下の女性と結婚。 不甲斐ない夫の代わりに謝罪会見を開いたのは昨年急逝した樹木希林。5月、夫の内田裕也が50代の元交際女性へ復縁を迫り脅したとして強要未遂と住居侵入の疑いで逮捕された際、「本当の謝罪は本人から。私は頭を下げないでおきます」と言いつつも、「(被害者女性に対して)世間に晒してくれて有難かった」と語った。現在、樹木は内田家先祖代々の墓で安らかに眠っている。 高視聴率ドラマでは松嶋菜々子主演の『家政婦のミタ』(日本テレビ系)や、『マルモのおきて』(フジテレビ系)。子役の芦田愛菜と鈴木福が歌って踊る“マルモリダンス”も大流行。 この年の流行語は「こだまでしょうか」「ラブ注入」「帰宅難民」「絆」「スマホ」など。■平成23年の出来事2月6日 大相撲八百長問題で日本相撲協会が春場所中止を発表3月11日 東日本大震災が発生。福島第一原発事故4月21日 元キャンディーズの田中好子が死去(享年55)4月29日 英国・ウイリアム王子がキャサリン・ミドルトンと結婚5月12日 東京・立川で6億円強奪事件が発生7月17日 サッカー女子ワールドカップドイツ大会で「なでしこジャパン」が優勝7月24日 地上波テレビが地上デジタル放送(地デジ)に完全移行8月23日 島田紳助が暴力団との交際疑惑で緊急引退会見9月2日 菅直人首相退陣で野田政権発足(第95代内閣総理大臣)10月31日 世界人口が70億人を突破11月27日 「大阪維新の会」代表の橋下徹氏が大阪市長、同幹事長の松井一郎氏が大阪府知事に12月17日 北朝鮮の金正日総書記が急性心筋梗塞で死去(享年69)※女性セブン2019年2月21日号
2019.02.13 16:00
女性セブン
鳩山首相退任、菅氏就任、「~なう」等平成22年を振り返る
鳩山首相退任、菅氏就任、「~なう」等平成22年を振り返る
 平成の時代も残りわずか。そこで、平成の時代をプレイバックしてみよう。平成22年(2010年)を振り返る。『東京スカイツリー』が日本一の高さを更新したこの年の夏、日本の平均気温は過去113年間で最も高い猛暑日が続いた。気象庁は9月1日、この猛暑を30年に1度の異常気象と認定。熱中症による死者は1718人。2007年の904人を上回った。 6月、鳩山由紀夫首相が普天間基地移設問題や「政治とカネ」の問題で国民の信頼を失ったとし、退任を表明。戦後初の衆院選で誕生した鳩山政権は約8か月半で崩壊し、後日、菅直人氏が衆参本会議で第94代内閣総理大臣に選ばれた。 北朝鮮の元工作員・金賢姫元死刑囚が大韓航空機爆破事件以来、初の来日。長野・軽井沢町の鳩山元首相の別荘に滞在し、横田めぐみさんの両親ら拉致被害者家族と面会した。金元死刑囚は「物静かで素直な子だった」とめぐみさんの印象を語ったものの、その後の救出に繋がる情報は伝えられぬまま帰国。 今年1月、めぐみさんの同級生らは首相官邸で菅義偉拉致問題担当相に早期解決を訴える署名約6600筆を手渡した。 6月13日、小惑星探査機『はやぶさ』が約60億kmの宇宙の旅を終え、7年ぶりに帰還。近地球型と呼ばれる小惑星イトカワから岩石試料を持ち帰ることに成功した。 凄惨な事件も。猛暑のなか、大阪・大阪市西区で23才(当時)の母親が3才の女児と1才9か月の男児を自宅に閉じ込め、約50日間にわたって放置し餓死させた大阪二児置き去り死事件が発覚。母親には殺人罪で懲役30年の判決が下った。 芸能界ではAKB48の人気が大爆発。センターを大島優子が務めた『ヘビーローテーション』は年間売り上げ枚数約71万枚のヒット。 ヒット商品では「食べるラー油」。3D映画も話題に。流行語は「ゲゲゲの」「ととのいました」、ツイッターがブームとなりそれに関連した「~なう」など。■平成22年の主な出来事2月12日 第21回冬季バンクーバー五輪開幕2月17日 俳優の藤田まことが死去(享年76)3月29日 東京・墨田区に建設中の「東京スカイツリー」が日本一の高さに3月29日 NHK連続テレビ小説で『ゲゲゲの女房』放送開始4月1日 子ども手当法・高校無償化法が施行4月20日 宮崎県で牛の口蹄疫感染が発覚4月27日 殺人罪などの公訴時効を廃止5月28日 アップルが『iPad』を発売6月8日 鳩山政権崩壊で菅内閣が発足6月11日 サッカーワールドカップ南アフリカ大会開幕。日本は決勝トーナメントを果たす6月13日 小惑星探査機『はやぶさ』が帰還6月21日 宮里藍、世界ゴルフランキングで1位に8月18日 AKB48の『ヘビーローテーション』がリリース9月7日 沖縄・尖閣諸島で中国漁船が衝突12月7日 市川海老蔵が東京・西麻布で起きた暴行事件の謝罪会見※女性セブン2019年2月14日号
2019.02.05 16:00
女性セブン
橋下氏、東国原氏、竹中氏らがブレーンとして重用した謎の男
橋下氏、東国原氏、竹中氏らがブレーンとして重用した謎の男
 通常国会の召集を前に、置き去りにされた議論がある。「水道と空港の民営化は本当に安全なのか」という問題だ。昨年9月に発生した関西空港のタンカー事故と、12月に成立し物議を醸した水道民営化法案は、民間企業に運営を任せる「コンセッション」という言葉と、ひとりの仕掛け人の存在で繋がっていた。それはどのように生み出されたのか。ノンフィクション作家・森功氏が知られざる経緯を辿る。(文中敬称略)◆元大臣の告白「コンセッションについては、検証が必要だとは思っています。たとえばインバウンドが右肩上がりで増えているような状況において、空港がうまくいく余地はある。しかし、需要が落ちる事業、市場が縮小していくものについては、果たして半永久的にコンセッションが可能かどうか。そこは慎重に検討しなければなりません。水道などはその一つかもしれません」 国土交通大臣を務めた前原誠司(国民民主党)がそう語る。10年前の民主党政権時代、従来の公共事業の民間化を取り入れようとしてきたのが、ほかならない前原である。その前原でさえ、今ではコンセッションに異議を唱えている。 前原が国交大臣として取り組んだ一つが、政府の管理する新関西国際空港の民営化だ。のちにそれが実を結び、仏の空港運営会社「ヴァンシ・エアポート」と日本のオリックスが40%ずつ株を出資してつくった「関西エアポート」が、関空および大阪国際空港(伊丹空港)の運営権を買い取った。そうして2016年4月、空港コンセッションの本格的な第一号として鳴り物入りでスタートしたのである。 その空港コンセッション第一号の迷走ぶりは、前号(週刊ポスト2019年1月18・25日号)で書いた通りだ。昨年9月の台風21号の上陸で、滑走路が水浸しになってパニックに陥る。急きょ、首相補佐官の和泉洋人や国交省が乗り出して空港の復旧にこぎ着けたものの、企業統治(ガバナンス)の欠如や災害時の対応の拙さをモロに露呈した。昨年の事態について前原に尋ねた。「災害時にどこが責任を持つか。おそらく(コンセッション)契約の中身が、その想定に入っていなかったのだと思います。国も対応が決まっていなかったので、初めはオリックスさんとヴァンシさんでやってくださいよとなった。いや、それは国でやることでしょう、とお互い押し付け合いになる。それで混乱したのでしょう。戦争や大規模震災などの有事では、空港という重要インフラは国が一義的に責任を持たなきゃいけない。それを契約のときに決めておく必要があるのです」 さすがに関空を民営化した張本人だけに、あからさまに「コンセッションの失敗だ」とは言わない。「衆院本会議場での隣がたまたま石井啓一国土交通大臣なので、国土交通大臣経験者同士として話す機会がありました。で、関空のほか、自然災害によるインフラ整備は国費でテコ入れすると言っていました。ああいう災害が起き、検証できて対応策がとれたのだから、むしろ私はよかったんじゃないかと思います」 しかし前号で書いた通り、その検証作業は4か月経た今でも、さほど進展した様子がない。そもそも放っておいてもインバウンドで利益が上がるなら、コンセッションによる民営化が必要だったのかどうか。そんな疑問すら湧く。◆「竹中先生が連れてきた」 このコンセッションの旗振り役が、昨年11月まで官房長官補佐官だった福田隆之である。昨年暮れの臨時国会で、水道民営化の推進役としてその存在が取り沙汰されたが、一般にはあまり知られていない。 1979年千葉県生まれの39歳。福田は2002年3月に早大教育学部を卒業し、野村総合研究所に入社して公共事業の政策を研究するようになったという。いったいどんな人物なのか。 もともと政治や行政への関心が旺盛だったのだろう。福田は早大で政治サークル「鵬志会」に入り、大学4年時の2001年11月には、その延長線上でNPO法人「政策過程研究機構」を設立、代表に就任した。「鵬志会は彼の原点で、その頃から自民党青年局の学生部に出入りし、早大の先輩議員の選挙を手伝っていました。卒論のテーマが『ニューパブリック・マネージメント』。文字通り、公共事業の民営化がテーマでした。そして大学卒業後、野村総研に就職してからもNPO『政策過程研究機構』の活動を続けていました。早大に通っていた東国原(英夫)さんが2006年に宮崎県知事選に出馬するにあたり、そのマニフェスト作成に関わりました。もともと有名人好きなのでしょうね」(知人の一人) 前知事の談合事件を批判して出馬した東国原は「そのまんまマニフェスト」なる公約で「宮崎県を変える」と民間活力による地域経済の活性化を謳い、当選した。 それで自信を得たのかもしれない。福田はそこから折々の政権中枢に近づき、自らの政策を実現させていく。 日本におけるコンセッションの源流をたどれば、民主党政権時代の国交大臣だった前原が、福田を有識者として政府の委員会に招聘したことに始まる。紹介者が小泉純一郎政権時代に規制緩和で鳴らした竹中平蔵だという。小泉は「官から民へ」、前原は「コンクリートから人へ」というスローガンを掲げたが、つまるところ公共事業を減らすという政策だ。「国土交通大臣として私は、選挙公約として掲げてきた高速道路の無料化に取り組み、そこで親交のあった竹中平蔵先生にアドバイスを頂戴しました。そしてあるとき朝食会に竹中先生が福田さんを連れて来られ、紹介されました。で、国土交通省の中に成長戦略会議をつくって福田さんにメンバーに入ってもらったのです。その中でインバウンドをどう増やすか、という大きなテーマを掲げた」 2009年9月に誕生した民主党政権で、前原は鳩山由紀夫内閣の1年間、国交大臣を務めた。目下、成長戦略における安倍政権の看板政策である訪日外国人旅行者の拡大政策は、その実、民主党時代の発想でもあった。 福田はPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)やPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)政策の専門家として、野村総研から国交省の成長戦略会議に初めて出席した。それが2009年12月14日の第5回会議だ。と同時に、大阪府知事だった橋下徹も会議に招かれ、関空のLCC(格安航空)拠点化やインバウンド政策について、話し合っている。 以来、前原と竹中の後押しを得た福田は成長戦略会議だけでなく、内閣府のPFI推進委員会にも参加するようになる。公共施設の建設から維持管理まで民間に任せるPFIそのものは1999年から導入されていたが、なかなか定着しなかった。そこで福田は、PFI法の改正を働きかけていく。 そして2011年5月、法改正により政府や自治体が施設を所有したまま公共事業の運営を任せる新たなコンセッションの導入が可能になる。民主党では、鳩山から菅直人に政権が移り、前原は国交大臣から外務大臣に横滑りしたが、コンセッションには肩入れした。◆震災で民営化が加速 折しもこの年の3月11日、東日本大震災が東北一円を襲った。宮城県では津波が仙台空港に到達し、滑走路の航空機が流されていく衝撃的な場面がニュースで流れた。菅内閣は空港再建のため、関空に続く仙台空港の民営化に乗り出した。 ちなみに、水道コンセッションは、空港より遅れて計画された感があるが、実は同時に進んでいたという。「水道コンセッションもここから始まっています。東日本大震災が起きた直後の2011年5月、私は福田さんと仙台に行って村井(嘉浩)知事とお話をしました。このとき仙台空港の民営化だけじゃなく、水道も提案したのです」 前原がこう振り返った。「沿岸部がすべて津波で壊滅的な被害を受けた。そこで村井知事に、広域の自治体協議会をつくり、一体的に上下水道を管理、運営できるように改組してはどうか、そこに民間の経営手法を取り入れたらどうですか、と提案しました。まだコンセッションとは呼んでいなかったけど、村井知事は仙台空港と宮城の水道の両方を検討し、先に空港に手を付けたわけです」 水道コンセッションには法改正が必要なため、後回しになったわけだ。全国の自治体の中では、宮城県が最も水道コンセッションに前のめりだとされるが、それは東日本大震災のときのこうした経緯があったからにほかならない。 周知のように民主党政権は2009年から2012年12月までの3年しかもたなかった。現実には、それを引き継いだ第二次安倍政権で、コンセッションが動き始めたといえる。そこでも、民主党政権のときと同じく、中心は竹中-福田のラインだ。 自民党が政権に返り咲く前夜の2012年3月、政府委員会に参加する有識者として顔を売った福田は、国内3大監査法人の一角である「新日本有限責任監査法人」にヘッドハンティングされる。パブリック・マーケッツ推進本部インフラストラクチャー・アドバイザリーグループの金融・PPP・PFI担当エグゼクティブディレクターという肩書で、取り組んだのが関空のコンセッションだ。大阪府知事だった橋下徹もいたく福田を評価し、福田は翌4月、関空と水道コンセッションを進めるべく、大阪府の特別参与にも就任する。 一方、竹中平蔵は第二次安倍政権が誕生すると、明くる2013年1月、日本経済再生本部の下に置かれた「産業競争力会議」のメンバーに抜擢された。官房長官の菅義偉が竹中を推薦したとされる。菅は第三次小泉改造内閣時代に総務大臣だった竹中の下で副大臣を務めて以来、竹中の政策を信奉し、今でも頻繁に会っている。産業競争力会議は2016年9月、「未来投資会議」に衣替えするが、アベノミクスの成長戦略を担うエンジンとして期待されてきた。◆関空から官邸へ 福田はその竹中の右腕として仕えてきた。二人は空港と水道のコンセッションを実現すべく、二人三脚で取り組んできたといえる。 たとえば2013年4月3日の「産業競争力会議」テーマ別会合では、竹中が次のように提案している。「規制改革の突破口としての特区を今までと違う形で大幅に拡充したい。もう一つは、官業の民間開放としてのコンセッションを今までとは違うスケールで進めるという点。この2つが実現すれば、日本の経済にかなり違った景色をつくれるのではないか」 念を押すまでもなく、竹中の挙げた2点のうち、特区の見直しは加計学園問題で注目された「国家戦略特区」であり、もう一つが福田と進めるコンセッションだ。政府の関係者が打ち明けてくれた。「竹中先生がこうした委員会で提案する際のバックデータとして資料作りを担ってきたのが、福田さんでした。それだけでなく、会議にも出てきて竹中先生をサポートする。その構図は未来投資会議においても同じでした」 実際、産業競争力会議関連の議事録を見ると、竹中と福田がコンビで登場する場面がやたらと目立つ。とりわけ2014年2月の「第2回産業競争力会議フォローアップ分科会」(立地競争力等)以降、毎回のように二人がそろって出席している。一例を挙げると、2015年4月13日に開かれた「第15回産業競争力会議」の実行実現点検会合にも、福田が民間の有識者として参加し、こうぶち上げている。「(公共施設の)運営権の場合は(中略)民間に設定されるが、資産そのものは行政側に残る。行政側に残る資産は、当然何か大規模な災害などが発生した場合には復旧をしたりしないといけない。復旧をするときに交付税や補助金でその復旧財源を国から補填してもらう必要があると考えていくと(中略)公営企業を維持しなければ、交付税や補助金をもらうことが現状はできない」 そうして竹中や福田は、関空や仙台空港のコンセッションに取り組んできた。わけても関空では、新日本有限責任監査法人が政府のアドバイザー企業に選ばれ、そこに籍を置く福田は関空コンセッション検討チームのリーダーになる。関空の関係者が明かした。「ところがいざやってみると、きちんとした計画ができない。福田氏のつくった実施計画の素案を見て財務省が激怒したのです。ごく簡単にいえば、財務省は関空の借金返済にこだわっていたが、彼の素案では、仮定の計画ばかりで現実には返済のあてがないという内容。それでメンバーを替え、再び検討し直した。しかし彼は、解決策を探っていくギリギリの議論についてこれなかったのかもしれません。いつの間にか、検討会に参加しなくなり、懇意の村井知事の進める仙台空港に乗りかえていきました」 これでは会社にも居づらくなったのかもしれない。そうこうしているうち、福田は新日本有限責任監査法人を退社してしまう。気づくと、内閣官房長官補佐官に就任していたという。「竹中先生はずっと福田氏を使ってきましたから、福田氏が竹中先生に相談し、菅官房長官に推薦したのではないでしょうか。それで、2015年12月の年の瀬になり、官房長官が補佐官就任を記者発表した。さすがに驚きました」(関空関係者) 2016年1月1日付で官房長官補佐官に就任した福田は、以前にも増して権勢を振るうようになる。同月に開かれた内閣府PPP/PFI推進室の「PPP/PFI推進タスクフォース全体会合」第1回では、議長の和泉に次ぐナンバー2の議長代理として参加。水道コンセッションのほか、北海道7空港の民営化を取り仕切っていく。(以下続く)【PROFILE】森功(もり・いさお)/1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(文藝春秋)で「大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション」大賞を受賞。近著に『地面師』(講談社)。※週刊ポスト2019年2月1日号
2019.01.23 07:00
週刊ポスト

トピックス

公務に邁進されている(6月、東京・港区)
佳子さま「公務に積極的」になられた背景に「皇籍離脱」「結婚」か
女性セブン
亜希
亜希 陰から見守る元夫・清原和博と息子達との「父子鷹」
NEWSポストセブン
披露宴での志摩ノ海と元関脇・逆鉾の長女・清香さん(時事通信フォト)
故・逆鉾の長女が結婚で後継者確定も名門・井筒部屋再興への“高いハードル”
週刊ポスト
SNSでの発信力も大きい新庄ビッグボス(時事通信フォト)
新庄ビッグボスのインスタ投稿が波紋 「ファンとそれ以外の分断を煽る」の指摘も
NEWSポストセブン
クルマ、ギター、アート、スケートボードにもこだわる
長瀬智也、英国のバイク誌に登場 悠々自適な暮らしに「所ジョージ化している」の声
女性セブン
小室圭さんと眞子さん
小室圭さん妻・眞子さんがNYで行きつけのスーパーから見えてきた“妻の気遣い”「日本でいえば『成城石井』」 
NEWSポストセブン
京都の街を歩く舞妓のイメージ(写真/イメージマート)
元舞妓の〈16歳飲酒〉〈お風呂入り〉告発に、花街関係者も衝撃「未成年飲酒には厳しく対応しているはず」
NEWSポストセブン
不祥事を理由に落選したはずなのに、比例で復活されては…(左は塚田一郎氏、右は中川郁子氏/写真=共同通信社)
「不倫路チュー」「USBは穴に…」失言・不祥事で落選しても比例復活するゾンビ議員たち
週刊ポスト
注目を集めるNHK吉岡真央アナ
「ポスト和久田麻由子アナ」候補のNHK吉岡真央アナ 替え歌ダンスで“キャラの強さ”際立つ
週刊ポスト
前田敦子と篠田麻里子の女子会姿をキャッチ
前田敦子、篠田麻里子と六本木で4時間半女子会 元夫・勝地涼との関係は良好に
女性セブン
謎めいたバッグを持つ広末涼子
広末涼子、“破壊力強すぎ”コーデは健在「背中に蜘蛛」私服に続き目撃された「謎バッグ」
NEWSポストセブン
結婚し、日本メディアが情報をキャッチしづらいNYで、デイリーメールが追跡取材(写真/JMPA)
小室圭さん・眞子さん夫婦が「離婚で終わったとしても…」英デイリー・メールが報じた「茨の道」
NEWSポストセブン