教科書出版の最大手・東京書籍によれば、同社は確認できる限りで70年発行の「倫理・社会」の教科書から親鸞が法然の思想を「徹底した」との表現を続けている。また、『新選日本史B』など倫理以外の教科書でも、「さらに徹底させ」との表現を用いている。
ではなぜ、今になって浄土宗が問題視するのか。宗教問題に詳しいジャーナリストが解説する。
「今回の騒動の発端は、私立中学・高校の講師経験があり、浄土宗の僧侶で大正大学教授を務める林田康順氏が13年に論文を書き、それをもとに『教科書の「法然上人と親鸞聖人」―許容しがたい教義解釈』と題する文章を宗教専門紙に掲載したことです。法然を親鸞の“下”に位置付けるような教科書の記述について、『到底許容しがたい』と批判した一文が浄土宗関係者の話題となり、昨秋の抗議につながりました」
その林田氏に話を聞いた。
「どちらの宗教が格上か対立するつもりはなく、ただ平等に扱ってほしい。どの教団も自らの教義の優位性を説くのは当然ですが、公教育の場で用いられる教科書の役割を鑑みた時に、浄土真宗を優位とするような現行の記述は浄土宗の立場としては許容できません」
教育基本法第15条は、「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」と定める。林田氏は、浄土真宗が浄土宗より優れたものと読みとれる問題の記述が法律に違反しているとの見解を示している。
※週刊ポスト2015年4月24日号