ライフ

元祖天才バカボンの「目玉のおまわりさん」が悪役でない理由

 バカボンのパパやレレレのおじさんなど、多彩なキャラクターが登場する故・赤塚不二夫氏原作のアニメ『元祖天才バカボン』(日本テレビ系・1975~1977年)。なかでも異彩を放っていたのが、どこでもやたら発砲する「本官さん」こと「目玉のおまわりさん」だ。当時、東京ムービーで同作のアニメ化に携わったシンエイ動画の元会長・楠部三吉郎氏は、著書『「ドラえもん」への感謝状』(小学館)の中で、その知られざるエピソードを明かしている。

 * * *
 実際の放映は1975年10月からでしたが、当然、その前から作り始めないといけません。急いでスタッフを集めて一席ぶちました。

「起承転結とか、そんなの何だ。シナリオになってないとか、そんなことはどうでもいい。話をまとめようとか、そんなこと思わなくていい。これは子どもたちに笑ってもらうもんなんだ。起承転結じゃない。起承転々だ」

 天才の発想を起承転結のありきたりの枠の中に収めてしまうから、つまらなくなる。だったら先生の発想そのまま、起承転々でいけばいい。『天才バカボン』はストーリーマンガじゃなくて、ギャグマンガなのです。シナリオやストーリーが破綻していたって、笑ってもらえればそれでいいのです。

 もうひとつスタッフに言ったのは、「目玉のお巡りさん(本官さん)」の扱いです。

 赤塚先生のお父さんというのは、満州で警官をされていた方です。先生は、警察官が表では敬意を払われているけれど、裏では皆から罵られていたことも知っています。憲兵のようなこともしていたそうですから、あの当時、忌み嫌われる存在だったはずです。

 厳しいお父さんだったそうですが、先生にとっては最愛の父上なんです。その辺をよく理解してくれとスタッフには言いました。だからあのアニメでは、お巡りさんはやたら発砲しますが、決して人に向かって撃っていないし、悪役じゃありません。

「バカボンで大事なのは目玉のお巡りさんだぞ」と、何度もスタッフに口にしました。

 いざ始まってからは視聴率も良く、先生も「面白い!」と喜んでくださっていました。

※楠部三吉郎・著/『「ドラえもん」への感謝状』より

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン