中国の政治は一筋縄ではいかない。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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中国版”地方分権”ともいうべき政策が現場で混乱をもたらしているらしい。
2015年8月28日付『新京報』は地方分権が地方に浸透する過程での問題として社説&オピニオン欄で取り上げている。タイトルは、〈行政手続きの簡略化及び分権 地方政府は〝簡略化と高額化〟をはき違えてはならない〉である。
記事の中で指摘されているのは、ある地方政府の問題である。
さまざまな手続きが党中央の進めた分権政策によって簡略化され、人々はわざわざ政府まで足を運ばなくてもネットで必要な書類を申請しネット、または郵便で書類を受け取ることができるようになった。が、そのシステムを導入後、なぜか従来であれば100元で済んだ申請にかかる諸費用が、いきなり500元にまで跳ね上がっているというのである。
実は、「手続きが簡素化されればされるほど高くなる」と表現されたこの問題は、26日に行われた国務院の常務会のなかで李克強首相が言及して問題となり、『新京報』自身が記事として取り上げた話題を読者が再度提起したものである。
あらためて同欄で取り上げたのは、「読者の反響が大きく多くの地方で同じ現象が観られるという社会問題となっているから」(北京のメディア関係者)だというのだ。
ネット申請であれば、人の作業が軽減されるので、手続きにかかる費用は本来下がるはずだ。それが、逆に値上がりし、しかも一気に5倍に引き上げられるというのは理屈に合わない。
これぞ、中央の政策を我田引水で自らの利益に変えてしまう地方の強かさであり、中央が「政策は中南海から外に出ない」と嘆いた真髄である。