今年の就職戦線は「異状あり」だ。昨年までならすでに大企業の説明会は大詰めを迎え、就活生が大学4年となる4月中には内定(内々定)が出ていたが、2016年春の卒業予定者からは3月から会社説明会が始まり、選考は8月からとなった。
採用開始の後ろ倒しは就活生や親の間で「空白の3か月」と呼ばれている。昨年までなら説明会の参加などに明け暮れていた12月から2月までがポッカリ空いたことで、“いかにその間に就職に有利な資格やスキルを身につけるか”が熱を帯びている。1月から2月にかけて短期留学をする「駆け込み留学」などはその典型例だ。
都内有名私立大に通う息子(文学部)を持つ50代会社員は、年明けから我が子を「就活塾」に通わせた。
「エントリーシートの書き方からOB訪問の仕方まで丁寧に教えてくれるうえに、有名企業の就職実績も高いと知人から聞き、息子には“サークル活動なんてやめて通え”と命令しました。
何より、今年から変わった制度にも詳しいのが心強い。息子は“先輩や大学の就職課に相談すれば大丈夫”というが、去年までのデータなんてアテにならない」
授業料は総額20万円。痛い出費だが、「8月まで模擬面接とかビジネスマナーを教えてくれるのだから安いものです」と言い聞かせ、自分の小遣いダウンも納得して受け入れたという。就活予備校大手「内定塾」の広報担当者はこう話す。
「親御さんの問い合わせ件数は例年の倍です。日程変更に不安を感じる方が多い」
また、関東の国立大3年生男子(文学部)の母親は、真夏の採用試験を心配して「クールビズスーツ」を購入した。
「8月に連日のように面接に行った時に汗まみれの格好では落とされかねない。普通のスーツと一緒に夏用のスーツを2着買ってあげました」という。
※週刊ポスト2015年3月13日号