国内

大前研一氏 菅官房長官の「粛々に」発言の意味を解説する

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡る翁長雄志・沖縄県知事と安倍官邸の話し合いが平行線をたどっている。もっとも重要な問題は、「なぜ沖縄に米軍基地があるのか」という根源的な問題だ。大前研一氏が解説する。

 * * *
 周知の通り沖縄は1972年に返還されたが、米軍関係者によれば、実は返されたのは「民政」だけで、「軍政」は返さないという条件だった。つまり、軍政=米軍基地に関しては、日本は口出しできないのだ。

 ところが、この“事実”を安倍首相の大叔父である当時の佐藤栄作首相も、その後の自民党政権も、外務省も一切、国民に説明していない。自民党の悪しき外交慣習として、文書に残っていないか、残っていたとしても隠している。

 だから沖縄で米軍基地反対運動が続くわけだが、アメリカにしてみれば、なぜそんなことで騒ぐのか理解できないというのが本音だろう。

 わかりやすい例は、オスプレイの配備だ。墜落事故が多くて安全性に問題がある飛行機だから配備を許してはいけないと大騒ぎしていたが、気がついてみたら、いつの間にか普天間飛行場に24機が配備されていた。それに対して日本政府は抵抗も抗議もしていない。沖縄の軍政に関してアメリカが、日本に相談する必要も承認を得る必要もないという証左である。

 菅義偉官房長官は沖縄を訪問して翁長知事と会談した際、普天間飛行場の辺野古移設について「粛々と進めていく」と述べて「上から目線」と批判されたが、日本政府はアメリカの意向に逆らえないのだから、「取り決め通り粛々と」と言わざるをえない。

 つまり、辺野古移設は自分たちが介在できる問題ではなく、歴代の自民党政権がコミットし、政治家が利権化してきた問題だから、過去の延長線上で決まった通りにやるしかないという意味で、菅官房長官は「粛々と」という言葉を使ったのだろう。それは極めて正しい認識だと思う。

 佐藤栄作は退陣後の1974年に核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」の「非核三原則」や「沖縄返還」などによるアジアの平和への貢献を理由としてノーベル平和賞を受賞したが、とんでもない話である。核兵器の「持ち込ませず」は偽りであり、沖縄の軍政は返さないという密約を交わしていたわけだから、まさに嘘と欺瞞の塊だ。

 したがって、いくら翁長知事が日本外国特派員協会で会見したり訪米したりして辺野古反対を切に訴えても、意味はないのである。

 本気で沖縄の米軍基地問題を考えるなら、安倍首相の祖父の岸信介が1960年に改定し、大叔父の佐藤栄作が1970年に自動延長した日米安保条約の矛盾、そして沖縄返還のイカサマまで戻って議論する必要がある。

※SAPIO2015年7月号

トピックス

石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《24歳の誕生日写真公開》愛子さま、ラオス訪問の準備進めるお姿 ハイネックにVネックを合わせて顔まわりをすっきりした印象に
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
韓国・漢拏山国立公園を訪れいてた中黒人観光客のマナーに批判が殺到した(漢拏山国立公園のHPより)
《スタバで焼酎&チキンも物議》中国人観光客が韓国の世界遺産で排泄行為…“衝撃の写真”が拡散 専門家は衛生文化の影響を指摘「IKEAのゴミ箱でする姿も見ました」
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン