「今から申し上げることは、政権内部でも『極秘』として扱われていることなのですが、実はカジノ構想はTPP交渉と密接に絡んでいるのです。具体的には、日本がTPPに加入することになれば、どうしてもカジノを解禁せざるを得ない状況が生まれてしまうのです」(前述の内閣官房中枢スタッフ)
改めて説明するまでもなく、TPP交渉がまとまるか否か、その最大の焦点は、日米間の協議の行方にあると言っていい。この両国間の協議では自動車と農産物の両分野でまだ溝が埋まっていないものの、「日米合意に至るのは、もう時間の問題」(自民党の有力国会議員)という。
TPPの対象となっているのは、関税の原則撤廃にとどまらず、貿易や投資、競争政策など、国と国との間で発生する様々な経済活動に関わる分野に及んでおり、現在21の分野で交渉が行われている。
その“21分野”の中に、「越境サービス貿易」と称される分野があり、サービス分野の貿易に関してのルール作りが進められている。
「良く知られるようにTPPの交渉内容については参加国にしかオープンにされず、しかも交渉担当者は守秘義務を負っているため、具体的にどんな交渉が行われているのかほとんど公表されていません。実は『越境サービス貿易』でカジノビジネスが俎上に載っているのです」(前述の内閣官房中枢スタッフ)
つまり霞が関サイドは、こうした状況を把握しているからこそ、カジノ解禁に向けての動きを本格化させているのだ。
一方永田町においては、約220名の国会議員からなる「国際観光産業振興議員連盟」(通称IR議連、会長・細田博之自民党幹事長代行)が中心になる形で、カジノ解禁を推進している。
「そしてその中心となっているのが、細田IR議連会長、下村博文・文科大臣、岩屋毅IR議連幹事長、そして安倍首相の側近である萩生田光一自民党筆頭副幹事長の4人なのです。この面子を見ても、カジノ解禁が安倍─麻生ラインを軸に進んでいることがわかるはずです」(前述の自民党有力国会議員)
こうした状況を見る限り、カジノ解禁は水面下では既に既定路線となっているようだ。
文/須田慎一郎(ジャーナリスト)
※SAPIO2015年7月号