5月11日、コーポレートガバナンスの普及・啓蒙を推進する日本取締役協会の宮内義彦会長(オリックスのシニア・チェアマン)は都内で会見を開き、こんな持論を述べた。
「社外取締役の“なり手不足”の議論はよくありますが、日本企業には成功裏に会社を経営してリタイアした元会長や元社長は何千人もいますし、その他、ナンバー2で一線を退いた人や元CFO(最高財務責任者)など傾聴に値する意見を持っている人もたくさんいます。
そういう意味では社外取締役に相応しい人材が発掘されていないだけで、人材プールは十分にあると考えています。ただ、元経営者ばかりを集めても意見が合わずに紛糾する可能性もあるので、弁護士や会計士などさまざまなバックグラウンドのある方もバラエティに富んだ貴重な人材となっているのです」
前出の松崎氏も、社外取締役にもっとも相応しい人材として「同一企業の出身者」を挙げる。
「経営の現場を知っていて会社に対する思いの強いOBなら、たとえ今の肩書きがなくても社外取締役として積極的に再登用してもいいと思います。
ただ、社内の出世競争に敗れて出ていったOBや、取締役まで務めて辞めていったOBは現執行部にとって『終わった人』とのイメージが強い。そういう人を改めて使うことに抵抗がある企業もあるでしょうが、外部の人材に経営監視の権限を与えるくらいなら、OBはその企業特有の合理的な経営スタイルを提案できるメリットもあります」
いずれにせよ、社外取締役の強化は頭数の問題ではなく、現経営陣がいかに社内政治の“しがらみ”や“保身”から脱却できるかにかかっている。
●撮影/横溝敦