出口氏はこの論文の全文を掲げながら、「イコールの関係」「対立関係」「因果関係」という論理のキーワードを使い、解説していく。まさに紙上講義で、私は学生時代の自分の読みがいかに自分勝手な解釈になっていたか反省を迫られた。またいつの時代になっても古びず、その主張が時代を超えた名文であることを改めて感じた。いまの政治状況下にもやもやしたものを感じる方には是非、一読をお勧めする。
出口氏は文章について、この段落のあとにはこういう段落が続くはずだ式の「能動的な読み」を勧める。これは書く側からいえば、そのような構造をとっていなければならない、ということにもつながる。
読み方についてもう一冊紹介しよう。「新釈 現代文 」(高田瑞穂著・ちくま学芸文庫) だ。書名を見て、「うわあ、懐かしい」と声を挙げる年配の方もおられるのではないか。1959年に新塔社という出版社から出され、現代文の名参考書と20年以上もロングセラーを続けていた。しかし版元の倒産によって絶版。それを筑摩書房の担当者が社内の処分本コーナーからたまたま拾い上げて2009年に復刊した。こちらはまだ生きていて、Amazonでは28件のレビューが付けられている。参考書というより近代文学入門書のような本だ。
SNSなどネット時代になって書籍の売り上げの落ち込みが激しいと言われる。しかし視線の先が本からネットに移動しただけで、文章を読む機会は多い。日本人なら誰でも日本語の読み書きができるだけに、その技術を磨くことはついつい怠りがちだ。「日本語でおk」と言われないためにも、「まあ」、がんばりましょう。