ビジネス

社外取締役2人義務づけで争奪戦 ガバナンス強化に繋がるか

社外取締役の拡充に期待を寄せる日本取締役協会の宮内義彦会長

 近年、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化が叫ばれ、外部から社外取締役を招聘する企業も徐々に増えているが、6月からその動きはさらに加速しそうだ。東京証券取引所が適用する上場企業の行動指針に、「独立社外取締役」を2人以上置くよう義務づけているからである。

 わざわざ「独立」とつけているのには意味がある。会社と利害関係のない第三者でなければ、公平かつ客観的な目で経営全般をチェックすることができず、会社の透明性や収益力を高めることに繋がらないためだ。

 だが、経済ジャーナリストの松崎隆司氏は、「人数だけ揃えたからといって、必ずしも会社の経営が大幅に変わるとは限らない」と釘を刺す。

「オーナー企業の経営者やワンマン社長は、よそ者が入ってきて余計な口出しをされても困るので、自分の知り合いである有名経営者や弁護士、学者、天下り官僚などを連れてきて“仲良しクラブ”になるだけ。

 社外取締役にどういう役割を期待し、どんな人材が必要なのか十分に吟味されないまま形だけ整備しても意味がないのです。これでは会社の私物化やオーナー経営者の暴走も止められるはずがありません」(松崎氏)

 例えば、父と娘が経営権を巡って激突した大塚家具は、複数の社外取締役を選任しながら内紛を防ぐことはできなかった。また、早くから取締役の過半数を外部から登用してきたソニーも長らく経営不振から抜け出せなかった。会社の存続すら危ぶまれるピンチで経営の監督機能を発揮できない社外取締役なら、無駄なコストと指摘されても仕方ない。

 いまのところ東証ルールに罰則はないが、2人以上選任しない場合は説明義務や社名公表もあるため、経営現場では適正能力にかかわらず社外取締役の争奪戦が繰り広げられている。

「テレビによく出演するスター弁護士や大学教授の中には、複数の企業からお声がかかっている人もいる。彼らにとっては、黙って上場企業の社外取締役に名を連ねるだけで肩書きに箔がつくのだから、こんなにオイシイ話はない」(人事ジャーナリスト)

 社外取締役の年間報酬は700万~1000万円が相場。今後、全上場企業が2名以上の独立社外取締役を置くことになると、新たに最大3000人の“雇用”が生まれると見られている。人材不足も囁かれる中で、いっそう形骸化した「お飾り取締役」が増える懸念は拭えない。

関連キーワード

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン