日本産和牛ブランドの雄「神戸牛」の販売は例えば次のような経路で販売されている。加工認定施設(日本)→輸出業者(日本)→輸入卸売業者(モナコ)→卸売業者(イギリス)→小売店(イギリス)と複数の業者を経由している。価格は1kgあたり375~400 ポンド(約6万6000~7万1000円)とオーストラリア産WAGYUよりも30~40%、地元産牛肉との比較においては10倍という高値だが、とある百貨店では2か月で170kg以上を売り上げたという。
一方、ドイツの輸入卸業者からは、日本産和牛が独自のマーケットを形成する前に投入されたことで「在庫を削減するため安価で販売され、高価格が維持できなくなる」、「ブランド力を強化するために、市場に出回る商品量を少なくし、時間をかけて徐々に市場を築くべき」との懸念も指摘されている。実際、報告書内のドイツの価格例では神戸牛ですら1kgあたり170~490ユーロ(約2万2000~6万4000円)と価格にかなりの開きが出ているという。
日本産和牛を輸出産業として育てようという試みはいいとしても、EU圏への国産和牛の輸出は始まったばかりだ。この輸出ビジネスを、農林水産省が目標とする「250億円」産業に育てるためには、地ならしも必要だ。「日本の和牛」はどういう形でなら現地で高い付加価値を獲得できるのか。海外展開の機運が高まる今だからこそ、立ち止まって考えてみることが必要なのかもしれない。