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イルカ漁断罪映画 残酷さ強調のため血の赤みをCG処理し脚色

「(和歌山県)太地町で捕獲されたイルカの入手をやめよ」という世界動物園水族館協会(WAZA)の要求を日本動物園水族館協会(JAZA)が受け入れた。欧米のイルカ漁反対派は「日本のイルカ漁は野蛮」と主張する。

 文化論からすればイルカ漁反対派の意見に耳を貸す必要がないことは明白だが、そもそもイルカ漁について彼らは大きな思い違いをしている。
 
 WAZAは「イルカ漁は残酷」と主張するが、彼らがイメージするイルカ漁はひと昔前のものだ。『白人はイルカを食べてもOKで日本人はNGの本当の理由』(講談社+α新書)の著者でジャーナリストの吉岡逸夫氏が語る。
 
「反対派の多くは太地町のイルカ漁を断罪し話題となった映画『ザ・コーヴ』の影響を受けている。そこには海がイルカの血で真っ赤に染まる様子が映し出されているが、それは一昔前の漁法。映画が公開された2009年当時、すでに方法が改善されて海が血で染まることはない。残酷さを強調するために昔の漁の映像を使用し、血の赤みをCG処理して脚色しているのです」
 
 現在のイルカ漁は、水族館用の場合、入り江に追い込んだイルカの群れの中から若くて活きのいい個体を選別し、残りは逃している。イルカにストレスがかからないように食用のための漁と時期をずらして行なっている。食用の場合でも、首筋に銛を入れて苦しませずに即死させる手法が採られるようになった。それらは環境保護団体などの求めに応じて改善したものだ。
 
 にもかかわらず、今回WAZAが「太地町のイルカ漁は残酷だから入手をやめよ」と通告してきた裏にいるのが、そうした環境保護団体なのである。
 
「WAZAは昨年8月の会合で追い込み漁は『イルカの福祉に反しない』という見解を示すなど必ずしも強硬な態度ではなかった。それが環境保護団体にJAZA除名を求める訴訟を起こされるなどの圧力を受けて今回のような措置を取ったようです」(JAZA関係者)
 
 それらの団体は、イルカの苦しみを取り除くのが目的ではなく、何が何でも日本を叩くことを目的化している。これまでJAZAは「追い込み漁のどこが残酷か」とWAZAに対して再三回答を求めてきたが、根拠が示されたことはない。

 それでもWAZAは日本のイルカ漁を「残酷」だと非難するのか。改めて見解を問うため取材を申し込んだが、「追い込み漁は残酷でWAZAの倫理規範に反している。段階的に廃止するまで対話を続ける」と回答するのみだった。なぜ残酷なのかという問いにはやはり答えなかった。

※週刊ポスト2015年6月12日号

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