大塚家具一覧

【大塚家具】に関するニュースを集めたページです。

大塚家具会長に就任するヤマダ電機の三嶋恒夫社長(左)と大塚久美子社長(時事通信フォト)
大塚家具の看板が消滅する日 社長留任も崖っぷちの久美子氏
 ヤマダ電機傘下で経営再建に取り組んでいる大塚家具。だが、業績低迷に歯止めはかかっていない。経営主導権を巡る父娘の激しい“骨肉バトル”を繰り広げてから5年。大塚久美子社長は再び崖っぷちに立たされている。果たして、大塚家具はどうなってしまうのか。ジャーナリストの有森隆氏がレポートする。 * * * ヤマダ電機による大塚家具の本格的な再生計画が始まった。 7月30日、東京・江東区有明の東京ファッションタウンビルで第49回定時株主総会を開く大塚家具だが、2019年12月、大塚家具を子会社にしたヤマダ電機は社長の三嶋恒夫氏(60)を会長に送り込む。 大塚家具社長の大塚久美子氏(52)は続投するものの、ヤマダからは取締役兼専務執行役員事業統括本部長の村澤圧司氏(58)、事業統括本部インテリア家電事業部長の名取曉弘氏(47)、経営企画室参事の清野大輔氏(45)が取締役として送り込まれる。 大塚家具側は久美子氏の妹の夫である取締役専務執行役員流通本部長兼海外営業部管掌の佐野春夫氏(55)など3人が再任となる。ヤマダと大塚がそれぞれ4人、独立社外取締役の弁護士1人で取締役会(ボード)は構成される。社外取締役の陳海波氏(46)は退任する。「陳氏は大塚家具の資本支援をとりまとめた人物。日中をつなぐネット通販、ハイラインズの社長です。中国大手の家具店、居然之家(イージーホーム)を呼び込む再建計画を立てた久美子は、『日本から一歩、歩みだす。中国の富裕層の取り込みを目指す』と大見得を切りました」(関係者)。 しかし、再建計画は久美子氏の思惑通りにはいかなかった。「陳氏は久美子氏の経営力を評価しておらず、『父・大塚勝久氏(77)との和解』を支援の条件としました。久美子氏は、自ら設立した業界団体の名誉会長に就任するよう勝久氏に説得しましたが、勝久氏は断った。これを口実に中国のファンドは出資を見送り、中国での展開も、通販サイトの利用も白紙に戻りました」(金融筋) 振り返れば、大塚家具の父と娘の骨肉の争いは、連日、ワイドショーを賑わし、国民の好奇の目にさらされた。 詳しい経緯は省くが、2015年3月の株主総会で父親に勝利し、「古い大塚家具ではダメだ」と声高に主張する久美子氏の改革は、結局、役員や従業員の支援を得られず頓挫。永年の宿痾(しゅくあ)だった赤字経営が一気に表面化した。 父の勝久氏はすでに匠大塚というライバルの家具会社を立ち上げており、おいそれと大塚家具には戻れなかった。「久美子氏は勝久氏の手の内を読んで、一歩先を行った」(大塚父娘について詳しい関係者)と解説されている。 そんなどん詰まりの窮状に陥った久美子氏に手を差し伸べたのが、ヤマダ電機の創業者で代表取締役会長兼取締役会議長の山田昇氏(77)だった。「久美子氏は何度も山田氏に出資してくれと頼んでいたが、久美子氏がヤマダの子会社になる条件を呑まなかったため、なかなか話がまとまらなかったが、最後に折れた」(前出の関係者)◆再建請負人はリフォーム事業の“切り込み隊長” ヤマダ電機が会長に送り込む三嶋恒夫氏は北陸が地盤の家電量販店「100満ボルト」を運営するサンキュー(福井市)の社長を務めていた。サンキューでリフォーム事業の切り込み隊長だったほか、サンキューを傘下に収めた家電量販店業界3位のエディオンでもリフォームを担当した。 こうした住宅リフォーム事業の実績を買い、山田氏がスカウトし、2017年6月、執行役副社長にした。さらに、1年後の2018年6月、代表取締役社長兼代表執行役COO(最高執行責任者)に昇格し、異例の大抜擢と評された。 創業者の山田氏は、「家電販売だけではジリ貧になる」との強い危機感を持っている。人口減少が続くなか、テレビなどの家電がどんどん売れる時代ではなくなった。インターネット通販のアマゾン・ドット・コムなど、強力なライバルも出現している。 大量の仕入・大量販売を前提としたビジネスモデルを築いた山田氏は、その限界を強烈に意識している。「安いだけでは買わない」賢い消費者が主流になってきた。 代わって山田氏が力を入れたのが住宅関連事業だ。2011年、注文住宅のエス・バイ・エル(現ヤマダ・エスバイエル)を買収した。 2017年からは家電と住宅関連サービスの複合店「家電住まいる館」の出店を開始した。家電の売り場を縮小し、家具や住宅、リフォーム関連のスペースを拡大したのである。今では家電の売り場が店舗全体の半分しかない店もあるほどで、2020年3月末現在、「家電住まいる館」は109店にまで増えた。 そんな「家電住まいる館」を担当したのが、ヤマダ入りしたばかりの三嶋氏だった。◆家電と家具のコラボは相性良くない!? ヤマダによる大塚家具の再生計画は、家電と家具のコラボ展示から始まった。 2月7日、ヤマダの旗艦店「LABI1日本総本店池袋」(東京・豊島区)、「LABI品川大井町」(東京・品川区)、「LABI1なんば」(大阪・浪速区)、「LABI LIFE SELECT千里」(大阪・豊中市)の4店舗をリニューアルオープンした。 ソファやテーブル、椅子など大塚が扱う商品とヤマダの有機ELテレビや白物家電を組み合わせて展示。色合いを揃えるなどして実際に使用したらどうなるかを顧客がイメージできるようにした。 池袋店の改装オープンは報道陣にも公開された。ゆっくりと店内を視察する会長の山田氏の後ろを、大塚家具社長の久美子氏がしずしずと歩む。大塚家具がヤマダの傘下に入ったことを象徴する光景だった。 ヤマダ社長の三嶋氏は「単に家電を売るのではなく、テレビを楽しむために部屋をどう変えれば、より快適にできるかを提案する。大塚家具と協力して家電量販店の垣根を超えたい」と抱負を語る。 その後、大塚家具は6月19日から全国7か所(有明、新宿、横浜みなとみらい、名古屋栄、大阪南港、神戸、福岡)のショールームで家電の展示販売を本格化した。 各店舗のフロアでは、リビングやダイニング、寝室など暮らしのシーンごとに、家具やインテリアとマッチする家電を揃えている。テレビとソファ、ダイニングテーブルと冷蔵庫やスチームオープンレンジ、ベッドと空気清浄機といった組み合わせだ。デザインや色彩のトーンを上手に調和させている。 当初は、3月の有明ショールームでの家電の展示販売を皮切りに、順次展開する計画だったが、新型コロナウイルスの影響で延期。緊急事態宣言の解除にタイミングを合わせ、7店舗一斉オープンとなった。三嶋氏が陣頭指揮を執る家具と家電のコラボ店への転換こそが、大塚家具の再生を左右することになる。 小売業界にはこんなジンクスがある。「家具の家電はライバル。相容れない」(大百貨店の営業担当役員)。家具と家電はいずれも耐久消費財と区分されていて、購入頻度は低い。家具の良いものを買ったら、しばらく家電は買わない(買えない)、というのがサラリーマン家庭のサイフを握っている主婦の感覚なのだ。だから「家具と家電のコラボは砂上の楼閣」(前出の百貨店の営業担当役員)といわれている。◆大塚久美子社長の“賞味期限”は、あと1年 現状、大塚家具の業績は最悪だ。決算期の変更に伴う16か月変則決算の2020年4月期の単独決算は、最終損益が77億円の赤字だった。最終赤字は4期連続で赤字幅はどんどん広がっている。 4か月も長い16か月もありながら売上高は348億円。12か月決算だった前期実績(2018年12月期、373億円)をも下回っている。新型コロナウイルスによる臨時休校や外出自粛要請で新学期の需要期にあたる3~4月に客数が落ち込んだのが痛かった。 同業他社と比べても大塚家具の落ち込みは際立つ。家具・ホームセンター大手の島忠の2020年8月期の売上高にあたる営業収益は、前期比3%増の1508億円、純利益は1%増の60億円を見込む。「家具を買い替える家庭が増えている」という“新常態”をうまく取り込み、数字として示した。 絶好調なのは家具大手のニトリホールディングスだ。一時、全店の約2割にあたる110店で休業したが、2020年3~5月期の連結決算の売上高1737億円、純利益255億円と過去最高となった。テレワークの広がりで仕事用の机や椅子が売れ、収納家具やキッチン用品も伸びた。 似鳥昭雄会長(76)は決算会見で、「外食しなくなり、洋服も買わなくなった。そのお金が家の中で使われている」と分析した。家庭で豊かに暮らすために、使い古した家具とオサラバする人が増えているというのだ。 緊急事態宣言で止まっていた人の動きが、解除を受けて徐々に戻りはじめているが、こうした消費を「リベンジ消費」と名付け、株式市場では盛り上がっている。コロナで外出を制限され、不要不急の買い物を我慢してきた人々の、新たな購買行動をリベンジと捉えている。 大塚家具は、新たに家電の取り扱いを開始したことから、5月以降月次情報の開示をやめている。リベンジ消費の大波に、はたして乗れているのだろうか。 山田会長は買収会見で、「ウチは結果主義。黒字にできるというからやらせる。(久美子社長に)1年任せる」と語った。久美子社長の賞味期限は、あと1年。2021年4月期に黒字転換できなければ、フェードアウトする運命にある。 ヤマダ社内からは早くも「完全子会社(※2019年12月現在、51.3%の出資)にしたほうが合理的」という声が聞こえてくる。2012年に買収したベスト電器は完全子会社となり、上場廃止されている。 上場廃止すれば、株価や株主への目配りをせずに、リストラを円滑に進めることができる。有価証券報告書の作成など上場を維持するために必要なコストも減らせる。 このまま業績が上向かなければ、大塚家具の看板が消滅し、“ヤマダ家具”になる日は近そうだ。
2020.07.19 07:00
NEWSポストセブン
コロナ禍の株主総会 赤字深刻化の大塚家具、ゴーン後の日産の争点
コロナ禍の株主総会 赤字深刻化の大塚家具、ゴーン後の日産の争点
 株主総会が本番を迎える6月。今年はコロナ禍で開催延期を決める企業も現われたが、赤字が深刻化している企業の総会は注目されている。【写真】昨年の日産の株主総会の様子 かつては父と娘が壮絶なバトルを繰り広げた大塚家具。2015年に大塚久美子社長が父で創業者の勝久氏を会長退任に追い込むと、その後に勝久氏が匠大塚を創業した。 父と娘のつばぜり合いは、多額の赤字を抱えた大塚家具が昨年12月にヤマダ電機の子会社となることで終焉した。経済ジャーナリストの山口義正氏が語る。「久美子社長は窮余の一策でヤマダ電機の軍門に下ったが、目下の売上高を見る限り、子会社となった効果は出ていません。株主総会では久美子社長への追及の声が上がるでしょう」 2018年11月にカルロス・ゴーン前会長が金融商品取引法違反で逮捕されて以来、ゴーン・ショックに揺れる日産自動車は、新型コロナの影響もあいまって11年ぶりの当期赤字が見込まれる。「昨年はゴーン氏との決別がテーマだったが、今年は新型コロナの影響で落ち込む業績がテーマとなる。世界的な需要消失の前に打つ手は少なく、2008年のリーマンショック時に、経営破綻寸前に追い込まれた苦い記憶がよみがえる株主も多いはず」(同前) 日産の連結会社である三菱自動車も当期赤字260億円になる見通しで、株主総会での大きな争点となると見込まれる。 早稲田大学名誉教授の上村達男氏は、「今年の株主総会は企業のモラルが問われる」と指摘する。「新型コロナ対策を名目に質問時間を短くしたり、規模を縮小したりする会社が現われるかもしれない。しかし、それは企業倫理に反します。例年通り開催できないなら、延期も検討すべきです」 6月には、企業から株主に“緊急事態宣言”が出されるかもしれない。※週刊ポスト2020年5月22・29日号
2020.05.18 07:00
マネーポストWEB
令和の合併 ヤフー×LINEに見る成長ビジネス獲得型が増える
令和の合併 ヤフー×LINEに見る成長ビジネス獲得型が増える
 2019年9月、ヤフーがファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの買収を発表し、世間を驚かせた。さらに11月にはヤフー(親会社・Zホールディングス)とLINEが経営統合を発表。他にも、ヤマダ電機が大塚家具を買収するなど、有名企業の“大型結婚”が相次いだ。 今後、令和時代の企業合併はどうなっていくのだろうか。ジャーナリストの溝上憲文氏は、平成の「選択と集中」に代わって、これからは「成長ビジネス獲得型」の合併が増えていくと予測する。「現在はビジネスのスピードが非常に速く、一から事業を立ち上げるよりも、吸収合併やM&Aをしたほうが効率的です。 ヤフーが企業としての実績があるZOZOやLINEを傘下に収めたのも『成長ビジネス獲得型』の戦略と言えます。これまでのように、同業種での『対等合併』は減り、業界にかかわらず大企業が成長企業を飲み込む『吸収合併』が増えていくでしょう」『経済界』編集局長の関慎夫氏は「合併を成長につなげる経営者」のモデルを、ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏と、楽天の代表取締役会長兼社長・三木谷浩史氏に見るという。「孫氏は合併による成長戦略を平成の間ずっと続け、三木谷氏は将来の成長図を先に描き、それに足りないパーツを買い集めました。両者とも非常に戦略的に合併・買収を企業経営に取り入れる“攻めの合併”を展開し、そのスピード感は他の経営者を圧倒します。ただし両者とも、海外企業の経営に関与して成功させた経験がないことが今後の課題です」 一方で国内企業の合併にばかり気を取られていると、思わぬしっぺ返しを食らうかもしれない。「日本企業同士の合併ばかり話題となりますが、2018年度に中国企業が買収した日本企業は過去5年間で最多となりました。この先も、日本企業が中国をはじめとする外国の企業に買収される件数は伸び続けると考えられます。令和は日本企業が買い叩かれる時代になるかもしれません」(関氏)※週刊ポスト2020年1月17・24日号
2020.01.17 07:00
マネーポストWEB
平成合併企業社員、出身で出世も給料も変わる悲喜こもごも
平成合併企業社員、出身で出世も給料も変わる悲喜こもごも
 2019年は日本を代表する成長企業が次々と合併を発表した。9月には、ヤフーがファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの買収を発表し、世間を驚かせた。さらに11月にはヤフー(親会社・Zホールディングス)とLINEが経営統合を発表。他にも、ヤマダ電機が大塚家具を買収するなど、有名企業の“大型結婚”が相次いだ。 平成の間に日本企業は数多くの合併を繰り返してきたが、事業拡大や合理化をめざすためとはいえ、競合していたライバル同士の合併は様々な軋轢を生んできた。 中でも大きな問題となるのが、人事や待遇面での「格差」だ。合併の主導権を握った企業が、その後も幅を利かせたケースは少なくない。『経済界』編集局長の関慎夫氏が挙げるのは「三菱UFJ銀行」だ。「最初から三菱が主導権を持っていたので、みずほのような合併時の混乱は生じませんでしたが、現在でも三菱UFJでは三菱出身者でないと頭取になれないという慣例が続いています」 ジャーナリストの須田慎一郎氏は「こうした人事は以前からの体質だ」と指摘する。「2002年に東海銀行と三和銀行が合併してUFJ銀行ができましたが、事実上は三和が東海を救済する意味合いが強かった。そのため、旧三和が旧東海勢を人事面で冷遇した過去があった。今度は自分たちが三菱に同じことをされたわけです」 逆に合併によってパワーバランスが変化したのが「みずほ銀行」だという。「当初は第一勧業銀行(一勧)頭取の杉田力之氏がトップとなり、最大派閥の一勧主導の経営となるはずが、杉田氏に健康問題が発覚、リタイアしました。 するとノーマークだった旧富士銀行副頭取の前田晃伸氏が旧日本興業銀行側に接近し、旧第一勧業銀行の動きを封じて2002年にみずほホールディングスの社長に就任しました。“政治力”に定評があった前田氏の時代には、行内の実力者が次々とグループ会社に転出。前田氏は8年間にわたってトップに君臨し続けた」(同前) その前田氏は2011年にみずほFGの特別顧問を退任後、2020年1月からNHKの新会長に就任することになった。 2011年からみずほFG社長に就任し、2013年からみずほ銀行頭取を兼任したのが、旧日本興業銀行出身の佐藤康博氏だった。「ワントップ体制を築いた佐藤氏は『これからは旧行の背番号を外していく』と宣言した。ここにきてようやく前田氏の影響力が薄れてきているようです」(同前) 日商岩井とニチメンが合併した「双日」では、人材流出が問題化したという。経済ジャーナリストの福田俊之氏が指摘する。「合併後の人員削減の過程で、日商岩井の優秀な人材が他社に流出してしまった。例えば、日産自動車の新社長に就任した内田誠氏は日商岩井出身で、この合併によって2003年に日産に転じた人物です」 合併によって人事と賃金面の混乱を招いたのが「日本航空」だ。ジャーナリストの溝上憲文氏が語る。「JASを吸収合併した際、日航は『対等』を標榜して、持ち株会社の傘下にJAS主体の国内線会社と日航主体の国際線会社をぶら下げました。持ち株会社は、部長が日航出身なら次長はJAS出身、課長は日航出身と完全な“たすき掛け人事”でしたが、給与の仕組みや諸手当はまったく違っていた。 給与はJASが日航より高かったにもかかわらず、両社の労組が強かったこともあり、旧体制の賃金制度がそのまま維持されました。そのうえ人事考課は直属の上司が行なうため、部長はよくわからないJASの考課表に基づいて次長を査定し、次長はなじみのない日航の考課表に基づいて課長を査定する“ねじれ”が生じていたという」◆「接待相手が部下になった」「三越伊勢丹」でも賃金格差が生まれたという。「三越出身者は待遇面で大きな格差をつけられたとされます。本給こそ統一されたものの、一時は賞与面で格差が生じて、三越出身の社員の不満が募ったと言われます」(関氏) 三越伊勢丹では、この賃金格差が問題となり、合併に先駆けて統一された組合が分裂。執行委員長のポストをめぐって三越、伊勢丹双方の推す候補者が争ったこともあった。 三越伊勢丹の50代社員は、社風の違いを感じる場面があったと語る。「富裕層の外商ルートを優先的に押さえようとする三越出身社員に対して、伊勢丹出身社員が『大事なのは店舗にお客さんを呼ぶこと』と主張するなど、カラーの違いを感じることは今でもあります」 建材大手のトステムと製陶大手のINAXが2001年に経営統合以降、2011年にサンウエーブ工業、新日軽、東洋エクステリアの計5社が合併して誕生して現在に至る「LIXIL」では、「社員の立場の逆転」が多くみられたという。INAX出身の50代社員が語る。「合併後は5社から来た人間が同じフロアでシャッフルされて混ざり合い、商売上の付き合いで接待していた相手が部下になったり、逆に接待されていた相手が上司になったりして、気まずい時期がありました。 私はINAX時代にトイレなど水回りが専門だったけど合併後はサッシも扱うことになり、サッシ専門の他社から来た部下に仕事の相談をされても上司としての助言ができず、恥ずかしいことが結構ありました」「5社シャッフル」は待遇面にも影響したという。「出身会社の規模と業績で待遇が決められて、トステムとINAX以外の3社出身だと『課長級』の等級でも給料は1等級下の『課長補佐』くらいだったと記憶しています。 一方、賞与は合併後の業績に連動するので、合併前に業績が落ち込んでいた3社から来た社員は、『最後のほうはボーナス一律10万円だったので、本当に助かります』と新会社の賞与体系を喜んでいました」(前出・50代社員) まさに合併は悲喜こもごもなのである。※週刊ポスト2020年1月17・24日号
2020.01.08 07:00
マネーポストWEB
平成企業合併の成功と失敗 LIXIL、みずほ、三越伊勢丹など
平成企業合併の成功と失敗 LIXIL、みずほ、三越伊勢丹など
 平成の経済を振り返るとき、大企業の再編・統合を避けて通ることはできない。バブル経済の崩壊という時代の要請があったにせよ、異なる社風や待遇などの障壁を乗り越えるのは容易ではなく、それをきっかけに飛躍した企業もあれば、思惑に反して勢いを失った企業もあった。日本経済に大きなインパクトを与えた企業合併の30年史を振り返る。◆「規模拡大」から「生き残り」へ 2019年は日本を代表する成長企業が次々と合併を発表した。9月には、ヤフーがファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの買収を発表し、世間を驚かせた。さらに11月にはヤフー(親会社・Zホールディングス)とLINEが経営統合を発表。他にも、ヤマダ電機が大塚家具を買収するなど、有名企業の“大型結婚”が相次いだ。過去、日本企業は数多くの合併を繰り返してきた。ジャーナリストの溝上憲文氏が語る。「企業の合併のスタイルは時代とともに移り変わってきました。昭和では、1970年に八幡製鉄と富士製鉄が合併し誕生した新日本製鉄が代表的です。 成長期だった当時、合併の主な目的は、国内市場でのシェア拡大でした。合併後も社員数やポストを削減することなく旧2社の組織が維持された。社長以下の幹部・管理職人事は“たすき掛け”となり、人事交流は皆無でした。1970~1980年代までは合併と言いながらも、実態は旧2社が併存していることが多かった」 しかし平成に入るとバブル崩壊に伴い、日本企業を取り巻く環境が一変した。国内市場が収縮する中、成長期のような「規模拡大型」や「シェア重視型」ではなく、グローバル市場を勝ち抜くための合併が求められるようになった。「平成以降は、外資の攻勢などに晒された日本企業が生き残りをかけて、『選択と集中』の合併をするようになりました。2001年導入の会社分割制度で、企業の不採算部門を子会社化する場合に社員を同意なしで転籍できるようになった。それによって子会社を他企業の同一部門と合併したり、他企業に切り売りできるようになったことも、『選択と集中』の合併を後押ししました」(溝上氏) 本誌・週刊ポストは平成を代表する合併企業22社(合併前は45社)をリストアップ。東京商工リサーチのデータ協力を得て、売上や経常利益、従業員数などを別掲の表にまとめた。 これらの平成の合併のうち、経済ジャーナリストの福田俊之氏が成功例と指摘するのは、2006年にトーメンと合併した「豊田通商」だ。 合併前の豊田通商とトーメンの経常利益は合わせて1115億円(2006年3月期)だったが、合併後は2019年3月期で税引前利益が2291億円と倍増している。「古くから『トヨタ自動車の下請け会社』と呼ばれていた豊田通商ですが、合併によってトーメンの人材とノウハウを得て、アフリカを始めとする外国事業を急拡大させた。2012年には、アフリカビジネスに強いフランス最大の商社・CFAOも買収し、『アフリカなら豊田通商』と呼ばれるシェアを獲得した」(福田氏) ジャーナリストの須田慎一郎氏は、2008年に三越と伊勢丹が合併して誕生した「三越伊勢丹ホールディングス」を成功例に挙げた。 1997年に9.2兆円あった全国の百貨店売上高が2018年には約6兆円まで減少する中、「選択と集中」の合併で活路を見出した。「ネット通販の普及で百貨店ビジネスが斜陽となり、伊勢丹相模原店や府中店、新潟三越の閉店を決断する一方、伊勢丹新宿店、日本橋三越本店、銀座三越の基幹3店は結果を出しています。三越と伊勢丹が一緒になることでブランドバリューが高まり、百貨店での購買に価値を見出す人にアピールした」(須田氏) 実際、国内市場が縮小する中で、三越伊勢丹ホールディングスは2019年3月期連結決算で最終利益が134億円と、2年ぶりの黒字を計上した。 合併の成否は売上や利益ばかりでは測れない。2005年まで新日本製鉄に在籍した『鉄人伝説 小説新日鐵住金』の著者・小野正之氏が、2012年の同社と住友金属との合併をこう評する。「合併が比較的スムーズに実現したのは、2002年から両社が業務提携を続けてきたことが大きかった。中国メーカーの台頭で鉄鋼業界全体に危機感が漂う中で、社員は両社の協業の必要性を認識していました」 2004年に東京海上火災保険と日動火災海上保険が合併した「東京海上日動火災保険」についても、須田氏は成功例だと指摘する。「合併後に先進的な人事制度の整備を進め、業績につなげた稀有な例です。合併のメリットであるコストカットをしながら、いち早く女性社員の育成・登用に積極的に取り組みました。2015年に同社で初めて女性を常務執行役員に抜擢し、現在では女性管理職も多い」◆意思決定の遅れを招いた 合併により業績を伸ばす企業がある一方、スケールメリットを活かせずにいるケースも少なくない。 多くの識者が「失敗の代表例」と指摘するのが、2002年から段階的に日本エアシステム(JAS)と合併した「日本航空(JAL)」だ(2006年完了)。全日空との「2大航空会社対決」を制する目論見は外れ、合併からわずか8年後の2010年に日本航空は経営破綻に追い込まれた。須田氏は「日航は『選択と集中』に失敗した」と指摘する。「日航は『日の丸航空会社』との意識が強く、政治家が介入した不採算路線を廃止できなかった。JASを吸収合併したらどのようなメリットとデメリットがあり、どう経営の足を引っ張るかの検討が不十分だったと言える」『経済界』編集局長の関慎夫氏は、2002年に第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が合併して設立された「みずほ銀行」を挙げる。「先に第一銀行と勧業銀行が合併してできた第一勧業銀行で人事交流が進まなかった反省から、みずほ銀行は3行合併を選択しました。 多数決で議決すれば、行内に対立が起こらないとの読みでしたが、フタを開ければ3すくみになって迅速な意思決定ができず、2002年の営業初日に大規模なシステム障害の発生につながった。3メガバンクの中でみずほが遅れを取っている背景には、そうした事情もあると言えるでしょう」 拡大路線が“お家騒動”を招いたのがLIXILグループだ。建材大手のトステムと製陶大手のINAXを母体に、2011年にサンウエーブ工業、新日軽、東洋エクステリアが合併して誕生したLIXILは、トステム創業家出身の潮田洋一郎氏が長く経営トップの座を占めた。合併後も潮田氏の意向を受けて積極的な海外M&Aを推し進めるも赤字が続いた。「2016年にLIXIL社長兼CEO(最高経営責任者)になった瀬戸欣哉氏が拡大路線を修正すると潮田氏との溝が広がり、瀬戸氏のCEO退任をめぐって対立が激化。瀬戸氏のバックにINAX創業家の伊奈啓一郎取締役が加わり、2つの創業家によるお家騒動が勃発し、LIXILグループの2019年3月期の連結営業利益は150億円の赤字(前期は591億円の黒字)となりました」(関氏) その後、瀬戸氏がCEOに復帰して市場の信頼は回復したものの、お家騒動は拡大路線が必ずしも成功しないことを如実に示した。※週刊ポスト2020年1月17・24日号
2020.01.06 07:00
マネーポストWEB
大塚家具の大塚久美子社長(左)とヤマダ電機の山田昇会長(時事通信フォト)
真っ赤なスーツの「家具屋姫」 大塚久美子社長の運命は?
 経営再建中の大塚家具が家電量販店大手、ヤマダ電機の傘下入りを表明した。第3者割当増資を行い、43億円を調達。ヤマダ電機は過半数の株式を取得するという。大塚久美子社長はそのまま続投することになっているが、これまで経営権を巡って激しい親子ゲンカを繰り広げたり、業績を悪化させたりと経営手腕に疑問符がついてきただけに、今後の進退は不透明だ。果たして“家具屋姫”の運命は? 経済ジャーナリストの松崎隆司氏がレポートする。 * * * ヤマダ電機の山田昇会長と大塚家具の大塚久美子社長は12月12日午後5時に都内で記者会見を開いたが、会見場に入ってくると、お互い目線を合わせないように振る舞っていたのが印象的だった。 久美子社長は真っ赤なスーツを身にまとい登場。記者から「いつも白い衣装なのに今日だけなぜ赤い衣装なのか」との質問が飛び出すと、「中は白ですよ」とスーツの中の衣装を強調。「明るい気持ちでやりたいなぁと思って赤を選んだ」と心境を吐露した。 さらに久美子社長は今回の資本提携について、「家具の提供だけでなく、顧客の目線で生活提案できるようにしたいと考え、提携を決めました」と語ったが、それがホンネではないことは明確だ。 大塚家具は大塚勝久氏が創業した高級家具販売会社だったが、2014年ごろから娘の久美子社長と対立が表面化、2015年3月の株主総会で勝久氏が取締役を解任されたことから久美子社長が実権を握った。 その後、久美子社長は独自の経営戦略を展開するが業績悪化を続け、2016年からは営業赤字が続き、それまで無借金経営で2015年12月には110億円あった現金が2019年第3四半期には22億円まで減少。今年いっぱいで運転資金も底をつくのではないかといわれていた。 大塚家具の経営はすでに自転車操業に入っている。2016年12月期には46億円の営業赤字に転落。さらに翌年の2017年12月にも51億円の営業赤字が続いたことで、2017年12月には運転資金が18億円にまで減少。その時頼ったのが貸会議室運営のティーケーピー(TKP)だった。TKPは11月に第三者割当増資で業務資本提携を発表し、10億円の資金を調達。翌年の黒字化をめざしてリストラを進めた。 ところが、2018年12月も51億円と3期連続で赤字が続き、周囲からは久美子社長の辞任を求める声が上がっていたという。しかし久美子社長は2019年3月には越境ECのハイラインズやファンドから38億円を調達する約束を取り付け、急死に一生を得る。そしてヤマダ電機もこのとき提携に名乗りをあげたが、出資には踏み切らなかった。 当初出資する予定だったハイラインズなどの日中アライアンスファンドは、中国政府の認可が得られず出資ができなかったことから大塚家具が手にしたのは約26億円。その資金を基に経営再建を進めていたが、2020年3月には手元資金がついに枯渇するのではないかといわれてきた。 一方で金融機関も大塚家具に対する支援には懐疑的だった。久美子社長の経営手腕に疑問を感じていたからだ。三井住友銀行は今年8月までに、担保として保有していた大塚家具の株をすべて売却。それでも、ききょう企画(大塚家具のオーナー家の資産管理会社)には3億円の残債務が残っている。 こうした中で急浮上したのがヤマダ電機との資本業務提携だった。ヤマダ電機とは今年2月15日に家具、家電、リフォームのノウハウや商材の相互利用をすることで業務提携を進めてきた。 ヤマダ電機自身も2011年にプレハブメーカー、エス・バイ・エルを買収して、家電と住宅関連事業の複合化を進めてきた。そうした中で2018年7月ごろから大塚家具との事業提携の話が持ち上がり、2月に事業提携がスタート。今回はさらに業務提携を深化させるためというのが建前だが、大塚家具が資金繰りに窮し、ヤマダ電機が救済したというのが実態だろう。 久美子社長は続投することになっているが、それは第三者割当増資をするための条件が社長の続投となっていたからだろう。ただ増資引き受け後、ヤマダ電機が実際に経営権を手にしたらどう出るかは分からない。経営再建するために経営陣の大幅な見直しが必要だと判断されれば、久美子社長に辞任を求める可能性は低くない。「ヤマダの考え方は“結果主義”だが、その代わりチャンスは与える」 と極めてクールに発言した山田昇会長。果たして久美子社長の進退はどうなるのか、今後の成り行きが注目される。
2019.12.14 07:00
NEWSポストセブン
大塚久美子社長が始めた「社長ツアーガイド」の接待術
大塚久美子社長が始めた「社長ツアーガイド」の接待術
 大塚久美子社長率いる大塚家具は、業績悪化からなかなか回復の兆しが見えず、父・勝久氏との関係修復もいまだ道半ばである。 大塚家具は今年、創業50周年にあたる節目の年だけに、是が非でも連続赤字をストップする必要があるが、打つ手はあるのか。 そこで久美子社長が考えたのが、「社長の大塚久美子がガイド! 有明本社ショールーム見学ツアー」である。大塚家具の会員になれば、無料で社長自らの案内でショールームを見学できるというサービスだ。 ツアーに参加したという田村秀男・産経新聞特別記者が語る。「久美子さんとは以前から知り合いで、来ませんかと誘われました。私は高級家具に特化したビジネスモデルは限界ではないかと思っていましたが、ショールームで久美子さんから日本の各地で作られた家具についての詳細な説明を聞き、どういった伝統が生かされているかを聞くと、家具が日本の地方経済と結びついた文化であることを実感できました。 ただ、『とてもじゃないが、庶民には手が出ない』と率直に言ったところ、『いいんですよ、うちは博物館でも。お客様がそれで楽しめればいいんです』と言っていた。経営上のごたごたがあったけど、ようやく再スタートを切った感じなのかな。そんな余裕を感じました」 大塚家具広報室によると、「すでに2回開催され、次回は8月に予定されていますが、会社としてでなくあくまで社長が独自に行なっているものです」とのこと。 久美子社長はツイッターに前回のツアーについて〈ご好評いただきました。60分間のツアーでしたが、参加の皆様のご了解を得て、少し延長しました。内容を絞っても60分では足りない感じです〉と書き込むなど、意欲十分。「会いに行ける女社長」が、復活のカギを握るのかもしれない。※週刊ポスト2019年8月16・23日号
2019.08.10 07:00
週刊ポスト
企業の創業家トラブル相次ぐ 繁栄と衰退を分けるものは何か
企業の創業家トラブル相次ぐ 繁栄と衰退を分けるものは何か
 創業家出身の会長と外部から招聘したプロ経営者が対立したLIXIL、親子の感情的な対立が続く大塚家具など、創業家が問題を抱える企業は枚挙に暇がない。 東証一部上場の小森コーポレーションは、印刷機械メーカーとして高い技術力を背景に国内外から紙幣の印刷機も受注していることから「新紙幣銘柄」と目されている。その小森に海外ファンド勢が対決姿勢を鮮明にし、6月19日の株主総会では創業家出身の小森善治会長の選任案に反対するとみられているのだ。 ファンド側はすでに水面下で議決権行使助言会社に「小森会長の選任案に反対」の意見を示すよう働きかけている。 財務内容を見る限り、小森は自己資本比率が高く、現預金をたっぷり保有する優良企業だ。しかし近年は業績が冴えないのに、経営資源を研究開発に投じて新規事業に打って出るわけでもなければ、十分に株主に報いるわけでもない。ただ現金を貯め込むばかりの経営姿勢に投資ファンドは業を煮やしているのだ。 そればかりか役員や幹部クラスは縁故者で固められ、次期社長と目されている梶田英治専務も小森会長の娘婿。こうした縁故主義の強さが投資ファンドの目には「経営責任をとっていない」と映る。 市場関係者は「今度の株主総会で会長の続投に多くの支持が集まらなければ、それに乗じて来年には物言う株主たちが入り込んで来たり、さらに強硬な要求を突き付けられる」と、予想をしてみせる。 さらに『週刊文春』6月6日号では、大手食品メーカー・ミツカンの「酸っぱいお家騒動」が取り上げられた。グループ会長である中埜家の娘婿が、孫が生まれた途端に「孫を私の養子にする」と迫られ、会社からも退職するよう勧告されたことを「パワーハラスメント」だと告発したのだ。 このように、創業家が騒動の中心にいる企業が少なくないのはなぜだろうか。一方で、トヨタ自動車やサントリーホールディングス、セブン&アイ・ホールディングス、ブリヂストン……。令和の日本を支える錚々たる顔ぶれに、創業家が君臨する企業は多い。これらの企業が創業家を頭上に戴きながら成長し続けられるのはなぜだろうか。 ミツカンの創業家は、ソニーを興した盛田昭夫氏の実家である造り酒屋と江戸時代から縁戚関係にある。LIXILのお家騒動で注目された旧INAX創業家の伊奈家はトヨタ自動車の豊田家と縁戚にある。何が創業家をめぐる企業の繁栄と衰退を分けるのか。「会社はトイレットペーパーの切れ端までオレのもの」と言いながら自社を上場に導いたオーナー社長もいれば、「倒産しそうな時に多くの人に助けてもらった経緯から、上場した時点で会社は自分のものという意識を捨てた」という創業社長もいる。どちらか一方が正解ということではないのかもしれない。 強力なリーダーシップを発揮して求心力で組織をまとめ、権限を委譲すべきところでは「やってみなはれ」と部下に任せて遠心力を成長の力に変える。求心力と遠心力のバランスは会社ごとに異なるだろうし、その会社が置かれている局面によっても最適解の在りかは常に変わる。 そんな最適解を探り当てられるのは、自分の血や肉を分けるようにして会社を作った創業家だけかもしれない。それこそが創業家の強みである。そしてそれが困難になったならば、経営者を取り換え、企業を存続させる冷徹なシステムが企業統治なのだ。創業家であっても経営から追われるシステムの構築こそ、今の時代に必要なのかもしれない。●リポート/山口義正(ジャーナリスト):1967年生まれ。愛知県出身。法政大学法学部卒。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞証券部記者などを経て、現在は経済ジャーナリスト。オリンパスの巨額粉飾事件をスクープし、著書『ザ・粉飾 暗闘オリンパス事件』(講談社+α文庫)にまとめた。※週刊ポスト2019年6月14日号
2019.06.14 07:00
マネーポストWEB
続出する創業家トラブル レオパレス21、出光興産、大戸屋など
続出する創業家トラブル レオパレス21、出光興産、大戸屋など
 創業家出身の会長と外部から招聘したプロ経営者が対立したLIXIL、親子の感情的な対立が続く大塚家具、経営危機に見舞われながら創業家の排除がなかなか進まないスルガ銀行……など創業家をめぐるトラブルが、企業価値そのものを揺るがす事態が相次いでいる。 そのほかにも、近年「創業家トラブル」が問題となった有名企業は少なくない。以下、代表的なものを紹介しよう。【出光興産】 2015年に昭和シェル石油と合併で基本合意したが、筆頭株主である創業家の出光昭介名誉会長が反対。和解し、2019年4月に経営統合した。【大戸屋】 2015年に実質創業者の三森久実前会長が急逝後、長男が降格するなどの処遇に創業家が反発。前会長に功労金2億円を払うことで収束した。【オリオンビール】 16%の株式を持つ創業家が経営陣と対立。今年、米投資ファンド・カーライルと野村HD子会社による買収を牽引し、成立させた。【デサント】 創業家の石本雅敏社長と筆頭株主の伊藤忠商事が経営方針をめぐり対立。伊藤忠は今年、敵対的買収を実施し成立。石本氏は6月20日の株主総会で退任予定。【ぺんてる】 2012年に社長を解任された創業家の堀江圭馬氏が投資ファンドに株売却。今年、コクヨがその株式を間接保有することで事実上の筆頭株主に。【レオパレス21】 2018年にアパートの施工不良問題が発覚。調査委は「創業者(深山祐助前社長)に落ち度」と報告。甥の英世社長は5月30日に退任した。【ロッテ】 2015年に創業者、重光武雄氏の長男と次男が対立し、武雄氏と長男が会社を追われた。その後、次男は韓国で朴槿恵前大統領にまつわる贈賄罪で逮捕された。※週刊ポスト2019年6月14日号
2019.06.08 07:00
マネーポストWEB
大塚家具のお家騒動、父娘よりも問題を根深くした兄妹間の確執
大塚家具のお家騒動、父娘よりも問題を根深くした兄妹間の確執
 創業家をめぐるトラブルが、企業価値そのものを揺るがす事態が相次いでいる。 2001年にトステムとINAXが経営統合してできた住宅建材の最大手住宅建材のLIXILは、取締役会議長として同社を引っ張ってきた潮田洋一郎氏(トステム創業家出身の2代目)と、プロ経営者として招いた瀬戸欣哉・前CEOが経営路線を巡り対立。潮田氏は瀬戸氏を事実上、解任した。 するとその過程に不透明な点があったとして、海外投資ファンドが反発。瀬戸氏は旧INAX創業家出身の伊奈啓一郎取締役や川本隆一取締役と手を組み、潮田氏の解任を求める事態に発展した。 LIXILのようにガバナンスの問題であるうちは、まだいいかもしれない。いつ終わるとも知れない親子の感情的な対立が、問題の解決を困難にしているのが大塚家具だ。 大塚家具は2015年に大塚久美子社長が父で創業者である勝久氏を会長退任に追い込んで以来、対立が続いている。大塚家の事情を知る関係者たちは「父・勝久氏は娘の久美子社長が歩み寄ってくれれば、許したいのが本心ではないか」と口をそろえる。しかしそうはいかない事情がある。 勝久氏とともに会社を追われた長男の勝之氏と久美子氏の確執がそれであり、しかも久美子社長とよく似た性格の母親が長男を溺愛してきた。こうした人間模様はしばしばシェークスピアの悲劇「リア王」にたとえられてきた。 そこに久美子氏と共闘した弟妹の問題も加わる。勝久氏は大塚家具の会長時代、久美子氏の希望で自ら保有する大塚家具株を資産管理会社・ききょう企画に譲渡し、ききょう企画が発行した社債と交換した。会長退任後、その社債の償還を求める裁判で勝久氏が勝ち、償還金を支払うために久美子氏と弟妹3人は銀行から17億円もの借金をしたとされる。「その返済は大変で、久美子氏と弟妹は父親に対して複雑な感情を持っているはず」(大塚家具関係者) 久美子氏としてはその弟妹の面倒を見なければならない。妹婿の佐野春生専務をナンバー2に据え、弟を社長室長に置かなければならないのはそうした事情によるものだという。親子よりも兄弟間の確執が、問題を根深くしている。 業績面では、大塚家具は自ら打ち出したイメージに苦しめられている。高価格帯だけでなく、中価格帯へも守備範囲を広げた結果、低価格帯の顧客には割高な価格設定に映り、高価格帯を志向する顧客からは「安物を売るようになったの?」と誤解されている。新しい家族を迎えたり、新居を構えたりする門出に、家庭不和のイメージが払拭できない大塚家具は選びにくい面もあるだろう。 とはいえ、独立した勝久氏が率いる匠大塚の経営も決して好調とは言えない。帝国データバンクによると、同社は2018年3月期の営業赤字が14億円で、37億円の債務超過。識者からは、親娘が関係を修復したうえで大塚家具と匠大塚が経営統合するしか再建の道はないとの指摘もあるが、ゴーイング・コンサーン(継続企業)に疑義がついた大塚家具と、債務超過の匠大塚が統合すれば、むしろ共倒れになるリスクも抱え込む。 大塚家具は勝久氏との関係修復についてこう述べた。「『日本と世界のクラフトマンシップを応援するスローファニチャーの会』の名誉会長職をお願いしたが、辞退のお返事をいただきました。業界随一の目利きと目される勝久会長なので、いつかは参加していただきたいという、思いは変わりません(代表発起員の一人である社長の大塚久美子の立場としての回答です)。上記のことは業界団体の個人としての活動の話で、会社の経営とはそもそも関係ありません」(広報室) 大塚家具のオフィスは一つのフロアに間仕切りを設けないオープンスペース。「のんびりとした人が多い」(大塚家具OB)と言われる社内で、一際元気な一角がある。2月に大塚家具への出資を決めた中国のマーケティング会社、ハイラインズから送り込まれてきた中国人たちだ。 中国市場向けに立ち上げたばかりのネット通販事業があっという間に会社を再建できるほど急拡大するかは別としても、「儲けてやるぞ」という活気がみなぎって、大塚家具社員の刺激になっているという。 勝久氏や勝之氏との和解よりも、外部の知恵やエネルギーを活用するのは一つの手だろう。●リポート/山口義正(ジャーナリスト):1967年生まれ。愛知県出身。法政大学法学部卒。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞証券部記者などを経て、現在は経済ジャーナリスト。オリンパスの巨額粉飾事件をスクープし、著書『ザ・粉飾 暗闘オリンパス事件』(講談社+α文庫)にまとめた。※週刊ポスト2019年6月14日号
2019.06.05 16:00
マネーポストWEB
週刊ポスト 2019年6月14日号目次
週刊ポスト 2019年6月14日号目次
週刊ポスト 2019年6月14日号目次大人気超満員 相続セミナーでみんなが訊いてる「質問」とその「正解」・国からタダでもらえるお金 国に払わずに済むお金すべての手続き・60歳からは「払わなくていいお金」解約の「やり方」と「手続き」13特集◆スクールバス襲撃犯「孤独の40年間」の行動◆池田小事件犠牲者遺族からカリタス小の被害者にかける言葉 ◆“大ヒンシュク”報道を検証する ◆その熱中症対策「梅雨どき」にやってはいけない◆揉める創業家 なぜあの名門企業でお家騒動」が相次ぐのか ──リクシル・2つの創業家/大塚家具・父娘相克/ミツカン・娘婿排斥ほか◆やってはいけない眼科治療 その目の悩み「本当に頼れる医者」は誰か◆トランプ&安倍&金正恩「危うい三国同盟」の行方 ◆達川光男の交流戦大予測「今年のパは弱いんじゃ!」◆「中高年のための性生活の知恵」 ◆美熟女さんたちも納得!「私が満たされた瞬間」 ◆あなたの「性器年齢」は何歳?◆インタビュー ローソン竹増貞信社長(49)コンビニ24時間営業問題「私はこう考える」ワイド◆スクープ撮 フジ宮澤アナ「“キャッチング上手”な新恋人」 ◆敢闘賞力士・志摩ノ海 “夜のぶつかり稽古”写真流出 ◆歌舞伎町殺人未遂事件◆天安門事件30年目の証言グラビア◆これだけ知っていれば得するスマホ決済 ◆写真家・立木義浩が撮った「時代の女優たち」◆袋とじ 浅田美代子 ビキニのミヨちゃん◆袋とじ 畑中葉子 ◆きれいなお天気お姉さんは、好きですか? ◆なをん。令和最初の謎の美女REI ◆熊田曜子 37歳B93ド迫力Fカップ!◆密着 高島礼子 ◆寿影 吉村作治 ◆働く美女 今井さやか◆日本推理作家協会賞連載・コラム◆中川淳一郎「ネットのバカ 現実のバカ」【小説】◆柳広司「太平洋食堂」【コラム】◆短期集中東田和美「60歳からの『儲ける競馬』」◆広瀬和生「落語の目利き」 ◆堀井六郎「昭和歌謡といつまでも」◆秋本鉄次「パツキン命」◆戌井昭人「なにか落ちてる」◆春日太一「役者は言葉でできている」◆大竹聡「酒でも呑むか」◆鎌田實「ジタバタしない」◆綾小路きみまろ「夫婦のゲキジョー」◆大前研一「『ビジネス新大陸』の歩き方」◆高田文夫「笑刊ポスト」【ノンフィクション】◆井沢元彦「逆説の日本史」【コミック】◆やく・みつる「マナ板紳士録」◆とみさわ千夏「ラッキーな瞬間」【情報・娯楽】◆のむみち「週刊名画座かんぺ」◆恋愛カウンセラー・マキの貞操ファイル◆ポスト・ブック・レビュー◆医心伝身◆ポストパズル◆プレゼント◆法律相談◆ビートたけし「21世紀毒談」◆椎名誠とわしらは怪しい雑魚釣り隊◆坪内祐三の美術批評「眼は行動する」
2019.06.03 07:00
週刊ポスト
大塚家具vs森トラスト 創業家「令嬢社長」の商才
大塚家具vs森トラスト 創業家「令嬢社長」の商才
 創業家の「令嬢社長」といえば、父・勝久氏とのお家騒動で話題をさらった大塚家具の大塚久美子・社長(51)が専売特許。ところが最近、知名度を急速に伸ばしているのが、2016年に不動産大手の森トラストを父である森章・会長から継いだ伊達美和子・社長(48)だ。「伊達さんが率いる森トラストは、2020年に竣工予定の『東京ワールドゲート』(東京・虎ノ門)や高級ホテルの誘致などで1兆円規模の投資をするなどイケイケ。経営不振に喘ぐ大塚家具とは明暗くっきりです。しかも、伊達さんは日経新聞で『創業家DNA継ぐ女性社長』(4月11日付朝刊)として取り上げられ、大学時代から経営哲学を学ぶなど、父親との良好な関係を保っている」(経済ジャーナリスト) 久美子氏に巻き返しのチャンスはあるのか。エコノミストの森永卓郎氏が語る。「4月26日に久美子社長が父親である勝久さんと4年ぶりに面会を果たし、和解を申し入れました。これは大きな進歩だと思います。久美子社長にとっては高い授業料となりましたが、勝久さんが築いてきた顧客との繋がりを大切にするというビジネスモデルに回帰していけば、大塚家具が今後業績を巻き返していく可能性は十分あると思います」※週刊ポスト2019年5月17・24日号
2019.05.07 16:00
週刊ポスト
竹中工務店の本社ビル(時事通信フォト)
創業家関係者が将来のTOPと目される20社 経営関与に課題も
 いまだに日本企業の約4割は、「創業家一族」が株式の10%以上を握る同族経営という事実がある。しかも、昨今時々報じられているように、トヨタやサントリーといった世界的企業こそ、創業家への先祖返りをしているのだ。 そして今、日本を代表するファミリー企業はどう“代替わり”していくかという岐路にある。それは、日本経済の今後を左右する喫緊の課題なのだ。 現在、取締役などに創業家出身者が名を連ねており、今後社長になる可能性がある企業20社をリスト化(別掲)した。 大手ゼネコンでは「鹿島建設」と非上場の「竹中工務店」の名前が挙がっている。企業経営者を多数取材する雑誌『経済界』の編集局長を務める関慎夫氏が解説する。「竹中工務店は3月に社長交代がありましたが、創業家の竹中勇一郎常務の社長就任は見送られ、関西方面に強い佐々木正人専務が就任しました。今回は2025年の大阪万博や、大阪が名乗りを上げているIR(カジノを含む統合型リゾート施設)の受注を狙いにいったと見るべきでしょう。竹中工務店は非上場企業なので、株主としての権限を握る竹中家はいつでも創業家に社長交代できる。タイミングはそう遠くないはずです。 鹿島は創業家の社長候補が2人いて、やや複雑です。2人とも“中興の祖”と称される故・鹿島守之助・元会長の孫で、それぞれの父親(鹿島家の娘婿)が同社社長を務めた。現在は創業家ではない押味至一社長が務めている。今後の動向が注目されます」 森泰吉郎氏が創業した森ビルは次男・森稔氏が継ぎ、六本木ヒルズなどを手がけた。一方、三男・森章氏が社長となったグループ会社(森ビル開発)は森トラストとして独立、丸の内トラストタワーなどを開発した。2社ともに代替わりの時期を迎えている。「森トラストは2016年、長女である伊達美和子氏が後を継ぎました。章氏には3人の子供がいて全員森トラストに入社しましたが、長男と次男はすでに退社し、伊達氏が後継者となった。 一方の森ビルは稔氏が2012年に死去後、現在は内部昇格した辻慎吾氏が社長を務めていますが、本来は森浩生・副社長が後継候補とされています。六本木ヒルズで2004年に回転ドアによる死亡事故があったことなどが、ここまで社長人事を遅らせる要因になったとされている。そろそろ“禊”が済むタイミングではないでしょうか」(前出・関氏) 創業家による企業経営について研究する後藤俊夫・日本経済大学大学院特任教授は、代替わりの課題をこう見る。「企業にとっての創業家の役割は、経営者や株主として存在することで組織に安心感を与える大黒柱のようなものです。最近では、株価の安定や業績アップに寄与しているという研究結果も発表されている。 ただし、創業家が経営に関与するデメリットもあります。昭和シェルとの合併に創業家が反対した出光のように創業家と会社が対立する例、あるいは大塚家具のように創業家内部で対立する例など、一歩間違えると創業家が内紛のきっかけになってしまいかねないのです。 たとえば創業家が一族以外に経営を任せる場合、欧米では業績や株価の目標を定めた契約書を交わすなど、同族経営を持続させるためにしっかりした体制を整えていますが、日本の同族経営はナァナァでやってしまうことが多い。そこをクリアにすることが課題でしょう」 有力企業の創業家の動向は、日本経済の今後を左右するかもしれない。※週刊ポスト2019年5月3・10日号
2019.05.02 07:00
週刊ポスト
カジノ王・岡田和生氏 「妻と息子に会社を追放されるまで」
カジノ王・岡田和生氏 「妻と息子に会社を追放されるまで」
 カリスマ経営者が晩年、“社内クーデター”によって失脚することはままあるが、家族全員から退場要求を突きつけられてその座を追われたとなれば、あの大塚家具にもまして悲惨である。かつて長者番付1位に輝き、「日本のカジノ王」と呼ばれた男が、その悲痛な胸中を初めて明かす。(聞き手/児玉博・ジャーナリスト。文中敬称略) * * * いわゆる“カジノ法案”(IR〈複合型リゾート〉法案)が2016年に可決以来、多くの自治体が名乗りをあげるほど、「日本版カジノ」の機は熟してきた。 本来であれば、男は「日本人初のカジノオペレーター」としてスポットライトが当たるところだった。しかし、それとは裏腹に彼の身に起きたことといえば、手塩にかけ50年にわたって育て上げて来た創業会社「ユニバーサルエンターテインメント(旧アルゼ)」を“反乱”によって追われ、それどころか家族もそれに同調したという骨肉相食む追放劇だった。 ユニバーサル前会長の岡田和生(76)は一昨年6月、突然、現経営幹部と、実子である長男、長女、妻という家族の“反乱”によって会長の椅子から転がり落ちた。 インタビューの席に着くやいなや岡田は、目の前に黒色のGPS機能がついた盗聴器を見せた。昨夜、岡田に対する執拗な尾行行為を麻布警察署に通報し、尾行者の身柄が警察に確保された後、岡田の自家用車に取り付けられていたのが発見された。一昨年のクーデター以来、こうした追跡盗聴行為は4度目だという。「誰がやった? そうですね……、私を怖いと思っている人間なんでしょうがね……」 こう言って岡田は微かに笑った。◆「パチスロ長者」として有名に 昭和17年生まれの岡田が、栃木県小山市に「ユニバーサルリース」を設立し、パチンコ業界に参入したのは昭和44年。亡くなった前妻(1998年死去)と2人で、輸入したジュークボックスを分解しては、また組み立てて仕組みを勉強し、それをパチンコ台に応用した。ささやかな創業だった。 岡田の名を業界に轟かせたのは、コンピュータ作動式のスロットマシーンを開発したことだった。世界のカジノで瞬く間に広がり、ユニバーサル製のスロットマシーンなくしてカジノは成り立たないとまで言われた。岡田の名前は本場・ラスベガスでも知られるところとなり、また国内ではたちまちパチスロ長者として広く知られるようになる。その一方、岡田の超ワンマンな経営は物議を醸すこともたびたびだった。 20代の頃より、ラスベガスに度々足を運んでは、将来のカジノ経営を夢見ていた岡田にとって、ラスベガスのカジノ王、スティーブ・ウィンが保有する「ウィンリゾーツ」への出資は願ってもないチャンスだった。500億円を出資し、共同経営者となった岡田はアジアでのカジノ開設を夢見る。1999年に高額納税者番付1位になった直後のことである。「ところが、ウィンの離婚訴訟にともない、株式の持ち分が半減したウィンから、私の支配力を失わせるための訴訟をいきなり起こされたのです。言いがかりに近い訴訟でしたが、(カジノ進出の)計画変更を余儀なくされました。この頃、ラスベガスを凌ぐカジノを、マカオやフィリピン、そして日本で開くことを夢見ていました。出来る自信もあったし、やれると思っていた」 マカオの夢が萎む中、岡田はフィリピン・マニラでのカジノ開設に注力する。 2012年以降、その設計、資材の調達、施工に至るまで、岡田はマニラに籠って陣頭指揮を執る。その結果生まれたのがカジノ「オカダマニラ」だ。ところが、岡田が東京を留守にしている間に岡田追放劇の萌芽は芽生え始めていた。そして、それが現実になる。◆「僕がいけなかったのかな」 2017年5月23日、ユニバーサルは臨時取締役会を開き、会長である岡田の職務停止を決議する。寝耳に水で呆然とする岡田を尻目に、用意周到にクーデターは行なわれ、6月29日の同社株主総会で岡田は取締役として選任されず、事実上解任された。「これは時価総額3000億円以上の会社の乗っ取り事件ですよ。自分で言うのもなんですが、規模から言えば、平成の歴史に名を刻むような大型経済事件です」 このクーデターを可能にしたのが、ユニバーサルの親会社(株式保有比率67.9%)である香港法人オカダホールディングスリミテッドの株主構成だった。同社における岡田の持株比率が約46%に対し、長男(約43%)、長女(約9%)となっており、長男と長女が手を握ればユニバーサルの過半数の議決権を行使できるのだった。 当初、岡田は子供らの離反を甘く見ていたようだ。「息子の株は“名義株”だから議決権はないものと、高を括っていた。それに、親子ですからね。話せば分かるものと思っていました」 しかし、事態を甘く見た岡田の見通しに反し、家族の態度は頑なだった。一切の連絡を絶たれた岡田は焦燥感を募らせるが術がなかった。ようやく音信不通だった娘と連絡が取れ、説得する。娘の口から出た言葉に岡田はショックを受ける。「息子たちは、うち(ユニバーサル)の幹部らから何度も『岡田は近々逮捕される。逮捕されれば会社も潰れる。だから、逮捕前に排除しないといけない』と言われていたようです。一種の洗脳ですが、なぜそんなことを信じたのか……、僕なりに悩みました。娘は僕の元に帰ってきてくれましたが、息子は連絡すら取れませんでした」 極めつきが、岡田の元に帰って来た娘と、離反した息子が一昨年、東京地裁でそれぞれが原告、被告となって争う裁判である(東京高裁にて係争中)。長男が長女に対し株式の信託譲渡契約に関する訴訟を起こしたのだ。目の前で血を分けた子供二人が立場を違えて争っているのを、父は目の当たりにする。「なぜなのか? なぜ息子はあそこまで頑ななのか? 本当に考えました」 岡田は自らの半生を振り返るように押し黙った。「僕は前妻ががんだったことにも気づかず、働きづめでした。“母の側にいてくれ”という息子の願いを聞こうともしなかった。そうしたことが息子をあそこまで……僕がいけなかったのかな……」 押し黙った岡田が突然、突っ伏すようにして泣き始めた。泣きながら岡田は、自らをして「万死に値する」とまで口にした。◆「こちらから仕掛けていく」 骨肉の争いはいまや海外の捜査機関まで巻き込んでいる。昨年7月30日、インターネットニュースには“岡田、香港で逮捕”の情報が溢れた。香港の独立捜査機関(ICAC)から逮捕状が出たという内容だ。岡田に脱税や汚職の嫌疑があるとICACに告訴したのは「ユニバーサル」の100%子会社「TRA」と見られている。一昨年まで岡田が一人代表を務めていた会社だ。現在は岡田に代わり、かつての部下、そして岡田の妻が役員となっている。つまり、妻が夫を訴えた形だ。「逮捕といっても勾留されるわけでもない。パスポートは一時押さえられたが、2月22日、その捜査機関から無罪潔白の判断を受けました。真っ白です。ところが、今も変わらずネットでは“岡田、逮捕”の情報が流れている。意図的な情報操作と勘繰らざるを得ません」 昨年10月には、突如として岡田の妻が香港で離婚訴訟を起こした。一昨年の離反劇からおよそ1年。何かのタイミングを計ったような離婚訴訟だと岡田は言う。「日本では離婚訴訟で特有財産の分与は認められないけども、香港ではそれを認めている。だから、香港で起こしたんですよ。ずる賢いというか、恥を知らないというか……」 特有財産とは、婚姻前に保有していた財産のこと。後妻である現在の妻にとって、特有財産権の分与を認める香港での訴訟のほうがメリットがあったのだと、岡田は考えている。長男に対して示すような未練を、妻には見せることがない。 岡田の周辺には訴訟がまだ山のように積み上げられている。が、それに怯む様子はない。「まだアジアでのカジノをあと2つはやりたい」 そう語る岡田の精神力は凄まじい。香港で身の潔白を証明されたことで、これを反転攻勢のチャンスと見ているようだ。「これまでは訴訟によって身動きを封じられていたが、今度はこちらから仕掛けていきます」 岡田はいまだに接触を拒否している長男との接触を試みようとしている。それはすべてユニバーサルへの復帰、創業した会社を我が手に取り戻すためだ。 家族間のトラブルについて、ユニバーサルは取材に対してコメントを控えた。ただし、岡田の経営復帰についてだけはこう断言した。「当社から申し上げることはございませんが、強いて言えば、岡田和生氏が復帰する可能性はゼロです」(広報IR課) 真っ向から岡田の野望を否定した。骨肉の争いの第二幕はこれから始まる。※週刊ポスト2019年3月22日号 
2019.03.12 11:00
週刊ポスト
大塚家具・久美子社長に「父娘和解」を迫った中国人は何者か
大塚家具・久美子社長に「父娘和解」を迫った中国人は何者か
 2月28日に予定されていた大塚家具の大塚久美子・社長の会見は、前日になって急きょ延期が決まった。「日中の投資家や米系投資ファンドによる70億円超の増資と、ヤマダ電器や中国の家具大手・イージーホームとの提携を経て、久美子社長の口から再建プランを聞ける機会だっただけに、急な延期に訝しむ声もありました。 実際には、せっかくの会見が米朝首脳会談のニュースにかき消されてしまうことを嫌って、延期という判断になったようです」(ジャーナリストの伊藤博敏氏) 創業者の父・大塚勝久氏(現「匠大塚」会長)との、「父娘喧嘩」から4年。いまだ“断絶状態”の父娘関係の雪解けを求める人物がいる。〈久美子さんに(勝久氏と)和解するように伝えた。共倒れしないようにと。(中略)同じ家族で争っても仕方がない〉 2月23日配信の朝日新聞デジタルのインタビューでそう話したのは、大塚家具への支援をとりまとめたネット通販企業ハイラインズの陳海波・社長だ。「1973年生まれの46歳。もともと、中国国内で日系自動車メーカーのITエンジニアとして働き、その後来日。2006年からはソフトウエアを受託開発する企業の社長に就任するなど経営者として手腕を発揮している。 一族が中国共産党に近く、習近平・国家主席にも人脈がある。現在は、中国で富裕層に人気の高級日本製品を売る事業を展開している。今後、中国の電子商取引大手・アリババとの業務提携も噂されており、大塚家具の中国戦略上、父娘和解のイメージ演出が必要だったのではないか」(同前) 大陸から届いた声に相克の父娘は耳を貸すのか。※週刊ポスト2019年3月15日号
2019.03.04 16:00
週刊ポスト

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