監査法人の責任も問われる。実は東芝の決算書類の監査を担当しているのは、オリンパス事件で業務改善命令を受けた監査法人と同じだった。なぜ今回も見逃してしまったのか。
そして経営陣の引責辞任で幕引きを図りたい東芝にとって、最悪のシナリオが「上場廃止」だ。ケイ・アセット代表でマーケットアナリストの平野憲一氏が指摘する。
「虚偽記載や、延長した期限までに有価証券報告書が提出されなければ、東京証券取引所が規定する上場廃止基準に該当する恐れのある銘柄が割り当てられる『監理ポスト』入りや、上場廃止となる可能性はあります。
日本を代表する東芝株は日本株で運用するファンドには必ず組み入れられているコアストック。それを手放すファンドや機関投資家が増えているのは投資対象として不適格と判断しているからです。
今後も不透明感が続けば監理ポスト入りは十分考えられる。そうなれば市場の信頼は無に帰し、買い手がなくなり、実質的な“上場廃止”です」
上場廃止になれば泣きを見るのは投資家だ。
「大量の東芝株を保有している金融機関は、なんとか上場廃止を避けようと金融庁と第三者委で盛んに情報交換しているようですが、この先どうなることやら……」(銀行関係者)
ファンドや銀行だけでなく、最も直接的な被害を受けるのが紙クズを握りしめることになる個人投資家だろう。私利私欲で社内抗争を繰り広げ、市場の混乱を招いた東芝経営陣の責任は重い。
※週刊ポスト2015年7月31日号